大野雄二徹底解説 — ルパン三世の名曲から学ぶ作曲・編曲テクニックとおすすめ盤
はじめに — 大野雄二という作家の魅力
大野雄二は、日本の映画・テレビ音楽、特にアニメ「ルパン三世」シリーズのサウンドトラックで広く知られる作曲家・ピアニストです。ジャズを基盤に、ファンク、ラテン、オーケストラ的な表現を自在に取り入れたサウンドは、キャッチーかつ高度に洗練されており、国内外の聴衆を惹きつけてきました。本コラムでは代表的な名曲をピックアップし、楽曲構造、編曲上の工夫、演奏的なポイント、そして影響や聴きどころを深掘りしていきます。
代表曲・名曲の紹介と深堀り
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「ルパン三世のテーマ」シリーズ(メイン・テーマ群)
ルパン三世のメイン・テーマは、作品を象徴するフックを持つメロディと、ジャズ/ファンクを横断するリズム感が特徴です。いくつかのバージョン(テレビシリーズや映画、1980年代以降のアレンジ違いなど)が存在しますが、共通点は「一度聴いたら忘れられないモチーフの強さ」と「リズムセクションのグルーヴ」です。
作曲・編曲上の特徴:
- シンプルかつ強力な主題動機:反復される短いフレーズが耳に残る。
- ブラスとリード楽器によるパンチのあるスタッカートと、ピアノ/エレピによる流麗な補助線の組み合わせ。
- 和声はジャズ由来のII–V進行やモードの利用が多く、ポップな響きと複雑さを両立。
- ベースとドラムの「前へ出る」グルーヴにより、テーマがエネルギッシュに推進される。
聴きどころ:イントロ~テーマ提示部分の「リズムの抜き差し」、ブラスのアクセント、ピアノの即興的なフィル。原曲と別アレンジを比較すると、大野の編曲センス(何を強調するか、どの楽器にメロディを託すか)がよく分かります。
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「愛のテーマ」(ルパン三世のバラード系)
シリーズ中に散見されるバラード系の楽曲群(通称「愛のテーマ」的な楽曲)は、大野の抒情性が顕著に出る領域です。シンプルな旋律線と和音の色づけで情感を醸成し、ストリングスやフルートなど柔らかい音色でドラマ性を強めます。
作曲・編曲上の特徴:
- メロディは歌もの的で長いフレーズを用いることが多い。
- 和声はテンションを付与したコードや借用和音を用い、同じ進行でも色彩感を変化させる。
- アレンジでは弦楽器セクションやホーンを抑えめに配置し、ピアノやギターのアルペジオで温度感を作る。
聴きどころ:メロディの1音1音の「間(ま)」と、コードのテンションの選び方。テーマのバリエーションでストーリーテリングを行う手法も学べます。
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ジャズ寄りのインスト・ナンバー(Lupintic名義のライブ曲など)
大野は自身の名義やバンド(例えばルパンに準じた編成での演奏を行うバンド)でジャズ演奏も行ってきました。ここでは即興性とアレンジ力が光ります。テーマのモチーフを発展させ、長いソロやセクション間の駆け引きで聴かせるタイプの曲が多いです。
作曲・演奏上の特徴:
- テーマ→ソロ→テーマのジャズ標準構成を基に、オーケストレーション的なアプローチを加味。
- ソロはピアノ、サックス、トランペットなど複数楽器が順繰りに取ることが多い。
- リズムチェンジやメロディのモード変換を使って聴き手の興味を維持。
聴きどころ:ソロの「即興性」とアンサンブルの「呼吸」。大野がどのように主題を再構成するかを追うと面白いです。
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映画音楽やTVドラマの劇伴(他作品の名曲群)
ルパン以外にも、大野は映画やテレビドラマで多様なスコアを書いています。場面に応じてジャズ的手法を和声的・編曲的に応用し、演出に寄り添う音楽づくりが評価されています。
特徴:場面描写のためのモチーフの短さ、サウンドトラックとして聴いたときに独立してひとつの曲として成立する仕立ての良さ。
作曲・編曲のテクニカルな観点
以下は大野の音楽を分析する際に押さえておきたいポイントです。演奏者や作曲・編曲を学ぶ人にとって実践的な観点になります。
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ハーモニーとコード感
ジャズ的なII–V進行、多様なテンション(9th、13th等)、モード的な色付け(ドリアンやミクソリディアンスケール風)を駆使しつつ、ポピュラー音楽的な明快さを失わない。短いモチーフを和音の配置で劇的に変化させる巧みさがあります。
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リズムとグルーヴ
ファンクやラテンの影響を受けたリズム感が強いです。ベースはメロディックに動くことが多く、ドラムはシンコペーションを効かせたパターンで曲全体の推進力を作ります。グルーヴの作り方が楽曲の“顔”を決めます。
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編曲(オーケストレーション)の妙
どの楽器に主題を任せるか、どのセクションで音色を切り替えるかという判断が的確で、同一主題でもアレンジ次第で劇的に印象を変えられます。ブラスの使い方、弦のパッド、ピアノやエレピの置き方などが非常に計算されています。
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モチーフの扱い
短い動機を各声部で分散させて展開する手法を多用。主題のリズムや音形を変えずに調性や伴奏を変えることで変奏効果を出すのが得意です。
聴き方・楽しみ方の提案
- まずはメロディだけを追ってみる:主題がどれほど記憶に残るかを体感する。
- 次に編成ごとに比較:オーケストラ版、コンボ(ジャズバンド)版、ソロピアノ版などでどの要素が変わるかを聞き比べる。
- リズムセクションに注目:ベースラインやドラムのフィル/グルーヴが曲の表情をどのように変えているかを確認する。
- スコア(あるいは耳コピ)すると見えてくる構造:モチーフの展開、転調、コード進行の工夫を学べる。
影響とレガシー
大野の音楽はアニメ音楽の枠を超えてジャズ/ポップスの世界にも影響を与え、多くのミュージシャンやリスナーにカバーやリミックスを促してきました。特に「ルパン三世のテーマ」は世界的にも知られ、世代を超えて演奏され続けています。劇伴作家としての柔軟性と、ジャズマンとしての即興性を兼ね備えている点が大きな魅力です。
入門盤・おすすめアルバム(聴きどころ付き)
- 「ルパン三世」オリジナル・サウンドトラック各種:代表的なテーマやバラードを網羅する定番。シリーズごとのアレンジ違いを比較すると面白い。
- 大野雄二名義のライブ/ジャズ作品:テーマをジャズ寄りにアレンジした演奏で、即興やアンサンブルの妙が楽しめる。
- コンピレーション盤やベスト盤:名曲を手早く聴きたいときに便利。
まとめ
大野雄二の名曲群は、「覚えやすいメロディ」と「深みのあるジャズ的処理」が両立しているのが最大の魅力です。楽曲ごとのアレンジや演奏編成で印象が大きく変わるため、同じテーマを複数バージョンで聴き比べることで、その作曲技法と編曲センスの奥行きをより深く味わえます。作曲や編曲を学ぶ人にとっても、非常に示唆に富む教材になるでしょう。
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