Shivkumar Sharma(シヴクマール・シャルマ)完全ガイド:サントゥール名演と必聴レコード(Call of the Valleyほか)
イントロダクション — サントゥールを世界へ広めた名手
Shivkumar Sharma(シヴクマール・シャルマ、1938–2022)は、北インド古典音楽のサントゥール(インド式ハンマー・ダルシマー)を現代に復権させた演奏家です。楽器そのものを独自に発展させ、リード楽器としての可能性を切り拓いたことにより、インド古典音楽の新しいリスナー層を獲得しました。本コラムでは、彼のキャリアを代表するレコード(アルバム)を中心に、音楽的特徴・聴きどころ・背景を深掘りして紹介します。
Shivkumar Sharma を知るための基礎
- 楽器と表現:サントゥールの繊細な打弦音と持続音を活かし、ラーガ(旋法)の表情を歌うように表現します。音の粒立ちと微細なビブラート、フレージングの抑揚が特徴です。
- 演奏スタイル:古典的なラーガ演奏の中で、さまざまなテンポ変化と抑揚を用いることで叙情性を高めるのが得意でした。伴奏(タブラ等)との対話も重要な要素です。
- コラボレーション:特にフルート奏者 Hariprasad Chaurasia との共演や、ギター奏者 Brij Bhushan Kabra との組み合わせなど、ジャンルや編成を超えた名演が多数あります。また、作曲家としては Hariprasad Chaurasia と組んで映画音楽(Shiv‑Hari)を手掛け、ポピュラーなヒットも生み出しました。
おすすめレコード(必聴盤)
1) Call of the Valley(1967) — 伝説的コンセプト盤
おすすめ度:★★★★★
概要:Shivkumar Sharma(サントゥール)、Hariprasad Chaurasia(フルート)、Brij Bhushan Kabra(ギター)による1967年リリースのアルバム。カーストや形式よりも「情景」を描くコンセプトアルバムで、パンジャーブの谷(=“Valley”)を舞台に朝から夜までの時間の流れを音で表現します。
聴きどころ:
- 編成の妙:サントゥールとフルート、ギターという編成が、古典を土台にしつつポピュラーな親しみやすさを生み出しています。ギター(Brij Bhushan Kabra)がインド古典の調性に溶け込む聴き慣れない響きも魅力。
- 曲ごとのストーリーテリング:朝(Bhairav系)、昼(Kafiなど)から夜(Yamanなど)へと移るプログラミングが巧みで、通して聴くと一つの旅のように感じられます。
- 録音の温度感:オリジナルLPや良質なリイシューは、楽器の細かな音色と空気感をよく捉えています。サントゥールの瞬発音やフルートの息遣いが鮮明に届きます。
なぜ重要か:西洋・非西洋のリスナー双方に強い影響を与え、インド古典の入り口として今なお勧めされる一枚です。アンサンブルの可能性を示した点でも歴史的価値が高い。
2) Shiv‑Hari が手掛けた映画音楽(代表例:Silsila, Chandni, Lamhe) — 古典感覚を映画音楽へ
おすすめ度:★★★★☆
概要:Shivkumar Sharma は、Hariprasad Chaurasia と共に〈Shiv‑Hari〉名義で多数の映画音楽を作曲しました。1980年代〜1990年代にかけての商業映画サウンドトラックは、インド古典の情緒を保ちながらメロディアスで広く親しまれるものになっています。
聴きどころ:
- メロディの美しさ:古典的な旋法感覚を下敷きにしつつ、映画音楽として記憶に残るシンプルで強いフックを持ったメロディが多いです。
- 編曲の洗練:オーケストレーションと古典楽器のバランス感、歌手の表現を活かす伴奏作りが光ります。
- 文化的影響力:映画を通じて広い層に古典の語法を届けた点で、Shivkumar の活動のなかでも重要な側面です。
備考:映画サウンドトラックはLPやカセット、CDで数多くリリースされています。クラシック寄りの作品とポピュラリティを両立させた例として聴く価値があります。
3) ソロ・ラーガ録音(選りすぐりのライブ/スタジオ盤を探す)
おすすめ度:★★★★☆
概要:Shivkumar のソロ(または主にサントゥールが主役のラーガ演奏)は、技巧と表現の深さを味わうのに最適です。特定の盤名を一つに絞るよりも、録音の良い「ラーガ名」録音を複数聴くことをおすすめします。
聴きどころ:
- アルプ(Alap)からの展開:ゆっくりとした序奏(Alap)でラーガの音世界に入った後、テンポが上がるところでの表現力の幅を味わってください。
- タブラとの対話:伴奏のタブラ奏者(しばしば名手)がリズムで引き上げ、ソロが即興で応える場面はハイライトです。
- 同じラーガの異なる演奏を比較する:例えば Yaman や Bhairav、Pahadi など、同一ラーガでの演奏表現の差を楽しむと、Shivkumar の個性が見えてきます。
探し方のコツ:レーベル(HMV/EMI、Saregama 等)の古典録音カタログや、信頼できるリイシューシリーズをチェックすると、良質なソロ録音に出会いやすいです。
聴き方の提案:深掘りするためのガイド
- 1回目は「耳を休めて全体を通す」:曲の構成や時間の流れ、楽器の配置を把握する。
- 2回目は「楽器に注目」:サントゥールのフレージング、フルートやギターとの対話、タブラのリズム変化に注意する。
- 3回目は「構成と表現の対比」:Alap(序奏)→Gat(テンポ上昇)→Jhala(終局)といった古典の構造を意識して聴く。
レコードで体験する価値
Shivkumar Sharma の演奏は、楽器の微細な音色や息遣い、空気の残響といった「アナログ的な情報」を豊かに含みます。ライヴ感や演奏の余韻を重視するなら、レコード(良好なマスター/リイシュー)で聴く楽しさは非常に大きいです。特に「Call of the Valley」のようなアルバムは、当時の演奏スタイルとコンセプトがそのまま伝わり、歴史的作品としての感慨も深まります。
まとめ:何から聴くべきか
- まずは「Call of the Valley」(1967)を通して聴く——Shivkumar の表現とコラボレーションの魅力が一気に掴めます。
- 次に Shiv‑Hari の映画サウンドトラックで、彼のメロディメーカーとしての側面を聴く——古典的感性がポップ・ソングに応用された好例です。
- 最後にソロのラーガ録音で演奏技術と即興の深さを堪能する——同じラーガを複数の録音で比較するのが理解を深める近道です。
参考文献
- Shivkumar Sharma — Wikipedia
- Call of the Valley — Wikipedia
- Shiv‑Hari(Shivkumar Sharma & Hariprasad Chaurasia) — Wikipedia
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