防振基礎とは?仕組み・種類・設計のポイントを解説|建築設備の振動対策の基本


防振基礎とは

防振基礎(ぼうしんきそ)とは、建物内で発生する機械の振動を地盤や構造体に伝えにくくするための基礎構造のことです。
主に、空調機・ポンプ・発電機・冷凍機・ブロワなど、回転機器や往復運動機器を設置する際に採用されます。

これらの機器は運転時に振動を発生させ、建物全体に伝わると、天井や壁の共振・音の発生・精密機器の誤作動などを引き起こします。
そのため、機器と建物構造の間に防振構造を設けることで、振動エネルギーを吸収・遮断する役割を果たすのが防振基礎です。


防振基礎の仕組み

防振基礎の基本原理は、「質量+ばね+減衰」の組み合わせによる振動絶縁です。

  1. 質量(コンクリート基礎)
     重い基礎を設けることで、振動源の慣性力を抑制します。
  2. ばね(防振ゴムや防振装置)
     機械の振動を柔らかく受け止め、建物への伝達を低減します。
  3. 減衰(内部摩擦・粘弾性)
     防振材や空気ばねが、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収します。

つまり、防振基礎とは**「機械の揺れをゆっくり・小さく・建物に伝えないようにする仕組み」**です。


防振基礎の構造例

代表的な防振基礎の構成は次のようになります。

 ┌──────────────┐
 │ 機器本体(例:ポンプ) │
 ├──────────────┤
 │ アンカーボルト固定部 │
 ├──────────────┤
 │ コンクリート基礎(質量体) │
 ├──────────────┤
 │ 防振ゴム・防振ばね(支持装置) │
 ├──────────────┤
 │ 建物スラブ(構造体) │
 └──────────────┘

機器の下にコンクリートの質量体を設け、防振材を介して建物スラブに設置することで、振動の伝達を大幅に低減します。


防振基礎の種類

1. 防振ゴム式

最も一般的なタイプで、ゴムの弾性変形によって振動を吸収します。
耐久性が高く、保守が容易でコストも比較的安価です。

2. ばね式(コイルスプリング式)

低周波の振動に効果的で、大型機器や発電機などに用いられます。
ゴムよりも柔らかく設定できるため、防振性能が高い一方で、共振周波数の設計に注意が必要です。

3. 空気ばね式

高精度機器や研究施設など、**微振動を嫌う設備(精密計測機・電子顕微鏡など)**に使用されます。
圧縮空気を利用して高い防振性能を発揮しますが、コストやメンテナンス性の面で専門的対応が必要です。

4. フローティング式(浮き基礎)

防振ゴムやスプリングの上にコンクリート基礎を「浮かせる」構造。
機器全体を浮かせて設置することで、非常に高い遮断効果を得られます。
大型空調機や冷凍機の防振に多く採用されます。


防振基礎の設計ポイント

  1. 機械の重量と回転数の把握
     振動の大きさは機械の質量や回転速度に依存するため、設計時に正確なデータを把握します。
  2. 固有振動数の調整
     防振装置の「ばね定数」を調整し、機械の振動数と一致しないように設計します(共振防止)。
  3. アンカーボルトの設置方法
     振動を伝えにくくするため、アンカーの位置・長さ・本数を慎重に設定します。
  4. 基礎厚と配筋計画
     防振基礎の質量を確保するため、通常より厚いコンクリート基礎十分な配筋が必要です。
  5. メンテナンススペースの確保
     防振材の交換・点検を考慮して、周囲に一定の空間を設けるのが望ましいです。

防振基礎が必要とされる主な機械

  • 冷凍機・チラー
  • ポンプ・送風機・コンプレッサー
  • 発電機・モーター
  • 冷却塔
  • 空調機(AHU)・ブロワ
  • 精密加工機・分析装置(微振動対策用)

これらの設備は、振動源であると同時に周囲環境に影響を与えるため、防振基礎が必須となるケースが多いです。


防振基礎の施工上の注意点

  • 防振装置の水平を確実に取る
     傾きがあると防振性能が低下します。
  • 施工後の締付確認(再調整)
     荷重がかかると沈み込みが生じるため、設置後に再度レベル調整が必要です。
  • コンクリート打設時の振動防止
     施工中に過振動を与えると、配筋の浮きや空気ばねの損傷の原因になります。

まとめ

防振基礎とは、機械振動を建物に伝えないための重要な構造要素です。
特に空調・給排水・発電などの設備機器では、防振設計の有無が快適性や耐久性に大きく影響します。
建物の用途や設置機器の特性を考慮し、最適な防振方式を選定することが、省エネ性・安全性・快適性の向上につながります。