PJ Harvey入門|時代別必聴アルバムガイドと初心者向けおすすめレコード
PJ Harvey(PJ ハーヴェイ)入門とおすすめレコード深掘りコラム
PJ Harvey(Polly Jean Harvey)は90年代初頭から現在に至るまで、ロック、ブルース、フォーク、実験音楽を横断しながら一貫した表現力で聴き手を惹きつける英国のシンガーソングライターです。声や楽器の使い方、歌詞の視点、アルバムごとに大きく変化するサウンドスケープが魅力。ここでは、代表作をピックアップして時代ごとの特徴、聴くべきポイント、代表曲を交えつつ深掘りして紹介します。
おすすめアルバム(必聴盤)
Dry(1992)
デビュー作。荒々しいガレージ感と直截な感情表現が印象的なロック作品です。若さゆえの攻撃性と脆さが同居しており、PJ Harveyの原点として重要な一枚。
- 注目トラック:Sheela-Na-Gig
- 聴くポイント:ギターの生々しさ、前のめりなヴォーカル、初期の詩的・挑発的な視点。
Rid of Me(1993)
デビュー直後の衝動をさらに研ぎ澄ませたセカンド。より激しさを増した演奏と、感情のぶつかり合いが特徴です。リズムの強さとシャウトに近い歌唱が光ります。
- 注目トラック:Rid of Me、50ft Queenie
- 聴くポイント:テンションの高いバンドサウンドと破壊的な表現。初期PJの“荒々しさ”を体感できる。
To Bring You My Love(1995)
ブレイク作とされるアルバム。ブルースやゴスペル的な陰影を取り入れ、よりドラマティックで構築的なサウンドへと変化しました。女性性、欲望、喪失といったテーマを深く掘り下げます。
- 注目トラック:Down by the Water、C'mon Billy
- 聴くポイント:重厚なアレンジと暗い叙情性。PJの歌唱表現の幅が一気に広がる転換点。
Is This Desire?(1998)
エレクトロニックな要素やスタジオでの実験が持ち込まれ、音像がより複雑に。内省的でリリカル、同時に不穏な空気感をまとった作品です。
- 注目トラック:A Perfect Day Elise、This Mess We're In(Thom Yorkeと共演のトラックとして知られる)
- 聴くポイント:サウンドデザインの変化と歌詞の内面性。ポップと実験のせめぎ合い。
Stories from the City, Stories from the Sea(2000)
都会的でメロディアスな方向に振れた作品。バラエティのある曲構成と洗練されたアレンジが特徴で、幅広い聴衆に届いたアルバムです。
- 注目トラック:Good Fortune(など)
- 聴くポイント:メロディの明快さと都市的な視点。デイム感のある叙情性が際立つ。
Uh Huh Her(2004)
再びギター主導の簡潔で鋭いロックへ回帰した印象の一枚。粗削りながら説得力のある曲が並び、本人の声の存在感が前面に出ています。
- 聴くポイント:シンプルで直球のロック表現を好む人におすすめ。歌とギターの密度。
White Chalk(2007)
ピアノ主体の薄く高い声で歌う、冷たく幽玄な作品。これまでのギター中心のイメージから大きく離れ、フォークや古いビジュアル音楽の影響を感じさせる。
- 聴くポイント:音域の変化(高声)と静謐な空間。物語を読むように聴くと深みが増す。
Let England Shake(2011)
政治的・歴史的な視点を全面に押し出したコンセプチュアルな作品で、英国と戦争を主題にした詩的なアルバム。高い評価を受け、2011年のマーキュリー賞を受賞しました。
- 注目トラック:The Words That Maketh Murder、Let England Shake
- 聴くポイント:民族的な楽器やリズムを取り入れた実験的アレンジと、詩的で厳しいテーマ。
The Hope Six Demolition Project(2016)
現代社会や都市開発、紛争地への視点を取り入れた野心的な作品。フィールドレコーディングやドキュメンタリー的なアプローチが部分的に用いられており、従来の作品とは違う“現場”感があるアルバムです。
- 聴くポイント:政治的メッセージと音のテクスチャーに注目。アートと報道の境界を行くような作風。
A Woman a Man Walked By(2009) — John Parishとの共作
長年のコラボレーターであるJohn Parishとの共作アルバム。実験性と対話的な作風が強く、PJ の他作品とは異なる刺激がある一枚です。
- 聴くポイント:Parishとの相互作用から生まれる楽曲の遊び心と革新性。
I Inside the Old Year Dying(2023)
近年作。彼女のキャリアの集大成的な側面と、新しい表現領域の模索が同居する作品です。フォーク的要素と現代的な作曲技術が交差します。
- 聴くポイント:成熟した語り口と、昔からのファンにも新しい発見をもたらすテクスチャー。
入門者向け:聴く順・おすすめのスタート地点
- 「ダイナミックでドラマティックなPJを楽しみたい」→ To Bring You My Love。
- 「生々しいロックの衝動を浴びたい」→ Dry→Rid of Me(時系列で初期の勢いを体験)。
- 「歌詞の世界観や詩的表現に触れたい」→ Let England Shake(テーマ性が強く、詩の深さを感じやすい)。
- 「静謐で異質な美を求める」→ White Chalk(声とピアノ中心の世界)。
コレクター向けの視点・買うときのポイント
- 初期作は音像の“衝動”が魅力。リイシューやオリジナル盤で音の雰囲気が変わることがあるので、どの音質を好むかをチェックして選ぶとよい。
- 彼女のシングルやB面にはアルバムに未収録の貴重な曲が多い。コンプリート志向ならシングル集やデラックス版のボーナストラックにも注目。
- ジョン・パリッシュらコラボレーター名やクレジットを確認すると、そのアルバムがどのような制作スタンスかを掴みやすい(共作/自己主導など)。
- 近年作はコンセプト性や実験性が強く、アルバム単位で聴くことをおすすめします。プレイリスト的に一曲だけ切り取ると全体像が見えにくい場合があります。
聴きどころのヒント(曲ごとに何を聴けばいいか)
- 歌詞:視点が女性の内面や社会的な立場から語られることが多い。語りかけるようなラインを拾っていくと深い。
- ヴォーカル:表現の幅が広く、高音域から迫力あるシャウトまで使い分ける。声の色の変化に注目。
- アレンジ:アルバムごとのサウンドスケープの違いを味わう。ギター中心→電子的→ピアノ中心→民族的音色、という変遷がある。
最後に(どの作品から手をつけるか)
PJ Harveyは「一貫した表現者」でありながら、アルバムごとに別人のような変化を見せます。まずはTo Bring You My Loveで彼女の“表現の厚み”を感じ、DryやRid of Meで原点の衝動を確認、White ChalkやLet England Shakeで表現の深まりを味わうという順序は特におすすめです。興味を持ったら、シングルや共作アルバム、デラックス盤へと掘り下げていくと発見が多いでしょう。
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参考文献
- PJ Harvey 公式サイト
- PJ Harvey — Wikipedia
- PJ Harvey — AllMusic
- PJ Harvey — Discogs(ディスコグラフィ)
- Mercury Prize(マーキュリー賞)公式サイト


