Broadcast名盤ガイド:トリッシュ・キーナンの歌声とサイケデリック×エレクトロニカの世界を深掘り
Broadcast — 概要と魅力のイントロダクション
イギリスのバンドBroadcastは、ヴィンテージなポップ/サイケデリア感覚と電子的なミニマリズムを融合させた独自のサウンドで知られます。特にトリッシュ・キーナンの浮遊するようなボーカルと、アナログ機材やライブラリー・ミュージック的な音色を巧みに用いたアレンジが特徴で、「過去のラジオ音源を掘り起こしたような」ノスタルジックでありながら非日常的な世界観を作り上げました。
おすすめレコード深堀リスト
以下は、Broadcastを知るうえで押さえておきたい主要作品と、それぞれの聴きどころ・コレクター上の注目点を深掘りした解説です。初心者にも順を追って理解できるよう、導入向け〜実験的作まで並べています。
The Noise Made by People
代表作とされるフルアルバムの一つ。ポップソングの構造を保ちながらも、浮遊感のあるアレンジと細かなエフェクト処理で独特の世界を作り出しています。名曲「Come On Let's Go」など、メランコリックでありつつ耳に残るメロディが多く収録されており、Broadcastの“ポップセンス”を最も分かりやすく体感できる作品です。
注目点:原盤(初回プレス)とその後のリイシューでマスタリングやインナースリーヴ等に差があることがあり、コレクターはジャケットのバリエーションや帯(日本盤)を確認することが多いです。
Haha Sound
よりダイナミックでリズムに富んだ展開を見せるアルバム。ライブラリー音楽的なサンプル感や、サイケデリックなギター/キーボードのテクスチャーがより前面に出てきます。曲ごとの編曲の凝り方が印象的で、聴くたびに新しい発見があるタイプの作品です。
注目点:アナログな音響処理やレイヤー感を味わいたいならLPでの体験がおすすめ。ただし初回盤の限定カラー盤やジャケット仕様がコレクター間で人気です。
Tender Buttons
前作よりも抽象性を増したミニマル/実験的な傾向の強いアルバム。ポップな要素を残しつつも断片的でシャープなエレクトロニクスの手法が目立ち、従来のファンにとっては新機軸を示す一枚です。曲構造が短く切り詰められているものが多く、サンプル感覚の強いアレンジが多用されています。
注目点:好みが分かれる一枚ですが、Broadcastの「実験性」を理解するには必聴。限定盤や輸入盤のボーナストラック違いが存在します。
Broadcast and The Focus Group Investigate Witch Cults of the Radio Age
Broadcastとグラフィック/音響作家The Focus Group(Julian House)とのコラボレーション作品で、よりコラージュ的・ホーンテッドな要素が強い実験作。ライブラリー・ミュージックの引用、ラジオ的ノイズ、幽玄なメロディ断片が織り交ざり、いわゆる“ホーンテッド・サウンドトラック”的な趣があります。
注目点:限定パッケージやアートワークが強い意味を持つ作品で、コレクション価値が高いリリースが多いです。アルバム全体がコンセプトアルバム的にまとまっているため、通しで聴く体験が重要です。
Work & Non Work(シングル/B面集)
シングルやBサイド、リミックスを集めた編集盤。短いEP曲や未収録曲を含むため、Broadcastの多彩な側面を補完する重要な一枚です。シングルでのみ発表された名曲や実験的なトラックがまとまっており、アルバム単体では見えにくい側面を掘り下げられます。
注目点:オリジナル7インチの音源や限定EPがそのまま収録されていることが多く、コレクターはオリジナル7インチ盤自体を探す傾向があります。
代表的なシングル/EP(補足)
“Pendulum”や“The Book Lovers”など、短いフォーマットだからこそ際立つポップセンスとアレンジの妙が楽しめる作品群。完成度の高いシングルにはアルバム未収録の別ミックスやB面の名曲が含まれていることが多く、コレクションの価値が高いです。
購入・コレクションに関するポイント(音質や保存・再生法以外)
ここでは「どの盤を狙うべきか」「コレクターとして注目すべきポイント」に絞って述べます。
- 初回プレスや限定カラー盤:Broadcastはリリース形態に限定盤が多く、初回プレスや限定カラーは市場価値が上がりやすいです。アートワークやインサートの有無も重要。
- 日本盤の特殊仕様:日本盤は帯や解説(日本語)が付くほか、ボーナストラックがある場合もあるため、日本盤をコレクションするファンも多いです。
- リイシュー事情:人気作はいくつかリイシューされていますが、リイシューとオリジナルとでマスタリング差やトラック仕様が異なることがあるため、仕様表を要確認。
- コラボ/編集盤の価値:Focus Groupとのコラボのように特異な作品はアートワークやパッケージングも評価対象になりやすく、盤としての希少性が出やすいです。
- トリッシュ・キーナンの死後の影響:メンバーの死去以降、特に初期のオリジナル盤は注目度が上がり、市場価格に影響を与えています。
聴き方の提案(入門〜深堀りの順)
- まずは「The Noise Made by People」や代表シングル群でBroadcastの“ポップとしての顔”を掴む。
- 次に「Haha Sound」でアレンジやテクスチャの豊かさを味わう。
- 慣れてきたら「Tender Buttons」や「Broadcast & The Focus Group」で実験性やコラージュ的世界へ踏み込む。
- 合間に「Work & Non Work」や個別のEP/シングルを聴いて、アルバムに収まらない断片やアイデアを楽しむ。
Broadcastを深く味わうための観点
- ボーカルとテクスチャの対比:トリッシュの柔らかい声が、往年のラジオやライブラリー的な音響処理とどのように溶け合うかを注目する。
- アレンジの“余白”と“断片”:曲の中であえて省かれた音や断片的なフレーズが、聴き手の想像力を刺激する作りになっている点。
- アートワーク/パッケージ:Broadcastは視覚的な演出も含めた「作品作り」をしているので、ジャケットやインサートも作品理解に役立ちます。
関連アーティストや文脈
Broadcastは60年代ポップ/サイケデリア、ライブラリー音楽、コンクレート的手法、同時代のポストロックやエレクトロニカ、いわゆる「ホーンテッド/懐古的」なムーブメントと響き合います。StereolabやCocteau Twins、The Focus Group(Julian House)の美学を好むリスナーには親和性が高いでしょう。
まとめ
Broadcastはポップスの骨格を残しつつ、音響的な細工とコラージュ的な実験を織り交ぜることで、聴くたびに新しい発見があるアーティストです。入門にはフルアルバムの代表作を、深堀りにはコラボ作品やシングル集を手に入れるのが王道の楽しみ方。コレクション面でも初回盤や限定仕様の価値が高いため、盤の仕様をチェックして選ぶと満足度が上がります。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Broadcast (band) — Wikipedia
- Broadcast — Warp Records(公式アーティストページ)
- Pitchfork — Broadcast 検索結果(レビューや記事)
- Trish Keenan obituary — The Guardian


