ジャズアルト奏者ソニー・スティットの名盤5選|レコードで味わう黄金期の名演
ソニー・スティットとは誰か?ジャズ史に残る名アルト奏者
ソニー・スティット(Sonny Stitt, 1924年2月27日~1982年7月22日)は、アメリカ合衆国のジャズ・アルトサックス奏者であり、モダンジャズの黄金期を支えた重要人物の一人です。チャーリー・パーカーの影響を強く受けた奏法で知られ、ビバップやハードバップのスタイルを高い次元で体現しました。ジャズ・ファンやサックス奏者からは「アルトのバード」とも称され、その技巧と表現力は数多くの名演録音で証明されています。
スティットはレコード時代に多くの作品を残し、特に1950年代から1960年代にかけて、さまざまなレーベルから影響力のあるアルバムがリリースされました。ここでは彼の魅力が存分に感じられる名盤を、レコードの観点から掘り下げて解説します。
1. 「Sonny Stitt Plays」(Roost Records, 1955)
ソニー・スティットの初期のソロアルバムとして非常に重要なのが、Roostレーベルからリリースされた「Sonny Stitt Plays」です。アナログ盤のオリジナルは当時のモノラル録音で、ジャズ愛好家の間で根強い人気を誇っています。
この作品の魅力は何と言ってもスティットの「バード」風フレージングが全開である点。トラック構成はスタンダード中心で、“I Didn’t Know What Time It Was”や“Blues for Lester”など、彼の特徴的な滑らかかつ鋭いアルトサックスの音色が楽しめます。ハードバップ的な熱気とビバップの複雑さが融合しており、レコードならではの温かみのあるサウンドが魅力的です。
当時の録音クオリティとしては十分で、ビニールのヴィンテージ感が再生の際にジャズの黄金期をリアルに感じさせてくれるでしょう。
2. 「Sonny Stitt with the Modern Jazz Quartet」(Prestige Records, 1957)
ソニー・スティットは1950年代後半にPrestigeレーベルで様々なセッションを行っていますが、その中でもモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)との共演盤は特筆すべき名盤です。レコードのオリジナルプレスは貴重で、コレクターズアイテムとしての価値も高い作品です。
このアルバムはハードバップとクールジャズの狭間を行き来する演奏が聴きどころ。MJQの洗練されたアンサンブルとスティットのテクニカルかつ情熱的なソロが絶妙に絡み合います。盤面に針を落とした瞬間から、両者の音楽的会話が自然体で楽しめ、レコードならではの広がりある音響がうまく両者の持ち味を引き立てています。
3. 「Sonny Stitt - Stitt’s Bits」(Roost Records, 1950年代中期)
Roostレーベルからの作品はスティットのバラエティに富んだ面を示していますが、その中でも「Stitt’s Bits」は彼の敏捷かつ切れ味鋭い技巧がよくわかるミニアルバム的な仕上がりです。片面に短いトラックが連なり、まさに“ビッツ(切れ端)”というタイトルに相応しい内容。
ヴィンテージ盤ならではの温もりあるアナログサウンドの中で、スティットのブルージーな感情表現やフレーズの多彩さが引き立ちます。特にブルース曲の演奏においては、アコースティックな録音状態が音の余韻を生み出し、レコード再生時の自然なノイズさえも良い味付けとしてジャズファンに愛されています。
4. 「Sonny Stitt / Dizzy Gillespie - Diz and Getz」(Verve Records, 1953)
同じくアナログで歴史的価値が高いのが、ディジー・ガレスピーとの共演アルバムです。スタジオでのセッション録音ですが、当時のヴァーヴ・レコード盤は音質が良く、熱気あるモダンジャズがたっぷり楽しめます。
スティットのアルトサックスとディジーのトランペットが織り成す掛け合いは、ビバップの真髄を耳元で体感できる貴重な録音です。両者のテクニカルな即興演奏が連続し、聴き手を飽きさせない超一級のセッションとなっています。特にレコードでのリスニングでは、演奏の躍動感がより直に伝わり、デジタル音源にはないライブ感と臨場感があります。
5. 「Sonny Stitt Quartet - The Hard Swing」(Roost Records, 1956)
「The Hard Swing」は、彼のグループ演奏において特にスウィング感とビート感が顕著に出た作品で、オリジナルレコードはファクトリープレスの希少盤として評価されています。タイトル通りハードバップのビート感を前面に押し出し、スティットのアルトサックスは更にパワフルで自由度の高い表現を展開します。
当時のモノラル盤は、ジャズの躍動する息遣いやバンドメンバー間の緊密なコミュニケーションを聴き取るのに最適です。また、音量を上げてもアナログならではのザラつきや膨よかさが良い味付けとなり、ライブ会場さながらの空気感が楽しめます。
レコードでソニー・スティットの音楽を楽しむ理由
- ヴィンテージの機材で録音された時代背景をそのまま体感できる
- アナログ特有の暖かみあるサウンドがジャズの生々しい息遣いを引き立てる
- 盤の盤面を通じて発せられる空気感やライヴ感がデジタルにはない魅力を提供
- 希少盤としてコレクター価値も高く、ジャズ史を物理的に遺す文化財的側面も含む
まとめ:ソニー・スティットの名盤はレコードで聴くべき理由
ソニー・スティットはジャズアルトの巨匠として数多くの録音を残しましたが、彼の演奏の本質を知り、味わい尽くすにはやはりオリジナルあるいは初期プレスのレコード盤で聴くのが最も適しています。録音年代のアナログサウンドは、スティットのテクニックや表現力をありのまま伝え、ジャズの黄金期にまつわる歴史的背景すら体感させてくれます。
デジタル音源での手軽さも魅力ですが、ヴィンテージレコードを通じて彼の音楽を味わうことで、当時のジャズシーンの熱気や現場の空気感をより深く理解できるでしょう。ジャズファンが一度は手にしたい「Sonny Stitt Plays」や「The Hard Swing」をはじめとする名盤群は、まさにジャズの歴史を音で感じる上で欠かせない宝物です。


