モーセス・サムニーのおすすめレコード完全ガイド — Aromanticism・græの聴きどころと盤の選び方

はじめに — モーセス・サムニーという稀有な表現者

モーセス・サムニー(Moses Sumney)は、ソウル、フォーク、エレクトロニカ、実験音楽を横断する声とサウンドで知られるアーティストです。天性とも言える高音域のファルセット、重ねられたコーラスワーク、静寂と爆発を行き来するダイナミクス、そして「孤独」「アイデンティティ」「性愛/無性愛」などを巡る深い歌詞が特徴。ここでは、彼の作品群の中から“まず手に入れたい”レコードを厳選し、それぞれの聴きどころ、制作背景、コレクションとしての価値(どの盤を狙うか)まで深掘りして解説します。

Aromanticism(おすすめ理由と深掘り)

まず押さえておきたいのがデビューアルバム「Aromanticism」。外向きの恋愛物語ではなく、無性愛(aromanticism)というテーマを軸に「人と関わること・関わらないこと」を哲学的に、そして詩的に描き出した作品です。

  • 音楽的特徴:アコースティックな指弾きギターやミニマルなピアノ、繊細なストリングスをベースに、サムニーの層状のファルセットが楽曲を包み込みます。アンビエント的な余白を活かしたアレンジで、声のディテールが前面に出るミックス設計。
  • 代表曲と聴きどころ:
    • 「Doomed」— 序盤の静けさから徐々に広がる感情、歌詞の直球さと声の脆さが共鳴する一曲。サムニーを象徴する曲のひとつ。
    • 「Self-Help / The System」— 断絶と癒しをテーマにした展開、重ね録りされたコーラスの美しさ。
    • 「Quarrel」— よりソウルフルでダイナミック。感情表出の強さが印象的。
  • 作品としての価値:コンセプトの明確さと完成度の高さから入門盤として最適。歌詞世界に深く没入しやすく、ライブやストリーミングでの断片的な印象よりもレコードで通して聴くことで真価が出ます。
  • ヴィニールの狙い目:初回プレスや限定色盤は現物としての満足度が高く、ジャケット写真や歌詞カードの併読で世界観がさらに深まります。

græ(グレイ) — ジャンルを解体する野心作

二作目の「græ」は、アーティストとしての多面性を大胆に提示した作品で、ジャンルの垣根を壊しながら自己を問い直す野心作です。二部構成やコラボレーションを用いて「一人称」の揺らぎや社会的な文脈まで範囲を広げています。

  • 音楽的特徴:アンビエント、アヴァンポップ、インダストリアル的な質感、R&B的ビート、実験的ノイズなど、多様な要素が同居します。曲によってサウンドプロダクションの手法が大きく異なるため、聴き手の集中と反復が報われる構造。
  • 代表曲と聴きどころ:
    • 「Virile」— 権力や男性性(masculinity)をテーマに、パーカッションと鋭いボーカル表現で挑む挑発的なナンバー。
    • 「Cut Me」や「Me in 20 Years」— 感情の露出と内省が交差する叙情的な楽曲。サムニーの歌唱のレンジが最もよく分かる曲群。
    • アルバムの全体構成— 抑制と爆発、親密さと距離といった対比が随所に仕込まれており、一枚を通して「人格の分裂と統合」を味わえる。
  • 作品としての価値:サムニーの表現の幅を示す作品で、単一ジャンルの音楽に飽きたリスナーに刺さります。歌詞や声の使い分け、曲ごとの音像設計を楽しむ“鑑賞の深さ”があります。
  • ヴィニールの狙い目:ダブルヴァイナル仕様や限定アートワーク版は、アルバムの物語性を物理的に体現するのでコレクション性が高いです。

初期EP・シングル(発展の過程を追う)

Aromanticism以前のEPやシングルは、サムニーの声質や作風の核がどのように育ったかを知るのに重要です。ミニマルな弾き語りと実験的なループ、早期からの多重録音の手法がここで見えます。

  • 注目点:初期曲はライブ感や即興的なニュアンスが残り、後の精巧なプロダクションと比べると生々しさがあります。コアなファンはこうした初期盤を押さえることで、アーティストの成長曲線を追えます。
  • 聴き方:EP→アルバムという順で聴くと、アレンジの拡張やテーマの深化が実感できます。初期の粗さが逆に作品の地層を示すので、繰り返しの再生で新たなニュアンスが見つかるでしょう。

ライブ盤・映像表現の注目点

サムニーの魅力はスタジオ音源だけでは語れません。ライブや映像では彼の声の生々しい倍音、空間の使い方、視覚表現(ステージング、衣装、照明)を通じて楽曲が再解釈されます。

  • ライブでの聴きどころ:アレンジの変化、即興パート、観客との距離感。曲が別の意味を帯びる瞬間が多く、ライブ録音盤や映像を合わせて楽しむと作品理解が深まります。
  • 映像表現:ミュージックビデオや短編映像作品は歌詞世界を視覚化しており、特に「Doomed」のような代表曲は映像と音楽が強く結びついて記憶に残ります。

レコードを選ぶコツ(版の違い、アナログで聴く価値)

ここでは再生や保管の方法ではなく「どの盤を選ぶか」という視点でのアドバイスをまとめます。

  • 初回プレスや限定色盤:アートワークやパッケージの豪華さ、ライナーノーツの有無で作品理解が深まることがあります。コレクション目的なら初回や限定の有無をチェック。
  • ダブルアルバム/特別エディション:「græ」のような構成的に厚みのある作品は、ダブルヴァイナルでの収録が理想。曲順や分割がアルバム体験に影響するため、CDや配信の順序と差異がないか確認してください。
  • 輸入盤と国内盤:輸入盤はジャケットの表現がオリジナルに忠実なことが多く、国内盤は歌詞翻訳や日本語帯などが付くことがあります。どちらを重視するかで選ぶとよいでしょう。

聴くときのアプローチ(集中して味わうために)

  • ヘッドフォンで声の細部(息づかい、ハーモニーのズレ)を確認する。
  • 歌詞カードを読みながら何度か通して聴く。サムニーの歌詞は断片的なイメージで破片化されるため、繰り返しで意味が接続されます。
  • アルバムを作中の順序で通して聴く。特に「Aromanticism」や「græ」は曲順に物語性や対比が組み込まれています。
  • ライブ映像と比べて聴くことでアレンジの変化や表現の幅が見えてきます。

まとめ — どの盤から買うべきか

入門としては「Aromanticism」で彼の声と世界観をじっくり味わい、その後に「græ」で表現の幅と挑戦的な側面を体験するのが王道ルートです。初期EPはコアな魅力を知るうえでの補完になります。物理盤を選ぶなら、アートワークや盤の仕様(初回/限定/ダブル)をチェックして、自分の聴き方やコレクションの優先度に合わせて購入すると良いでしょう。

参考文献

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/

また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery