Supertrampをレコードで聴く:オリジナル盤の見分け方・音質比較とコレクターの相場ガイド
はじめに — Supertrampとレコードの魅力
Supertramp(スーパー・トランプ)は1969年にロンドンで結成された英ロック・バンドで、リック・デイヴィス(Rick Davies)とロジャー・ホジソン(Roger Hodgson)のツイン・ソングライター/ツイン・ヴォーカルを中心に1970年代後半に世界的な成功を収めました。彼らの名曲群はラジオやストリーミングでも広く知られていますが、レコード(アナログ盤)という物理メディアで聴くときに初めて分かる音像の厚みやマスターの個性、ジャケットやスリーヴに記されたクレジットの情報など、別の楽しみ方が広がります。本稿では名曲とその背景を中心に、特にレコード(オリジナル盤/プレスやパッケージ)に焦点を当てて詳しく解説します。
主要アルバムと名曲(レコード視点での注目点)
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Crime of the Century(1974)
バンドの商業的・批評的転機となった傑作。ケン・スコット(Ken Scott)が制作面で関わり、スリリングなアレンジとオーケストレーション、そして「Bloody Well Right」「Dreamer」「School」といった楽曲を収録。オリジナルのLPはA&Mレコードからのリリースで、ゲートフォールド(折りたたみ)仕様のジャケットを採用している版が多く、ジャケット内面の歌詞やクレジットを確認できる点がコレクターには嬉しいポイントです。初期プレスはマスタリングの違いで音の浮き沈みがあり、マトリクス番号やカッティングエンジニアの刻印を確認することで初版か再発かを見分けられます。
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Crisis? What Crisis?(1975)
商業的にはCrimeの成功を受けたフォローアップ。ジャズやプログレッシヴな要素を残しつつポップ寄りの曲もある作品で、LPでは歌詞・クレジットの印刷、アートワークの差異が各国プレスで見られます。レコード盤面やラベルの表記(UK版と米国版のレーベル差)をチェックするのが重要です。
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Even in the Quietest Moments...(1977)
「Give a Little Bit」などを収録。シンプルなアレンジの曲でも、オリジナル・アナログ盤は中低域の厚みやアコースティック楽器の響きが良く出るため、エレガントな音色を求めるならオリジナルの良好なコンディションのLPが魅力です。
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Breakfast in America(1979)
バンドの最大の商業的成功作で、「The Logical Song」「Breakfast in America」「Goodbye Stranger」「Take the Long Way Home」など多数のヒットを生みました。発売当時はA&Mから複数の仕様(シングルカット、7インチ・シングル、プロモーション盤、国によるジャケット差)が存在します。ジャケットはニューヨークの街並みを模した独創的なアートワークで、オリジナルUK/USプレスは盤質・ジャケット印刷の質が異なるため、コレクターの間で評価対象になります。オリジナル・マスターを使った初期プレスが音質で評価されやすく、後年のリマスターや再発(CDやデジタル用のマスターを元にしたカッティング)と比較して温かみのあるアナログらしい響きを残すことが多いです。
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Paris(1979/1980 ライヴ)
1979年のツアーからのライヴ録音をまとめた二枚組LP。スタジオ録音とは別のダイナミクスと臨場感が楽しめ、特にダブル・アルバムの重量盤としての存在感、盤面の溝幅・音像の開き方などレコードならではの魅力が出ます。ライヴ盤のため、カッティングやミックスのバランスで各プレスの差が顕著に出る点に注意しましょう。
代表的名曲とレコードでの楽しみ方
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Dreamer
軽快なピアノとホジソンのシャープなヴォーカルが光る曲。アナログ盤で聴くとピアノのアタックやハイハットの定位がはっきり出て、曲の疾走感が増します。1974年のシングル盤(7インチ)は盤質の違いにより音抜けが変わるため、良好なプレスを探す価値があります。
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Bloody Well Right / School
