ショーティ・ロジャースとは?西海岸ジャズの名盤とレコード収集ポイント完全ガイド
ショーティ・ロジャースとは誰か?
ショーティ・ロジャース(Shorty Rogers、本名:Milt Rogers、1924年4月14日 - 1994年11月7日)は、アメリカのジャズ・トランペッター、作曲家、編曲家として知られる人物です。西海岸ジャズの重要な旗手の一人として位置づけられ、1950年代を中心に多くの名盤を残しました。彼の作品は、スウィング・ジャズからビバップ、クールジャズへの橋渡し的役割を果たし、西海岸ジャズのスタイルを確立するうえで欠かせない存在です。
西海岸ジャズとショーティ・ロジャースの役割
1940年代後半から1950年代にかけて、ジャズはニューヨークのハードバップやビバップと、西海岸のクールジャズやウエストコーストジャズに大別されました。西海岸ジャズはより洗練され、クールでモダンな印象を持ち、編曲に大きな重点を置く傾向がありました。
ショーティ・ロジャースは、メインストリームのジャズに先駆けてビッグバンドの編曲・指揮も手がけるなど、西海岸ジャズの仕掛人として活躍しました。スタン・ケントン楽団のメンバーとしても知られ、同時に自身のグループを率いて独自のサウンドを追求。特に彼の作品は、トランペットの華やかなソロと緻密なアンサンブルが高く評価されています。
ショーティ・ロジャースの名盤紹介
ここでは、アナログレコードのオリジナル盤や良質なプレス盤が存在し、現在もジャズ・ファンの間で高い評価を受けている代表的な名盤を解説します。
1. The Swinging Mr. Rogers(RCA Victor, 1955年)
「The Swinging Mr. Rogers」は、ショーティ・ロジャースのソロアルバムの中でも最も象徴的な作品です。元々は1955年にRCA Victorから10インチLPでリリースされ、その後12インチLPで再発されました。
- 編成: 小編成のバンドで、トロンボーン、アルトサックス、ピアノ、ベース、ドラムスといった典型的な西海岸ジャズの編成。
- サウンド: 軽快でリズミカルなテーマと、ショーティ・ロジャースのクリアでソフトなトランペットが印象的。彼のトランペットは力強さと繊細さが混在し、クールジャズの魅力を余すところなく表現しています。
- 収録曲の例: “Jazz Judy”, “Martians Lullaby”, “Adolescence”
- レコード情報: オリジナルのRCA Victor盤はマトリクス番号やキズの有無などでプレス状況に差異があるため、コンディションの良いものは希少価値が高い。U.S.プレス盤の高音質で知られるステレオ盤は熱心なコレクターに人気。
このアルバムは、ショーティ・ロジャースのコンポーザー、アレンジャーとしての才能も楽しめる好例で、ジャケットのデザインも1950年代らしく洗練されています。
2. Martians Come Back!(RCA Victor, 1955年)
同じく1955年に出た「Martians Come Back!」は、フルバンド編成の西海岸ジャズの典型例であり、「The Swinging Mr. Rogers」と対になる作品として位置づけられています。
- 特徴: ビッグバンドに近い編成で、金管楽器と木管楽器を効果的に使い分け、SF的テーマや遊び心あふれるタイトル・トラックを通じて、モダンジャズの新しい可能性を示しました。
- 収録曲: “Martians Come Back”, “Pirouette”, “Jive at Five”(カウント・ベイシーの曲のカバー)など。
- レコードの価値: RCA Victorの赤文字レーベルのオリジナル盤は、ヴィンテージレコードの世界でも評価が高い。特にステレオ盤は音質に定評があります。
この作品は西海岸ジャズ特有のクールかつスマートなサウンドが特徴であり、ショーティ・ロジャースのアレンジ技術が堪能できる重要なアルバムです。
3. Shorty Courts the Count(RCA Victor, 1954年)
「Shorty Courts the Count」は、ショーティ・ロジャースがスタン・ケントンの編曲家としての地位を確立する以前の作品ですが、ケントンのスタイルを意識した豪勢な編成とアレンジが聴きどころです。
- 編成: スタン・ケントン楽団を彷彿とさせる大編成のビッグバンド。
- 特色: 派手なブラスセクションや複雑なハーモニー、リズムの多彩さで、聴き応えのある豪華なサウンドになっています。
- レコード: 10インチ盤、12インチ盤ともに存在し、初期のRCA Victorプレスは保管状態良好なものが市場で高価格で取引されることもあります。
ビッグバンドファンやジャズアレンジャーにとっては、彼の作曲・編曲スタイルの原点を知るうえで重要な作品です。
ショーティ・ロジャースのレコードを手に入れるポイント
近年、ショーティ・ロジャースのレコードは国内外でのジャズ・レコード・コレクターの間で人気が高まり、特にオリジナル盤は希少価値が上がっています。以下の点を抑えて購入を検討すると良いでしょう。
- オリジナルプレス盤を狙う: RCA Victorレーベルの赤文字(Red Seal)など、1950年代のオリジナルプレス盤は音質と価値が高い。
- ジャケットの状態をチェック: 1950年代のリトグラフジャケットは経年劣化しやすく、良好なコンディションは価格に反映される。
- ステレオ盤かモノラル盤か: 初期はモノラル録音が多いが、後期のステレオプレスも存在し、音の広がりという点で好みが分かれる。
- インナースリーブの有無: オリジナルの紙やビニールのインナースリーブが揃っているほうが保存状態が良好と評価される。
まとめ:ショーティ・ロジャースの魅力とレコードの価値
ショーティ・ロジャースは、西海岸ジャズを代表するだけでなく、ジャズの歴史の中でアレンジャー、作曲家として独自の地位を築いた希有なミュージシャンです。彼のレコードは、1950年代の西海岸ジャズの黄金期を体験するうえで欠かせない名盤揃いであり、ヴィンテージレコードとしての価値も非常に高いものとなっています。
これからショーティ・ロジャースの音楽に触れたいジャズファン、レコード収集家にとっては、上述の代表作を丁寧に聴き込むことが、その魅力の本質を理解する最良の方法です。アナログならではの暖かみと躍動感を感じながら、彼のクリエイティブな世界を堪能してみてはいかがでしょうか。


