デイヴ・クラーク・ファイヴ(DC5)レコード徹底ガイド|英国盤・米国盤の見分け方とコレクター向け保存・鑑定ポイント
はじめに — デイヴ・クラーク・ファイヴとレコード文化
デイヴ・クラーク・ファイヴ(The Dave Clark Five、以下DC5)は1960年代の英国ビート・ブームを代表するバンドの一つで、ビートルズと並ぶ「ブリティッシュ・インヴェイジョン」を米国に持ち込んだ重要な存在です。楽曲の勢いとシンプルな編成(ドラム、ヴォーカル、ギター、ベース、サックス)で知られ、特に「Glad All Over」や「Bits and Pieces」などのシングルは当時のレコード市場で大きな影響力を持ちました。本稿では、CDやサブスクを離れ“レコード”に焦点をあて、彼らのシングル/アルバムのリリース史、英国盤と米国盤の違い、コレクターズ・アイテム、プレス/エディション判別や注意点、再発と著作権管理の歴史的経緯までを詳述します。
メンバーと活動の概略(レコードと関係する背景)
DC5は1958年にロンドン北部のトッテナムで結成され、リーダー兼ドラマーのデイヴ・クラーク(Dave Clark)、リード・ヴォーカル/キーボードのマイク・スミス(Mike Smith)、ギターのレニー・デイヴィッドソン(Lenny Davidson)、ベースのリック・ハクスリー(Rick Huxley)、サックス/ハーモニカのデニス・ペイトン(Denis Payton)で最もよく知られます。1963年以降、複数のシングルが英国チャートや米国チャートでヒットし、レコード販売がバンドの人気を支えました(詳細は後述)。
レコード・レーベルとリリース体系 — 英国盤と米国盤の違い
DC5のシングルおよびLPは国ごとにレーベルや選曲、ジャケットが異なることが多く、これは1960年代に一般的だった慣行です。英国ではEMI傘下のColumbia(Columbia Graphophone Company)からのリリースが中心でした。一方、米国ではCBS系のEpic Recordsが主要なディストリビューターでした。
- 英国盤(Columbia): 単独のシングルやアルバムが英国市場向けに制作され、A面/B面の選択やシングル発売時期が米国盤と異なる例が多い。初期の英国シングルはモノラル・プレスが主体。
- 米国盤(Epicなど): 英国ヒット曲を編集して独自のコンピレーションLP(例:"Glad All Over" 名義の米国LPなど)を出すことがあり、曲順・収録曲が英国盤アルバムと一致しないことがある。米国向けはモノラル版と後年のステレオ版が並行して流通した。
代表的なシングルとレコード史上の位置づけ
DC5のレコード史において外せないシングルには次のようなものがあります。
- Glad All Over(1963) — 英国チャートで1位を獲得し、バンドのブレイクを決定づけた作品。英Columbiaのオリジナル・プレスはコレクターから人気があります。
- Bits and Pieces(1964) — 英国で上位に入り、米国でも成功。シンプルでパンチのあるリフと掛け声が特徴で、オリジナルの45回転盤(45 rpm)に価値がつくことがある。
- Catch Us If You Can(1965) — 同名の映画(John Boorman監督)とも連動した楽曲で、サウンドトラック関連のLPやシングル・スリーブがコレクターに注目されます。
これらのシングルは、初期のオリジナル・プレス(特にプロモ盤や初版ジャケット付き、完品のピクチャー・スリーブ等)が高値で取引される傾向があります。
アルバム展開と編集差(英国盤と米国盤の“別物”文化)
1960年代の英米市場では、アルバムの編集方針が国ごとに異なりました。DC5も例外でなく、英国でのアルバムと米国でのアルバムは収録曲が重複する一方で差異が大きいものがあります。例えば、米国向けのLPはシングル曲を中心に編集されたコンピレーション的なアルバムが多く、逆に英国盤はスタジオ作をまとまった形で出すことが多かったという違いがあります。レコード収集家は“英国初版LP”と“米国初版LP”を別個のアイテムとして扱うことが一般的です。
プレスの識別ポイントと真贋チェック
オリジナル盤を見分けるための基本的なチェックポイントは以下です。
- レーベル情報:英国Columbiaと米国Epicのラベルデザイン(ロゴ、カラー、表記)を把握する。
- マトリクス/ランアウト・グルーヴ:盤の内周に刻印されたスタンパー番号やマトリクスは通常、初版判別に重要。マトリクスが“1A”や“1B”といった初回プレス表記であるか確認する。
- ジャケット:オリジナル・スリーブの材質や印刷の質感(薄手の紙か厚手のコーティングかなど)、折り目や内袋の有無をチェック。
- プロモ盤:レコード会社のプロモラベル("Not for Sale"表記など)は商業盤とは別扱いで希少価値が高い。
- モノラル/ステレオ表記:1960年代は両者が混在。人気曲のモノラル初版は評価されやすい。
コレクターズ・アイテムと希少盤の例
一般的に高評価・高価で取引されるのは次のような要素を満たす盤です。
- 英Columbiaの初回リリース・シングル(特に勢いのあるジャケット付きや工場刻印が初回を示すもの)
- 米国Epicのプロモ45回転盤や特殊ピクチャースリーブ付きの盤
- 映画「Catch Us If You Can」関連のオリジナル・サウンドトラックLP(当時のプレスが少なかった場合、希少性が高い)
- 未発売曲や別テイクがB面に使われている初期プレス
ただし、具体的な市場価格は盤質(Mint~Poor)、付属品(インナー、ブックレット等)、オリジナリティ(プロモか市販か)で大きく変動します。また近年はデジタル人気の高まりで原盤の良好な状態が見直され、英国・米国の初版LP/EPの人気が再燃しています。
再発/コンピレーションとデイヴ・クラークの権利管理
DC5はデイヴ・クラーク本人が強い権利管理を行ってきたことで知られ、結果として長年にわたり公式な再発が限定的でした。これがオリジナル盤の希少性を高める一因でもあります。近年、部分的な再発や公式ベスト盤が出回るようになりましたが、完全網羅のアナログ・ボックスセットが常にあるわけではなく、コレクターはオリジナル盤や当時の米英盤の違いに強い価値を見出す傾向があります。
盤の保存と音質改善の実務的アドバイス
ヴィンテージ・レコードの保存はコレクターにとって重要です。以下は実務的なアドバイスです。
- 保管は立てて行い、直射日光や高温多湿を避ける。
- 専用のインナー(静電気防止)と外袋を使用するとジャケットと盤を保護できる。
- 再生機器(カートリッジ、針)の適切な選定と定期的な針交換で盤に負担をかけない。
- 軽度の表面ノイズは専用の洗浄(静電気除去や水洗いに適したクリーニング)で改善することがあるが、自己流の過度なクリーニングは盤面を痛めることがある。
購入・鑑定の現場での注意点
DC5のレコードを入手する際は、販売者の情報(出品説明、写真、マトリクス表記)を必ず確認してください。ネットオークションや中古ショップでは、プロモ盤や英米初版の価値を知らない出品者が低めに出しているケースもありますが、逆にコピーやリイシューの混同も起こりやすいので要注意です。専門のディスコグラフィ(Discogs等)でリリース毎のラベル違いを確認し、疑義があれば専門家に鑑定を依頼するのが安全です。
まとめ — レコードを通じて見るDC5の歴史的意義
デイヴ・クラーク・ファイヴは“シングル中心”の時代にあって、短い楽曲のインパクトとレコード市場での戦略によって世界的成功を収めました。彼らのレコードは当時のポピュラー音楽流通の特徴(英米での異なる編集・ジャケット、レーベル差異、プロモの存在)を色濃く残しており、単に音楽を聴く媒体としてだけでなく、コレクターにとっては史料的価値・投資的価値も持ち合わせています。オリジナルの英国盤や米国盤を手に取れば、1960年代の流通やマーケティング、そしてバンドの独自の置かれた立場がより手触り感をもって伝わってきます。
参考文献
- The Dave Clark Five — Wikipedia (英語)
- The Dave Clark Five Biography — AllMusic
- The Dave Clark Five — Discogs (ディスコグラフィ参照)
- Official Charts — Dave Clark Five(UKチャート)
- Billboard — The Dave Clark Five(米国チャート)
- Catch Us If You Can — BFI(映画情報)
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