ヘヴィなリズムとリック・デイヴィスの独特な歌い回しが魅力。これらはアルバム曲として一体的に評価されることが多く、A面・B面の構成がLPでの流れ(side A / side B)によるドラマ性を与えています。オリジナルLPで聴くと、曲間の空気感やフェードの仕方など、CDでは味わいにくい表現が楽しめます。
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The Logical Song / Breakfast in America / Goodbye Stranger
1979年のヒット群。7インチシングルは各国でジャケットやB面が異なり、コレクター間でバリエーション収集の対象になります。シングル用のモノ・ステレオ違いやプロモ盤(ラベルの色や“Not for Sale”表記)など、レコード市場での希少性は音質だけでなく仕様の違いにも影響します。
レコード収集の実務的ポイント(本盤選びと保存)
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オリジナル・プレスの見分け方:ラベル(A&Mのロゴや色調)、マトリクス/ランアウト刻印(盤縁の刻印)、ジャケットの印刷方式(光沢/マット、折り目や糊の仕上げ)などを確認しましょう。初版はしばしば高値が付きやすいですが、必ずしも音質が最高とは限らないため試聴(試盤)と外観の両方をチェックすることが重要です。
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マスタリングとカッティング:同一タイトルでも初期アナログ・マスターを使った初版と、後にデジタルマスターを使って再プレスされた版では音像が大きく異なります。温かみのあるアナログらしい音を求めるならアナログ世代の初期プレス(1970年代のカッティング)を狙うのが定石です。
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国内外プレス差:UKプレスとUSプレスではラベル仕様、インナースリーヴ、ジャケットの紙質が異なることが多く、音場の印象も変わることがあります。どちらが良いかは好みと個体差によりますので、可能であれば同じアルバムの複数プレスを聴き比べるのがベストです。
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保存方法:アナログ盤は高温・湿気・直射日光を避け、立てて保管するのが基本。ジャケットは曲がったり日焼けしたりしないようにビニールスリーブやボードを併用してください。針圧や再生機器のメンテナンスも音質維持に重要です。
コレクター向けの注目点と相場感(概説)
SupertrampのオリジナルLPは作品ごとに人気に差があります。代表作である「Crime of the Century」「Breakfast in America」は需要が高く、良好なオリジナル盤(Mint〜Near Mint)は中古市場で高評価を受けることが多いです。特に初回プレスやマーケティング用プロモ盤、限定仕様(カラーヴァイナルやプロモ・ジャケット)は希少性が上がります。ただし相場は盤質、ジャケットの状態、付属のインサート有無、国別プレスなどで大きく変動しますので、購入時は出品者が明記するコンディション(VG+/NM等)と画像を慎重に確認しましょう。
サウンド面の聴きどころ(アナログならでは)
Supertrampはキーボード(リックのピアノ、シンセ)とホジソンのギター/ハーモニーが音の核になっています。アナログ盤で聴くと、ピアノの倍音、アナログ・コンソール由来の中域の厚み、サックスやコーラスの広がりなどが豊かに再現されます。逆に高域の伸びやノイズは盤のコンディションに左右されるため、良好な盤での再生が前提になりますが、その分「生々しさ」や「空気感」はデジタルでは得にくい魅力です。
まとめ — 名曲はレコードでこそ違いがわかる
Supertrampの楽曲群はポップとプログレッシヴの美しい混交で、レコードで聴くことにより制作当時の音作りや演奏のニュアンスがストレートに伝わってきます。オリジナル・プレスのジャケットの仕上げやマトリクス刻印、国ごとの仕様差など、レコード収集の楽しさは音楽そのもの以外の情報にも拡がります。名曲をより深く味わいたいなら、盤の世代やカッティングの違い、そして保存状態に気を配りながら複数のプレスを比較してみることをおすすめします。
参考文献
- Supertramp - Wikipedia
- Crime of the Century - Wikipedia
- Even in the Quietest Moments... - Wikipedia
- Breakfast in America - Wikipedia
- Supertramp - Discogs
- Supertramp - AllMusic
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