カサンドラ・ウィルソン入門:名盤5作で辿る声の魅力とおすすめの聴き順

イントロダクション — カサンドラ・ウィルソンという声

カサンドラ・ウィルソン(Cassandra Wilson)は、ジャズ/ブルース/フォークを自在に行き来する独特の低音域の歌声と、既成のスタンダードを再解釈する力で知られるシンガーです。1980年代のM-Base周辺での活動から、1990年代に入ってのソロでの大躍進、そして近年まで続く多彩な音楽的探求まで、彼女のディスコグラフィは“伝統を壊し再構築する”ことの好例になっています。

おすすめレコード(名盤セレクション)

Blue Light ’til Dawn(1993)

キャリアの転換点とも言える作品。従来のジャズ・ヴォーカリスト像から距離を取り、ブルースやフォーク/アメリカーナの要素を大胆に導入したアルバムです。生々しく、温度感のあるアレンジと空間の作り方が特徴で、より「物語る」歌い方を確立した一枚。

  • なぜ聴くべきか:ジャズ的感性を保ちつつ、ポップやフォークのカバーを自分の色に染め上げた点が、以降の作風の基盤になっています。
  • 聴きどころ:タイトル周辺の空気感、自然音や小編成の伴奏での語りかけるような歌唱。

New Moon Daughter(1995)

キャリア的な評価を決定づけたアルバム。ジャズ・ヴォーカルとしての評価を確固たるものにし、批評家やリスナーから高い支持を得ました。伝統曲やスタンダードを、闇と光のコントラストを効かせたアンサンブルで再構築しています。

  • なぜ聴くべきか:声の色彩と間(ま)を活かした解釈力がいちばんよく現れている作品のひとつで、ジャズ・ヴォーカルの新たな可能性を感じさせます。
  • 聴きどころ:抑制された歌唱の中に滲む感情表現、アレンジの選択が曲ごとの新たな側面を引き出しています。

Traveling Miles(1999)

マイルス・デイヴィスへのオマージュ作品。マイルスにまつわる楽曲群や彼の精神性を出発点に、ウィルソン独自の解釈で立ち向かったアルバムです。ジャズの歴史的テクスチャーを受け継ぎつつ、歌ものとしての再構築が行われています。

  • なぜ聴くべきか:トリビュートという枠を超え、原曲のエッセンスを保持しつつヴォーカル視点で新たに提示する挑戦が興味深い。
  • 聴きどころ:マイルス作品の哀愁や空間感を、ヴォーカルと編成でどう表現するかに注目。

Thunderbird(2006)

より現代的なポップ/ロック的要素やエレクトリックなサウンドが強く出た作品。従来の「アコースティックで陰影のある」イメージとは異なり、広い音色の実験が見られます。

  • なぜ聴くべきか:表現領域をさらに拡大した一枚で、ダンスビートやエレクトリック・テクスチャーに彼女の声がどう溶け込むかが面白い。
  • 聴きどころ:サウンド・プロダクションの変化と、それに対するヴォーカルの柔軟性。

Coming Forth by Day(2015)

ビリー・ホリデイへの敬意を示したトリビュート・アルバム。単なるカヴァー集ではなく、ホリデイの楽曲やイメージを現代的に再構築し、異なる時代の声が交差するような聴きどころがあります。

  • なぜ聴くべきか:カサンドラという声が、ホリデイの楽曲群に新しい文脈と解釈を与えている点。オリジナルとは別の物語が立ち現れます。
  • 聴きどころ:選曲とアレンジの妙、そして歌詞に込められた意味の再提示。

聴きどころの共通点と変化

これらのアルバムを通覧すると、以下の点がカサンドラ・ウィルソンの魅力として浮かび上がります。

  • 声の“色”と“間”を重視した語りかけるような歌い方。
  • 既存の曲(スタンダード、フォーク、ポップ、ジャズ)を単に歌うのではなく、編曲と声の質で別物にしてしまう再解釈力。
  • 90年代以降は音響やプロダクションの実験も積極的に取り入れ、作品ごとに違う顔を見せる多様性。

おすすめの聴き順・聞き比べの楽しみ方

初めて聴く場合は、まず「Blue Light ’til Dawn」→「New Moon Daughter」と聴くと、彼女がどのようにジャズの枠を広げたかがわかりやすいです。その後「Traveling Miles」で解釈力の幅を、「Thunderbird」でサウンド面での挑戦を、「Coming Forth by Day」でトリビュート解釈の深さを味わってください。

最後に — どの1枚から始めるか

「Blue Light ’til Dawn」は彼女の転換点として最も入門に適した一枚です。一方で、純粋に“ジャズ・ヴォーカルの名盤”を求めるなら「New Moon Daughter」を手に取ると、歌の力と表現の深さをストレートに感じられます。

参考文献

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/

また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery