DDR2メモリとは?特徴・性能・互換性・選び方を徹底解説

DDR2とは — 概要

DDR2(Double Data Rate 2 Synchronous DRAM)は、PCやサーバ向けに広く使われたDRAM(動的ランダムアクセスメモリ)の規格の一つで、DDR(初代)を改良して転送速度・信号品質・消費電力を改善したものです。JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)によって標準化され、主に2004年頃から2010年代前半にかけてデスクトップ・ノートPC、サーバで主流となりました。DDR2はDDRに比べて内部アーキテクチャの変更と電圧の低下により高クロック化が可能となり、より高い帯域(GB/s)を実現します。

技術的な特徴(要点)

  • 転送方式:ダブルデータレート(送信エッジの両側でデータ転送)
  • プリフェッチ:内部で4nプリフェッチを採用(内部バス幅を拡大してより多くのデータを一度に扱う)
  • 電圧:DDR(約2.5V)からDDR2は低電圧化して1.8Vが標準(省電力化)
  • オンダイ終端(ODT):信号反射の抑制のための終端機構をチップ内に搭載
  • モジュール形状:デスクトップ向けDIMMは240ピン、ノート向けSO-DIMMは200ピン(物理的に世代間で互換性なし)
  • JEDEC定義のデータレート:代表的にDDR2-400、DDR2-533、DDR2-667、DDR2-800(MT/s)

動作周波数・帯域幅・製品表記(PC2 規格)

DDR2の速度はMT/s(メガトランスファー/秒)で表され、モジュールの帯域は一般に「PC2-XXXX」という形式で示されます。帯域(MB/s)は簡単にMT/s × 8(64ビットバス=8バイト)で求められます。代表的な組み合わせは次の通りです。

  • DDR2-400(200MHzクロック、400MT/s) → PC2-3200(3,200 MB/s)
  • DDR2-533(266MHzクロック、533MT/s) → PC2-4200(約4,264 MB/s、一般表記PC2-4200)
  • DDR2-667(333MHzクロック、667MT/s) → PC2-5300(約5,336 MB/s、一般表記PC2-5300)
  • DDR2-800(400MHzクロック、800MT/s) → PC2-6400(6,400 MB/s)

(注:PC2表記は製品マーケティング上のラベルで、細かい数値は四捨五入や慣習表記が混在します。)

内部構造と性能特性(プリフェッチ、レイテンシなど)

DDR2は内部で4ビット分のプリフェッチ(4nプリフェッチ)を行い、チップ内部のコア動作周波数よりも外部I/Oの転送速度を相対的に高くする構成です。これにより外部の高いデータレートを実現しつつ、コア電圧や発熱を抑えることが可能になります。

一方で、CASレイテンシ(CL)などのメモリタイミングは世代が進むほどサイクル数が増える傾向があり、サイクル数×クロック周期で実際のレイテンシ(ns)は求められます。例:DDR2-800(クロック400MHz、周期2.5ns)でCL=5の場合、実効CASレイテンシは5×2.5ns=12.5nsです。つまり高い転送レートは帯域幅を増やしますが、サイクル数の増加により同世代の低クロックメモリと比べて実効レイテンシが同等か若干悪化する場合もあります。

信号品質と基板設計上の改良点

DDR2世代では次のような信号品質向上技術が取り入れられています。

  • オンダイ終端(ODT):モジュール外部の終端抵抗を削減し、信号反射をチップ側で制御
  • フライバイ(fly-by)トポロジ:コマンド/アドレスラインの配線方式をフライバイ方式にし、信号反射やクロストークを低減
  • より厳密なジッタおよびスキューの管理:高い転送レートに対応するためタイミングマージンの最適化

モジュールの種類(ECC、Buffered/Registered、SO‑DIMM 等)

用途に応じて複数のモジュールタイプがあります。

  • アンバッファード(UDIMM):一般的なデスクトップ向け
  • レジスタード/バッファード(RDIMM/FB-DIMMは別技術):サーバ向けに安定性を優先した外部レジスタを搭載するタイプ(DDR2世代でのサーバ用DIMMはRegistered DDR2が主流)
  • ECC対応モジュール:メモリの単一ビットエラーを検出・訂正するECC機能を持つ(サーバやワークステーションで重要)
  • SO‑DIMM:ノートPCや一部の小型機器向け(200ピン)

