ウェイン・ショーター入門:必聴アルバム7選と聴きどころ完全ガイド
はじめに — Wayne Shorterという稀有な作曲家/即興家
Wayne Shorter(ウェイン・ショーター、1933–2023)は、モダン・ジャズ史における最も独創的な作曲家かつサクソフォン奏者の一人です。音色の柔らかさ、旋律の不可思議なねじれ、そして和声や形式に対する鋭敏な感覚――これらが合わさり、聴き手の期待を巧みに外す「語り」を生み出します。マイルス・デイヴィスのセカンド・クインテットの主要メンバー、そしてウェザー・リポート共同創設者としての顔も持ち、ポスト・バップからフュージョン、ワールド・ミュージックまで幅広く影響を残しました。
聴きどころの共通項(Shorterの“美学”)
- 短く凝縮されたモチーフ:無駄を削ぎ落とした一音一句が曲の方向性を決める。
- 和声の曖昧さ:伝統的なコード進行に頼らず、モード的または並行移動的な響きを多用する。
- 物語性のあるフレージング:ソロが“物語”として展開し、終始リスナーを引き込む。
- 音色のコントラスト:明確なトーンチェンジでムードを操作する能力が卓越。
おすすめレコード(解説と聴きどころ)
1. Speak No Evil(1966)
Blue Note時代の代表作で、ショーターの作曲家としての完成度が極まった一枚。メロディは一見シンプルだが和声処理とリズムの配置が独特で、聴くたびに新しい側面が見えてきます。
- 聴きどころ:タイトル曲「Speak No Evil」や「Witch Hunt」「Infant Eyes」は、短いモチーフが変奏されていく構造美を示す代表例。
- なぜ買うか:ポスト・バップの古典であり、ショーターの作曲世界に触れる最良の入門盤の一つ。
2. Miles Davis — Miles Smiles(1967)
厳密にはマイルスのアルバムですが、ショーターはこのセカンド・グレート・クインテットの主要作曲者・即興家であり、彼の作品「Footprints」がここで名を馳せました。グループとしての響きやインタープレイの妙は、ショーターの音楽観を理解する上で不可欠です。
- 聴きどころ:「Footprints」などはミニマルなモチーフの変容とリズム的仕掛けが秀逸。
- なぜ買うか:ショーターを“個”としてだけでなく、バンドの推進力として捉えたい人に。
3. The All-Seeing Eye(1965)
より実験的・精神性が強い作品で、オーケストレーションや重層的なアイデアが目立ちます。内省的で瞑想的な側面を持つため、ショーターの“アーティストとしての深み”を感じたいときに適しています。
- 聴きどころ:重厚な構成とテーマの象徴性。伝統的なジャズ形式を超えた表現を確認できる。
- なぜ買うか:より“先進的”なショーターを求めるコレクター向け。
4. Juju(1964)
Blue Note期の中でもコンパクトにショーターの世界観が詰まった一枚。テンションやモード的スケールの使い方、力感のあるアンサンブルが魅力です。初期の名作を押さえることで、後期作品の変化をより鮮明に感じられます。
- 聴きどころ:シンプルな主題が演奏を通じて多様に展開される点。
- なぜ買うか:ポスト・バップを基準にショーターの基礎を学びたい人向け。
5. Native Dancer(1974)
ブラジルの歌手作曲家ミルトン・ナシメントとのコラボレーション。ワールドミュージック的な要素とフュージョンの手法が結びつき、ショーターの音楽が国境を越えて広がる瞬間を見せます。
- 聴きどころ:ブラジリアン・リズムとショーターのメロディが交差する自然な融合。
- なぜ買うか:ジャズとワールドミュージックの交差点を楽しみたい人に。
6. Weather Report — Heavy Weather(1977)
ショーターが共同で率いたウェザー・リポートの代表作。ジョー・ザヴィヌルとの対比、そしてジャコ・パストリアスの参加でバンド・サウンドがよりポップかつ緻密になった時期の名盤です。
- 聴きどころ:「Birdland」をはじめとするメロディの強度とサウンド・プロダクションの洗練。
- なぜ買うか:ショーターの作曲家としての適応力と、フュージョンという文脈での重要性を理解できる。
7. Alegría / Without a Net(2003以降:フットプリント・カルテット関連)
晩年のショーターはフットプリント・カルテット(ダニーロ・ペレス、ジョン・パティトゥッチ、ブライアン・ブレイド等)を率い、既存のレパートリーを新たに再解釈する一方で新作も提示しました。生演奏の即興性、空間処理、音色の繊細さが際立ちます。
- 聴きどころ:既知の楽曲を別の角度から描き直す“成熟した即興”と、若手との相互作用。
- なぜ買うか:ショーターの最終段階の創造力と現代的な感覚を確認するため。
どのアルバムから聴き始めるか(推奨順)
- まずは「Speak No Evil」:作曲と演奏の完成度を一気に体感できます。
- 次に「Miles Smiles」:ショーターがバンドでどう機能するかを掴むため。
- 続けて「Native Dancer」や「Heavy Weather」:ジャンル横断的な側面を知る。
- 最後に「The All-Seeing Eye」やフットプリント・カルテットの近年作で深さを味わう。
聴く際のポイント(作品ごとの「注目点」)
- メロディを追う:ショーターは即興で主題を“語り直す”ので、テーマがどう変化するかに注目。
- 余白の音:吹かない瞬間、間の取り方に音楽の鍵があることが多い。
- 奏者同士の反応:特にマイルス・クインテットやウェザー・リポートでは、個人技より相互作用が魅力。
- 繰り返しの価値:一度で全てを理解しようとせず、繰り返し聴いて“発見”を楽しむこと。
まとめ
Wayne Shorterは「即興が常に新しい物語を語る」ことを教えてくれる稀有なアーティストです。一枚一枚が異なる顔を見せるため、ジャンルや年代ごとに違う楽しみ方ができるのが魅力。ここで挙げたアルバム群は、ショーターの多面性(ポスト・バップの詩情、マイルス時代のインタープレイ、ブラジリアン/フュージョン的実験、晩年の成熟したカルテット)を追体験するのに最適です。じっくり腰を据えて、何度も繰り返し聴くことをおすすめします。
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