ダモ・スズキ(Damo Suzuki)— CAN時代の革新と即興ヴォーカルの魅力を探る
プロフィール:ダモ・スズキとは
ダモ・スズキ(Damo Suzuki)は、日本生まれのボーカリスト/即興表現者として世界的に知られるアーティストです。1970年代初頭にドイツの実験ロック・バンド「CAN(キャン)」のボーカリストとして参加し、バンドの音楽性を決定づける重要な存在となりました。その後はソロ活動や「Damo Suzuki's Network」と呼ばれる即興ユニットで世界中のミュージシャンと共演を続け、唯一無二の即興歌唱スタイルを確立しています。
CAN 時代と代表作
ダモはCANに1970年に加入し、短期間(おおむね1970–1973年)でバンドの黄金期を支えました。この時期に録音されたアルバムはいずれもロック、実験音楽、アンビエント、ファンクなどを大胆に融合させ、後の多くのジャンルに影響を与えています。
- Tago Mago(1971) — 長尺のトラックとサイケデリックな実験性。代表曲「Halleluwah」「Paperhouse」などでダモの即興的なヴォーカルが生々しく鳴ります。
- Ege Bamyasi(1972) — よりポップでドライヴ感のある楽曲も含む傑作。「Spoon」「Vitamin C」などはバンドの代表曲となりました。
- Future Days(1973) — 繊細で叙情的な側面を見せる作品。ダモの在籍末期に作られた、感情の密度が高い楽曲群を含みます。
Damo Suzuki's Network:即興/共演の哲学
CANを離れて以降、ダモは「Network」と呼ばれるプロジェクト形態で活動しています。特徴は以下の通りです。
- 世界各地のミュージシャンと「即興」で演奏する(事前リハーサルを基本的に行わない)。
- 演奏前に曲を決めない「インスタント・コンポジション(即興作曲)」の原則を重視する。
- ダモは代表的なフレーズやジェスチャーで演奏の方向性を示し、現場で生まれる化学反応を最大化する。
- 参加ミュージシャンは“Network”の一員として一時的に結びつき、コンサートはその日の唯一無二のセッションになる。
この活動姿勢により、ダモのライブは毎回異なる顔を見せ、聴衆も“何が起こるかわからない”緊張感と興奮を体験できます。
歌唱スタイルと表現の特徴
ダモ・スズキの魅力は「声」を楽器として扱う徹底したアプローチにあります。主な特徴:
- 言葉は断片的/多言語的に現れ、しばしば意味よりも音やリズム、感情の伝達を優先する。
- 即興で語り、叫び、囁き、メロディを生成することで、歌詞以上の“物語”を作り上げる。
- ヴォーカルの音色は幅広く、シャウトやスキャット、長い持続音、ビブラートを駆使する。
- 演奏者との緊密な相互作用(リズム・フレーズへの即応やフェイクの掛け合い)が演奏の核。
結果として、ダモのボーカルはしばしば「言葉を超えたメッセージ」として機能し、聴き手の内面に直接訴えかけます。
ステージの存在感と人柄
舞台上のダモは、カリスマ的でありながら飾らない人柄を見せます。声のダイナミクスや瞬発力によって観客の視線を一気に集中させる一方で、MCや合間の言葉は率直でユーモラスなことが多く、親しみやすさを残します。また世界各地のミュージシャンと交流する姿勢や、音楽を「ネットワーク」と捉える哲学は、単なるショーマンシップを越えた信念がうかがえます。
影響と評価:なぜいまなお重要か
ダモの在籍した時期のCANは、ポストロック、エレクトロニカ、ニューウェーブ、アンビエント、ノイズ/実験音楽など幅広いシーンに影響を与えました。ダモ自身の即興ヴォーカルは、ボーカリストのみならず音楽表現全体に新たな可能性を示し、以降の音楽家やリスナーに「声の自由」を示した点で高く評価されています。
ダモ・スズキの音楽をより深く楽しむための聴きどころ
- まずは_CANの代表作(Tago Mago/Ege Bamyasi/Future Days)を通して、バンドとしてのダイナミクスを把握する。
- ライブ音源や「Damo Suzuki's Network」の記録を聴き、即興がどのように形作られるかを比較する。再演性の低い瞬間芸としての価値が理解できる。
- 歌詞を逐語的に追うより、声の抑揚・タイミング・音色変化に注目すると、ダモが伝えようとする感覚が見えてくる。
- バンドメンバー(ヤキ・リーベツァイト、マイケル・カーク、ホルガー・チューカイなど)とのインタープレイに耳を傾け、リズム隊と声の関係性を楽しむ。
まとめ:ダモ・スズキの魅力とは何か
ダモ・スズキの魅力は、既成概念にとらわれない「声の自由」と、その声が現場で生まれる即興的エネルギーを写し取る力です。録音された名盤群も重要ですが、彼の真価は“その場でしか生まれない瞬間”にこそあります。言葉を超えて迫ってくる表現力、現場のミュージシャンと作る一度きりの化学反応、そして普遍的な人間性──これらが混ざり合うことで、ダモは長年にわたり多くの聴衆と音楽家を魅了し続けています。
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