互換性と注意点

DDR2は物理的・電気的に前世代(DDR)および次世代(DDR3)と互換性がありません。主な理由:

  • ピン数・ノッチ位置が異なる(DDR2 DIMMは240ピン、DDRは184ピン、SO‑DIMMも世代によりピン数が異なる)
  • 動作電圧が異なる(DDR約2.5V、DDR2 1.8V、DDR3 1.5Vなど)
  • 信号タイミング・コントローラの仕様が異なるため、マザーボード/メモリコントローラが対応している必要がある

したがって、DDR2を使うにはその世代をサポートするマザーボードまたはチップセットが必須です。混在(別世代のモジュールを同一スロットで使う)はできません。

性能面での評価 — 帯域とレイテンシのトレードオフ

DDR2はクロック向上により同世代内で大きな帯域改善をもたらしますが、プリフェッチや内部アーキテクチャの関係でサイクル数的なレイテンシは必ずしも低減しません。実負荷でのパフォーマンスはアプリケーション特性(帯域指向かレイテンシ指向か)に依存します。例えば、大容量データのストリーミングやメモリ帯域を多く消費するアプリケーションではDDR2-800のような高帯域メモリが有利です。一方で小さなランダムアクセスが多いワークロードでは、CLが低い(サイクル数が少ない)メモリの方が実効的に有利な場合があります。

実際の利用状況と歴史的背景

DDR2は2004年頃に登場し、2006年〜2009年にかけてPC/ノート/サーバで広く採用されました。特に2006年にAMDがAM2プラットフォームでDDR2を採用、Intelも同時期以降のチップセットでDDR2をサポートしたことで普及が進みました。その後、さらに低電圧・高帯域を目指したDDR3(2007年頃から本格普及)に置き換わっていきましたが、組み込み機器や古いPCの交換・修理用として中古市場では長く流通しました。

実務的なポイント・選び方のアドバイス

  • 互換性の確認:マザーボードがDDR2をサポートするか、サポートする最大周波数・モジュール種類(ECC/Registeredなど)を確認する。
  • デュアルチャンネル:対応マザーでは同容量・同仕様のモジュールを対で使うことで帯域が向上する(デュアルチャネル動作)。
  • 容量とランク:システム用途に応じて容量とランク(シングル/デュアル)を選ぶ。サーバ用途はECC/Registeredが望ましい。
  • 中古購入時:中古のDDR2は経年劣化や保証がない場合が多いため、信頼できる供給先から買うか、動作検証済みのものを選ぶ。
  • 省エネ・発熱:DDR2はDDRに比べ省電力ですが、現代のDDR4/DDR5と比べれば電力効率は劣る。古いシステムの省エネ改修を検討する場合は世代全体の見直しが必要。

よくある誤解と注意点

  • ピン数が同じでも互換とは限らない:例えばDDR2とDDR3は同じ240ピンDIMMを採用することもあるがノッチ位置や電圧が異なり互換性はない。
  • 「転送レート=実効性能」ではない:帯域(GB/s)は向上してもアプリによってはレイテンシで差が出る。
  • オーバークロックは可能だがリスクがある:高クロック設定や電圧変更は不安定化や寿命短縮を招く可能性があるため注意が必要。

まとめ

DDR2は、DDR世代からの進化版として高いデータ転送レートと改善された信号品質を提供し、2000年代中盤にPC/サーバで主流となったメモリ規格です。低電圧化(1.8V)、4nプリフェッチ、ODTやフライバイトポロジなどの技術で高帯域化を図りつつ、モジュール形状(240ピンDIMM、200ピンSO‑DIMM)やECC/Registered対応など多様な用途に対応しました。現在はDDR3/DDR4/DDR5が主流ですが、古いシステムの保守やレガシー環境では依然として重要な位置を占めています。

参考文献