吸込管とは?ポンプ設備に欠かせない基礎知識と設計ポイントを徹底解説【建築・土木設備の基本】
吸込管とは
吸込管(すいこみかん)とは、ポンプが水や液体を吸い上げるために設置される配管のことです。
ポンプの吸込口と水源(槽・井戸・水槽など)をつなぐ管路を指し、
建築設備・給排水設備・土木工事・農業用水・災害対策施設など、幅広い分野で使用されています。
吸込管の設計や施工は、ポンプの性能に直結します。
適切な径・長さ・勾配・接続部の形状が守られていないと、
キャビテーション(気泡発生)や吸込み不良などのトラブルを引き起こす可能性があります。
吸込管の役割
ポンプは自ら水を吸い上げる力を持っているわけではなく、
ポンプ内部に負圧を生じさせて外気圧で水を押し上げる仕組みで動作します。
そのため、吸込管は次のような重要な役割を担います。
- 水源からポンプへ水を安定供給する
- 空気や気泡の混入を防ぐ
- 水流の乱れを抑え、安定した吸込みを確保する
- 逆流・サイホン作用を防止する
吸込管の設計を誤ると、ポンプの効率低下や空運転、振動、騒音、故障の原因となります。
吸込管の基本構成
吸込配管は、主に以下の部材で構成されます。
| 部材名 | 役割 |
|---|---|
| 吸込管本体 | 水源とポンプをつなぐ管路 |
| 吸込フランジ | ポンプ吸込口との接続部 |
| ストレーナー(吸込金網) | ゴミや異物の混入防止 |
| 逆止弁(フート弁) | 水の逆流を防ぐ、呼び水保持 |
| エルボ・曲管 | 吸込方向の変更 |
| フレキシブルジョイント | 振動吸収・位置調整 |
| エア抜きバルブ | 管内空気の排出(特に立上り部) |
これらの部品が正しく配置・接続されることで、ポンプの性能が最大限に発揮されます。
吸込管の設計上のポイント
1. 勾配はポンプ側に下げる
吸込管は水源からポンプに向かって下り勾配(上向きではなく)で設置します。
逆勾配になると空気が溜まり、吸込み不良を起こすため注意が必要です。
2. 曲がりをできるだけ少なく
吸込側は流れが不安定になりやすいため、エルボ・チーズなどの曲管は最小限に。
直管距離を十分確保することで、ポンプ入口の流れを整流します。
3. 吸込み口の位置を確保
吸込口(ストレーナー)は、水槽底面から少なくとも300mm以上離すのが一般的。
底泥や異物を吸い込まないようにするためです。
4. 水漏れを絶対に防止
吸込管にわずかな隙間やピンホールがあると、空気が混入して吸い込みが途切れる。
ネジ接合部・フランジ部の気密性確保が最重要です。
5. 吸込ヘッドの確認(NPSH)
ポンプの仕様には「必要吸込ヘッド(NPSHr)」が定められており、
これを下回るとキャビテーションが発生します。
設計時には配管抵抗・高さ・圧力損失を考慮してNPSHを確保します。
吸込管でよく使われる材質
| 材質 | 特徴・用途 |
|---|---|
| SGP(白ガス管) | 一般的な給排水・設備用 |
| STPG鋼管 | 高圧・温水ラインに使用 |
| SUS304ステンレス管 | 耐食性が高く、清水・工業水に最適 |
| VP・HIVP塩ビ管 | 軽量・小規模ポンプで採用される |
| フレキシブルホース | 仮設や振動吸収部に使用 |
土木現場では、塩ビ・鋼管・ホースを組み合わせた仮設吸込み配管も多く見られます。
キャビテーションを防ぐための設計注意
吸込管の不良はキャビテーション(気泡破裂による損傷)の主要原因です。
以下のような対策が有効です。
- 吸込管径を吐出管より1サイズ大きくする
- 長すぎる配管や急カーブを避ける
- ポンプ設置位置をできるだけ低く(吸込み揚程を小さく)する
- ストレーナーの目詰まりを防ぐ
- 吸込側のエア混入を徹底排除
これらを守ることで、ポンプの寿命を延ばし、静音運転・効率運転が可能になります。
吸込管の代表的な設置例
- 受水槽 → 給水ポンプ
- ピット → 排水ポンプ
- 取水井 → 原水ポンプ
- 消火水槽 → 消火ポンプユニット
- 河川・貯水池 → 仮設排水ポンプ
どのケースでも「安定した水供給」「エア混入防止」「メンテナンス性確保」が共通の課題となります。
まとめ
吸込管とは、ポンプが水を吸い上げるために欠かせない吸水側配管であり、
その設計・施工品質がポンプ全体の性能と耐久性を大きく左右します。
吸込勾配・空気混入防止・気密性・NPSHの確保を意識し、
適切な材質と構造で施工することが、安全で効率的な給排水システムの鍵となります。
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