ケニー・ドーハム入門:必聴アルバム5選と聴きどころ解説
序文 — ケニー・ドーハムというトランぺッター
ケニー・ドーハム(Kenny Dorham、1924–1972)は、ビバップからハードバップ期を彩った重要なトランペッター/作曲家です。派手なフラジオやハイトーンの技巧で目立つタイプではなく、短く抑制されたフレーズ、歌うようなメロディ構築、リリカルなミュート使いで独自の表現を築きました。多くの名演に参加すると同時に、リーダー作でも一貫した美意識を示し、聴き手に“余韻”を残す演奏が魅力です。本稿では、まず抑えておきたい代表的なレコードを厳選し、それぞれの聴きどころを深掘りして紹介します。
おすすめアルバム(総論)
以下はケニー・ドーハム入門〜コレクションに最適な5枚。順序は入門向けから深掘り向けへ。各作品ごとに音楽的ポイント、代表曲、聴き方のコツを解説します。
1. Quiet Kenny
概要と魅力:ドーハムの「叙情性」が最もよく表れている一枚。鋭さを抑え、温かいトーンでメロディを歌う姿が際立ちます。穏やかなバラードや中速のナンバーを中心に、“余白”を生かしたインタープレイが楽しめます。
聴きどころ:フレーズの“間”と音の選択。派手な技巧ではなく、どの音を抜いてどの音を残すかという選択眼に注目してください。特にミュートの使い方や、歌うように語るソロの構成が印象的です。
代表曲の楽しみ方:バラード系の曲では、ドーハムの語り口—イントネーションと音価の置き方—を追ってみましょう。リズムセクションのレスポンス(伴奏の“反応”)にも耳を向けると、演奏全体の空気感が掴めます。
2. Afro-Cuban(またはラテン・インフルエンスを聴かせる作品)
概要と魅力:ドーハムはラテン音楽の要素を取り入れた曲を書き、情熱的かつ洗練されたアレンジで提示しています。アフロ・キューバンのリズムとジャズの即興が融合したトラックは、彼の多彩さを示す好例です。
聴きどころ:リズム隊と管楽器の掛け合い、特にモントゥーノやクラベス類のリズムに対するトランペットのアクセントの付け方を聴いてください。ドーハムのフレーズがリズムにどう食い込むかが面白いポイントです。
代表曲の楽しみ方:ソロがラテンのグルーヴとどのように同期するか、リズム・アンサンブルの“押し引き”を追うと、演奏の躍動感がより手に取るように分かります。
3. Whistle Stop
概要と魅力:ハードバップの良質な例として評価の高い作品。エネルギーと洗練が同居しており、短めで凝縮されたソロが並びます。ドーハムの作曲力とリーダーシップがよく見える一枚です。
聴きどころ:テーマの明快さ、ソロの構築(主題→展開→クローズ)の流れを追うと、ドーハムの“言葉選び”の巧みさが分かります。リズムのスイング感やドラム/ベースの駆動力にも注目を。
代表曲の楽しみ方:テーマ・リフを覚えてから聴くと、各メンバーがどのように素材を料理しているかが見えてきます。短いフレーズの中に込められた表情を細かく追うのがおすすめです。
4. Una Mas(ドーハムのモーダル/長尺曲に触れる)
概要と魅力:一部長尺のモーダル志向トラックを含む作品。スペースを活かした即興が展開され、従来のビバップ型ソロとは異なる“スパンの広い”表現を楽しめます。演奏の呼吸がゆったりしており、メロディの反復と変奏に注目です。
聴きどころ:長めのソロ展開におけるモティーフの発展性。初期のモーダル・アプローチに触れたいリスナーに適しています。テンポや調性の持続が作る浮遊感を堪能してください。
代表曲の楽しみ方:長尺曲は“聴く時間”を要します。繰り返されるテーマの微妙な変化、バックの和声進行に対するソロの対処法を注意深く追ってみてください。
5. その他の注目作(セッション集やコンピレーション)
概要と魅力:ドーハムはリーダー作の他に多数のサイドマン参加作で名演を残しています。彼を網羅的に知るには、編集盤や「ベスト・オブ」的なコンピレーションも有用です。異なる編成や時代の音を並べて比較すると、彼の表現の幅と変化がよく分かります。
聴きどころ:同一曲を別時期・別編成で聴き比べると、フレージングの変化、音色やアプローチの成熟が浮かび上がります。ドーハムの作曲曲やスタンダード解釈を複数録音で比べるのがおすすめです。
ケニー・ドーハムの聴き方・楽しみ方の提案
メロディの“語り”を追う:ドーハムは短いフレーズで多くを語ります。1フレーズごとに区切って、その終端(フレージングの解決)と続き方を意識して聴くと、彼の美学が見えてきます。
リズムセクションとの対話に注目:伴奏との呼吸、特にドラムとベースの“間の作り方”を聴くと、ドーハムのフレーズがどう映えるかが分かります。
録音年代の差を楽しむ:50年代と60年代では録音傾向、編成、演奏スタイルが異なります。同じ曲や似た編成で年代差を比較すると、ジャズの流れとドーハム個人の変化が理解しやすいです。
盤選びのヒント(音質・エディション)
オリジナル盤は音の鮮度や雰囲気が魅力ですが、リマスターや紙ジャケ初回復刻など、近年の良質な再発も多くあります。試聴可能なら複数エディションを比較して、好みの音像を選んでください。
ライナーノーツや収録テイクの違いに注目:リイシュー盤ではボーナストラックや代替テイクが収録されることがあり、演奏の“別の顔”が楽しめます。
まとめ
ケニー・ドーハムは「派手さ」ではなく「選び抜かれた音」で聴かせるプレイヤーです。Quiet Kennyのような叙情的な美しさ、アフロ・キューバン要素やハードバップ的な切れ味、モーダルな長尺表現など、多面的な魅力を持っています。まずは上で挙げたアルバムから1枚選び、フレーズの選び方・間の取り方・伴奏との対話に注目して聴くと、彼の真価がじわじわ伝わってくるはずです。
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