AHUとは?空調機の仕組み・構造・役割をわかりやすく解説|建築設備の基礎知識


AHUとは

AHUとは「Air Handling Unit(エアハンドリングユニット)」の略で、建物全体の空気を処理・供給するための中枢設備です。
日本語では「空調機」や「空気調和機」と呼ばれ、オフィスビル、商業施設、病院、工場など、あらゆる建築物に導入されています。

AHUは、外気を取り込み、温度・湿度・清浄度を整えた空気を室内へ供給することで、快適で衛生的な室内環境を維持します。
つまり、建物の「肺」のような存在と言える装置です。


AHUの主な役割

AHUの目的は、単に空気を送ることではなく、「空気を処理して最適な状態にしてから供給する」ことです。
その主な役割は以下の通りです。

  1. 外気の取り込みと換気
     外気(OA:Outdoor Air)を取り込み、建物内の二酸化炭素や汚染物質を排出します。
  2. 温度・湿度の調整
     冷却コイルや加熱コイルによって、冷房・暖房を行い快適な室温を維持します。
  3. 除湿・加湿
     湿度が高い場合は除湿し、乾燥している場合は加湿して湿度を適正範囲に保ちます
  4. ろ過(フィルタリング)
     ダストフィルターやHEPAフィルターによって粉じん・花粉・微粒子などを除去します。

AHUの構造

AHUは複数の機能ユニットが一体化した構造で、一般的には以下のような構成要素から成り立っています。

構成要素役割
吸込口(OA)外気を取り込む入口部分。外気と還気を混合する場合もある。
フィルター部粉じんや花粉などの不純物を除去し、清浄な空気を供給。
冷却コイル/加熱コイル冷温水または冷媒を通して、空気の温度を調整。
加湿器蒸気や水を用いて湿度をコントロール。
送風機(ファン)処理された空気をダクトを通して各室に送る。
制御盤温度・湿度・風量を自動制御する中枢。

このように、AHUは空気処理の全工程を一台で行う総合空調装置といえます。


AHUの制御と省エネ

近年では、BAS(Building Automation System)と連携した自動制御システムにより、以下のような省エネ運転が行われています。

  • 外気冷房(エコノマイザー制御):外気温が低いときは外気を直接利用して冷房負荷を低減
  • VAV制御:各ゾーンの風量を可変制御し、無駄な送風を削減
  • 熱回収システム:排気の熱を利用して外気を予熱・予冷し、エネルギー効率を改善

これらの制御により、建物全体のエネルギーコストを大幅に削減できます。


AHUとFCUの違い

空調機(AHU)と混同されやすい装置に**FCU(Fan Coil Unit)**があります。
両者の違いは次の通りです。

項目AHUFCU
規模中〜大規模(ビル全体)小規模(個室・ゾーン)
設置場所機械室や屋上など天井裏や室内
空気処理外気を含めた処理が可能室内循環空気を再利用
役割全体の空調処理局所的な温度制御

まとめ

AHUは、建物全体の空調を担う空気処理の中心的存在です。
温度・湿度・清浄度を自在に制御し、快適で衛生的な空間をつくり出します。
また、省エネ化やIoT制御の進展により、AHUはスマートビルの中核設備としてますます進化を続けています。