アルバート・キングのブルース名盤とアナログレコード完全ガイド:名曲・特徴・収集のポイント
アルバート・キングとは?ブルース界の巨匠
アルバート・キング(Albert King、1923年4月25日 - 1992年12月21日)は、ブルースギターの名手として世界的に知られるアメリカのブルースミュージシャンです。彼はベイシストのアルバート・ジェイムズ・キース・キングという本名で生まれ、特に1950年代から1970年代にかけて多くの名曲を世に送り出しました。その深くエモーショナルなギターサウンドと独特のボーカルスタイルは、ブルースの歴史において欠かせない存在となっています。
アルバート・キングのブルースにおける特徴
アルバート・キングは、エレクトリックブルースギタリストとして、特異な左利きスタイル(通常のギターを逆さに持つ)でプレイし、その結果、独特のベンディングやフレーズを生み出しました。彼のギターは主に“フライングV”モデルのギブソンを用い、そのサウンドはダークながらもソウルフルで、ブルースに深みと感情の強度を与えています。
キングは、ブルースの中でも特に「サザンブルース」や「メンフィスブルース」の伝統を継承しつつも、ソウルやR&Bの要素を取り入れており、その結果、幅広いリスナーに愛されるサウンドを確立しました。
アルバート・キングの名曲とそのレコードリリース情報
ここでは、特にアナログレコードでのリリースに重点を置き、アルバート・キングの代表的な名曲を紹介し、その背景や音楽的特徴に触れていきます。
1. “Crosscut Saw” (クロスカット・ソウ)
この曲はアルバート・キングの代表作の一つであり、ブルースギターの名フレーズが存分に味わえる楽曲です。元々はトニ・マティス(Tony Matice)が作詞・作曲した曲を1966年にキングが歌い直し、シングル盤としてリリースされました。レコードはStaxレーベル(Stax 190)のリリースで、B面には「Playin’ Cool」が収録されています。
“Crosscut Saw”はワイルドながらも緻密に計算されたギターリフが特徴的で、ブルースの “鋸” のように鮮やかで切れ味鋭いサウンドはアルバート・キングのギター技術の高さを示しています。アナログレコードで聴くと、特にギターの音の生々しさや響きが際立ち、キングの荒々しい歌声と相まって非常に深い感動を呼び起こします。
2. “Born Under a Bad Sign” (ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン)
1967年に発表されたこのタイトル曲は、アルバート・キングとブッカー・T&ザ・MG'sとの共演による名盤『Born Under a Bad Sign』(Stax 726) のタイトル曲です。サザンブルースとサイケデリックな要素が融合したこの曲は、後の多くのロックギタリストにも大きな影響を与えました。
アナログ盤は特にビニールならではの温かみのあるサウンドが特徴で、ギターの細やかなニュアンスがしっかりと再現されます。1960年代後半のStaxレーベル独特の土臭さと、キング自身が放つ哀愁を兼ね備えた名作です。
3. “I’ll Play the Blues for You” (アイル・プレイ・ザ・ブルース・フォー・ユー)
この曲は1972年にリリースされたアルバート・キングの作品で、同名のアルバム『I’ll Play the Blues for You』(Stax 708)に収録されました。レコードファンの間でも人気が高く、メロウでリラックスしたフィーリングが特徴です。
ギターの旋律は豊かな表現力を持ち、キングの歌声も温かく、ブルースに内在する悲哀と安堵の感情を見事に表現しています。アナログレコードの盤から流れる柔らかい音は、デジタル配信にはないしっとりとした味わいを感じさせます。
4. “As the Years Go Passing By”
この曲はブルースのスタンダードソングの一つで、アルバート・キングのバージョンも高く評価されています。1969年にステックスレコードからリリースされたシングルであり、成熟したキングのギターと歌唱が印象的です。
アナログレコードで聴くと、その時代の温かな録音技術とキングの人間味あるサウンドが生き生きと伝わってきます。また、この曲は多くのブルースギタリストにカバーされており、キングのオリジナル盤は非常にコレクターズ・アイテムとしても価値があります。
5. “The Sky Is Crying” (ザ・スカイ・イズ・クライング)
ブルースギターの巨匠サミー・ワンデルによる有名な楽曲をアルバート・キングが1968年にカバーし、彼のスタイルに昇華しました。この曲はアルバート・キングのキングレコードからの単独シングルや、後の各種アルバムに収録されています。
ギターの泣きのテクニックがふんだんに盛り込まれ、ピュアな感情をストレートに伝える演奏は、レコードで聴くことによりより一層深く味わうことができます。現代の音源と比べて温度感が高い録音は、アナログ盤ならではの醍醐味です。
アルバート・キングのレコード収集におけるポイント
- オリジナルプレスを狙う: 1960-70年代のStaxやKing Recordsからのオリジナル盤は、音質はもちろんジャケットのアートワークや印刷の質もよく、コレクターにとって非常に価値があります。
- レコードのコンディションを重視: ブルースレコードは再発盤も多いですが、キングのギターの繊細な表現を楽しむためには良好な盤面が不可欠です。盤質は音のクリアさに直接影響します。
- シングルレコードにも注目: 「Crosscut Saw」や「As the Years Go Passing By」など、シングル盤は希少価値が高く、キングのブルースギターを短時間で味わえる名演が収録されています。
- ジャケット・ライナー情報を活用する: レコードジャケットにはオリジナル当時の演奏者情報やレコーディングの背景が記載されていることが多く、キングの音楽理解を深める助けとなります。
まとめ
アルバート・キングはブルースギター史において極めて重要な存在であり、彼の名曲はいずれもその深い感情表現と技術の結晶です。特にアナログレコードで聴く際は、音質の温かみやダイナミズムが直に伝わり、キングの世界観を最大限に味わうことができます。ブルースを愛する全ての人にとって、彼のレコードは単なる音楽ソース以上の宝物として手元に置きたい作品ばかりです。
もしブルースの原点を感じたい、そして伝説のギタリストの息遣いを体感したいなら、ぜひアルバート・キングのオリジナルレコードを入手し、その名曲の数々に耳を傾けてください。


