Chucho Valdésの世界を聴く: アフロ=キューバン・ジャズの巨匠と厳選おすすめアルバムの完全ガイド
Chucho Valdés — 概要
キューバ出身の巨匠ピアニスト、作曲家、編曲家であるChucho Valdés(チューチョ・バルデス)は、アフロ=キューバンの伝統とモダン・ジャズを高次元で融合させた音楽性で世界的に知られます。ピアノの技巧、打楽器的なタッチ、複雑なアンサンブル運用、宗教的/民俗的リズムをジャズの語法に取り込むセンス――これらが彼の音楽の大きな特徴です。本コラムでは、キャリアの各フェーズを代表するおすすめレコードを選び、それぞれの聴きどころや聞き方のポイントを深掘りして解説します。
聴き方のガイドライン(全体)
「リズムを追う」:チューチョ作品では、ピアノのメロディやソロだけでなく、コンガやバタ(batá)などの打楽器が主題を担う場面が多い。拍節の変化やポリリズムに耳を向けると発見がある。
「対話を見る」:ソロだけでなく、ホーンや鍵盤間の即興的な呼応(call-and-response)が重要。アンサンブルの構成を意識して聴くと曲の設計がよくわかる。
「原典と現代性の往復」:民俗音楽の要素(宗教的フレーズ、歌謡的モチーフなど)がどうジャズ的語法に翻案されているかを追うと、チューチョの独自性がクリアに見える。
おすすめレコード(選)
Irakere(代表的セルフタイトル/Irakere関連アルバム)
ポイント:Chuchoが結成した伝説的バンドIrakereは、キューバの伝統音楽、ジャズ、ロックを混淆した強烈なサウンドで国際的注目を浴びました。ホーン・アンサンブルの緻密さ、リズム隊の切れ、チューチョのピアノが前面に出るアレンジは、アフロ=キューバン・ジャズの金字塔と言えます。
聴きどころ:オープニングからのエネルギー、ブラスのリフ、鍵盤とパーカッションの絡み。バンドとしての「ビッグ・インパクト」を味わいたいときに最適です。
Jazz Batá
ポイント:アフロ=キューバンの神聖な太鼓であるバタ(batá)を前面に押し出し、伝統的な宗教音楽とジャズ即興を融合させた、Chuchoの代表作的な一枚。宗教的色彩が強いテーマをジャズ的に展開する試みが印象的です。
聴きどころ:太鼓とピアノの対話、モード的な即興展開、繰り返しの中で高まる緊張感。曲の中でリズムが「宗教的な根」を保ちながらジャズの即興で羽ばたく瞬間に注目してください。
Bele Bele en La Habana(代表的ソロ/コンボ作)
ポイント:キューバの都市的音楽性と成熟したジャズ表現がうまく結びついた作品。アコースティックなトリオ〜小編成のアンサンブルを中心に、より繊細で内省的な側面を示すアルバムです。
聴きどころ:テンポ感の揺らぎ、抒情的なフレーズ、ピアノのタッチの多様性。大きな編成の熱さとは別の「室内楽的」な魅力を味わえます。
Chucho's Steps(近年の代表作)
ポイント:成熟した作曲・編曲力とバンド運営力が結実した近年の傑作。伝統的モチーフへのオマージュと、現代ジャズへの照応が巧みに融合しています。トーンの幅、ダイナミクス、モダンな即興性が際立ちます。
聴きどころ:楽曲構造の巧妙さ、ソロのテンポ選択、アンサンブルの瞬発力。タイトルや楽曲の引用・参照を手掛かりに、楽曲間の会話を辿るのも面白いでしょう。
ライヴ録音(Irakereや Chucho のライブ盤)
ポイント:Chuchoの音楽はライブでのダイナミズムや即興の火花が最大の魅力です。ライブ盤ではアレンジの即興的な拡張や、観客との共振が音に色濃く現れます。
聴きどころ:演奏時間が長くなりがちなソロ・セクション、テンポの大胆な変化、演奏者間の呼吸。一つのテーマがライブでどのように発展するかを比較することで、彼の即興術を深く理解できます。
各レコードの深掘り(聞きどころの具体化)
テーマの変容を追う:同じテーマが曲の途中でリズム・調性・倍音構造を変えながら何度も戻ってくることが多く、テーマ提示→変奏→即興→回帰、という流れを注意深く追うと作曲の巧みさが見えてきます。
打鍵と打楽器の類似性:チューチョの左手や音の刻み方は打楽器的で、コンガやベースとリズムを共有します。ピアノがパーカッションと「同じ言語」で話している箇所を探してみてください。
アレンジ的ポイント:ホーンのリフが曲のフックになる一方、ピアノはその間を埋める役割や、逆に主題を引き受ける役割を瞬時に切り替えます。誰が主題を担っているかを意識すると編曲の妙がわかります。
即興の文法:ジャズ的なスケール、クロマティシズム、もしくは宗教的旋法の引用など、多様な語法が混在します。短いフレーズの反復やクラスター的な和音で緊張を作る手法に注目してください。
どのアルバムから聴くべきか(入門順)
まずはIrakere(バンド作)でチューチョの「音の大きさ」とアンサンブル力を体感。
次にJazz Batáでアフロ=キューバンの宗教的リズムとピアノの融合をじっくり聴く。
さらにBele Bele等の小編成作でピアノの内面性・抒情性を味わう。
最後に近年作(Chucho's Steps等)で成熟した構成力と最新の演奏感覚を確認。
リスニングの実践アドバイス
1曲を数回に分けて聴く:最初に全体像、2回目以降に構成やソロ毎の分析をする。
パート毎にフォーカス:1回目はリズム隊、2回目はホーン、3回目はピアノなど、役割ごとに耳を割くと聴き取りやすい。
楽譜やライナーノーツを参照:可能なら曲目や使われているリズム(例:guaguancó、yambú、batáなど)の説明を確認すると理解が深まる。
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参考文献
- Chucho Valdés — Wikipedia(英語)
- Chucho Valdés — AllMusic(アーティスト情報・ディスコグラフィ)
- Chucho Valdés — Discogs(詳細ディスコグラフィ)
- Chucho Valdés — GRAMMY(受賞・ノミネート情報)


