Return to Forever(チック・コリア)解説:名盤・代表曲「Spain」からたどるサウンド変遷と聴きどころ
Return to Forever — プロフィール
Return to Forever(リターン・トゥ・フォーエバー)は、アメリカのジャズ/ジャズ・フュージョン・バンドで、キーボード奏者のチック・コリア(Chick Corea)をリーダーに1970年代に結成されました。メンバーの入れ替えや楽器編成の変化を経て、ラテン色のあるアコースティック・ジャズから、エレクトリック機材を多用したハイテクニカルなジャズ・ロック/フュージョンへと大きく変貌したことが特徴です。バンドは高度な演奏技術、複雑かつ美しい作曲、エモーショナルな即興で知られ、1970年代のジャズ・フュージョンシーンを代表する存在となりました。
メンバーとサウンドの変遷
Return to Foreverは結成以降、複数のラインナップを経ています。その変遷がサウンドの変化と密接に結びついている点が理解の鍵です。
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初期(ラテン/アコースティック寄り)
この時期はフローラ・プリム(ボーカル)、アイルトン・エアト(パーカッション)、ジョー・ファレル(フルート/サクソフォン)らを含む編成で、ラテン・リズムやブラジリアン、アコースティックな質感が前面に出ていました。代表的な面としては叙情的でメロディアス、かつリズミカルな作品群です。 -
エレクトリック/フュージョン期
チック・コリアとベーシストのスタンリー・クラーク中心のカルテット編成(ギター、ドラム、鍵盤)へと移行。フェンダー・ローズやモーグ等のシンセサイザー、エレキベース、エレキギターを積極的に導入し、ロック的なグルーヴとクラシカルな構成力を融合させたハードでスピーディなフュージョンに到達しました。ギタリストとしてビル・コナーズ、後にアル・ディ・メオラ、ドラマーにはレニー・ホワイトらが参加し、それぞれの卓越した技巧がバンドの音像を決定づけました。
代表曲・名盤(おすすめの聴きどころ)
- Light as a Feather — 初期の名盤。ラテン風味の美しいメロディとアンサンブルが光る一枚で、のちにバンドの代表曲となる「Spain」が収録されています。スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴの影響を受けた導入部が印象的で、聴きやすさと奥行きを兼ね備えています。
- Hymn of the Seventh Galaxy — エレクトリック・フュージョンへ大きく舵を切ったアルバム。よりロック寄りのリズムとエネルギッシュなソロが前面に出ており、Return to Foreverの「新しい顔」を示した作品です。
- Where Have I Known You Before / No Mystery / Romantic Warrior — エレクトリック期の充実作群。特に「Romantic Warrior」はクラシック的構築感とフュージョンのダイナミズムが結びついた傑作で、バンドの演奏技術と作曲力の頂点の一つとされています。
- Spain(楽曲) — ラジオやライブでも頻繁に演奏される代表曲。美しいテーマと派手な即興が対比を成し、バンドの魅力を象徴するナンバーです。
Return to Foreverの魅力を深掘りする
表面的には「超絶技巧のフュージョン・バンド」と見られがちですが、その魅力は多層的です。以下に主要なポイントを挙げます。
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作曲の質と構成力
チック・コリアの作曲にはジャズ即興の自由さとクラシカルな大局観が同居します。テーマの明快さ、対位法的な展開、楽曲全体を貫く構成がしっかりしているため、速いテンポや複雑なアレンジの中でも「聴きどころ」が明確です。 -
メロディとラテン感覚
初期曲にはラテン/ブラジル音楽のリズム感とメロディ性が強く、ポップス的な親しみやすさもあります。「Spain」の導入部に見られるように、クラシック(ロドリーゴ)へのオマージュを取り入れつつ独自のジャズ語法に昇華している点が魅力です。 -
演奏上の対話(インタープレイ)
優れた即興ソロだけでなく、ソロと伴奏の関係、メンバー間の呼応やリズムの掛け合い—すなわち「バンドとしての会話」が常に意識されています。特にチックとスタンリーの相互作用は、メロディに対するベースの役割を再定義しました。 -
技術と表現の両立
高度なテクニックは単なる技巧見せではなく、楽曲の表情やドラマを生むために使われます。アル・ディ・メオラやスタンリー・クラークの速弾き・ハイポジションのフレーズも、曲の緊張感や感情の到達点を描くための手段です。 -
多様な影響源の統合
ジャズ、ロック、ラテン、クラシックなど異なる要素を高いレベルで融合させ、かつ商業性と芸術性のバランスを保った点で模範的でした。この融合性が幅広いリスナー層や後続ミュージシャンに影響を与えています。
音楽史的な位置づけと影響
Return to Foreverは1970年代のジャズ・フュージョンを代表するグループの一つであり、同時代に活躍したマハヴィシュヌ・オーケストラやウェザー・リポートと並んでジャンルの多様性を示しました。以下が主な影響点です。
- エレクトリック楽器・シンセの積極的な活用により、ジャズのサウンド・パレットを拡張した。
- スタンリー・クラークはエレクトリック/アコースティックの両面でリード・ベース演奏を普及させ、ベースの役割をソロイストへと押し上げた。
- 若手ギタリスト(アル・ディ・メオラ等)を一躍スターにし、後のフュージョン/ロック系ギタリストに大きな影響を与えた。
- 構成的で演劇性のあるアルバム作りは、プログレッシヴ・ロックや現代クラシックの感覚をジャズに導入する道を開いた。
聴き方の提案(初めて聴く人へ)
- 「Spain」→「Light as a Feather」でラテン〜メロディ重視の美しさを味わう。
- そこから「Hymn of the Seventh Galaxy」「Romantic Warrior」へ進み、エレクトリック化した強度とアンサンブルの緊張感を体験する。
- ライブ音源やソロ・アルバムを聴いて、メンバー個々人の即興と表現の幅を確認する(スタンリー・クラーク、アル・ディ・メオラ、チック・コリア各人の作品など)。
まとめ
Return to Foreverは「技巧だけのバンド」ではなく、深い作曲力とアンサンブル感覚を備えた総合芸術としてのフュージョンを提示しました。叙情性と攻撃性、クラシカルな構成とロック的推進力を併せ持つその音楽は、1970年代以降の多くのミュージシャンに影響を与え続けています。初期のラテン色の強い作品から、後期のハードで構築性の高いフュージョン作品まで、聴き手はその変遷を通して「ジャズの幅広さ」を実感できるはずです。
参考文献
- Return to Forever - Wikipedia
- Return to Forever Biography — AllMusic
- Return to Forever — Britannica
- Spain (instrumental) — Wikipedia
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