ドミトリ・フヴォロストフスキーの生涯と声の魅力—オペラ界を彩る名バリトンの軌跡
プロフィール — 生い立ちと略歴
ドミトリー・フヴォロストフスキー(Dmitri Hvorostovsky)は、1962年10月16日、ソ連シベリアのクラスノヤルスクで生まれ、2017年11月22日にロンドンで逝去した世界的なバリトン歌手です。シベリア出身というバックグラウンドから国際舞台へと羽ばたき、1989年の「BBC カーディフ歌手コンクール(Cardiff Singer of the World)」での受賞を契機に、欧米の主要歌劇場やコンサートホールで活躍しました。
キャリアのハイライト
- 国際的な飛躍:1989年のカーディフでの成功以降、ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)、メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座など一流歌劇場の主役級を務めました。
- レパートリーの広さ:ロシア・オペラを中心に、チャイコフスキーの『エフゲニー・オネーギン』のタイトルロールや、ヴェルディのジォルジョ・ジェルモン(『椿姫』)などイタリア・オペラの重要なバリトン役をこなしました。
- 録音と映像:ディスク・DVDともに多数の録音を残し、特にロシア歌曲集やオネーギンの舞台映像などは評価が高いです。
声の特色と歌唱スタイル
フヴォロストフスキーの声は「天性のバリトン」と形容されることが多く、暖かく深い中低音域、しなやかなレガート、そして透き通るような上声までの滑らかなつながりが魅力です。以下が主な特徴です。
- レガートと息の使い方:フレーズの繋がりを重視する伝統的なロシア唱法と、イタリア的な歌い回しを融合させた表現で、息の長いフレーズを安定して聴かせます。
- 語学とディクション:ロシア語はもちろん、イタリア語やフランス語、英語でも明瞭な発音と語感を持ち、テキスト解釈に基づいた自然な表現を行います。
- 感情表現と抑制のバランス:熱情的になりすぎず、内面の複雑さを抑えた美学で描き出す演技的知性が、役柄に奥行きを与えます。
舞台人としての魅力
フヴォロストフスキーは「音だけで語る」のではなく、舞台人としての佇まいや表情、そして独特の銀髪のルックスも相まって強いカリスマ性を放ちました。以下が彼を観る価値を高める要素です。
- 役柄への没入度:内省的なキャラクター(例:オネーギン)では、声と佇まいで心理の機微を表す演技を見せます。
- ビジュアルと音楽の統合:クラシックの伝統美と現代的な観劇感覚を橋渡しする存在で、若い聴衆にも訴求しました。
- カリスマ性と紳士的な佇まい:ステージ上の確固たる存在感が、楽曲の説得力を高めます。
レパートリーと代表作(舞台・歌曲)
フヴォロストフスキーはオペラの役柄だけでなく、ロシアの「ロマンス(歌曲)」にも強い関心と実績がありました。代表的なレパートリーは次の通りです。
- オペラ:『エフゲニー・オネーギン』(タイトルロール) — 彼の代名詞的な役。チャイコフスキーのドラマと内面描写に合致した歌唱が高く評価されました。
- ヴェルディ・バリトン役:ジェルモン(『椿姫』)、ディ・ルナ伯(『トロヴァトーレ』)などのドラマティックなイタリア・レパートリーもレパートリーに含まれます。
- ロシア歌曲:チャイコフスキー、ラフマニノフ、ロシア民族歌など、抒情的な小品でも特に深い感情表現を示しました。
代表的な録音・映像(入門ガイド)
録音や舞台映像は、彼の歌唱と表現を知るための第一歩です。録音機会は多岐に渡るため、まずは次のカテゴリーから探すことをおすすめします。
- 『エフゲニー・オネーギン』の映像・録音:タイトルロールを演じた舞台映像は彼の代表作。演技と歌の両方が楽しめます。
- ロシア歌曲集(コンピレーション/アルバム):ロシア・ロマンセや民謡的なレパートリーでの情感表現を堪能できます。
- ヴェルディ・アリア集:重厚でドラマティックな側面を聴けるCDは、彼の声の幅を感じるのに適しています。
- リサイタルのライブ録音・映像:ピアノ伴奏での歌曲・リートは、テキストに対する繊細なアプローチがよくわかります。
批評・受賞・栄誉
国際コンクールでの成功を皮切りに、主要歌劇場での主演や録音によって多くの批評家から高い評価を受けました。受賞や栄誉の詳細は国や機関によって異なりますが、世界の主要オペラ界で確固たる地位を築きました。
最後に — フヴォロストフスキーの「魅力」をどう味わうか
彼の魅力は単に声の美しさだけではありません。以下の視点で聴くとより深く味わえます。
- テキストとフレーズの「意味」を追いかける:言葉に寄り添った歌い方が多く、歌詞を意識して聴くと表現の奥行きが見えてきます。
- 役作りとしての「静けさ」を観る:劇的なクライマックスだけでなく、静かな場面での内面表現にこそ彼の美点が現れます。
- 同時代の録音や共演者(指揮者・歌手)との比較:異なる指揮者やキャストによる上演を比べることで、彼独自の解釈が際立ちます。
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参考文献
- Dmitri Hvorostovsky — Wikipedia
- Dmitri Hvorostovsky — Royal Opera House(アーティスト紹介)
- Dmitri Hvorostovsky, Celebrated Baritone, Is Dead at 55 — The New York Times
- Dmitri Hvorostovsky (1962–2017) — Gramophone
- Hvorostovsky — Decca Classics(ディスコグラフィー/商品情報)


