Tim Buckley 全方位ガイド:初期フォークから前衛・ソウルまでの聴きどころとおすすめ名盤
はじめに — Tim Buckleyという存在
Tim Buckley(1947–1975)は、60年代後半から70年代前半にかけて活動したアメリカのシンガーソングライター。青年期のフォークからジャズ/即興、そして実験的な前衛作品、さらにソウル/ファンク志向のアルバムまで、短いキャリアの中で驚くほど多彩な音楽的変貌を遂げました。卓越した声域と独特のファルセット、歌唱の即興性を武器に、ロック/フォークの枠を超える挑戦を続けたアーティストです。
Tim Buckleyの聴きどころ(概観)
初期(1966–1967):フォーク/ソングライター系。メロディと言葉の表現力が際立つ。
移行期(1969前後):ジャズやエレクトリックな感覚を取り入れ、演奏と声の長いフレーズや即興が増える。
実験期(1970前後):歌唱表現を極限まで拡張した前衛的な作品。声そのものを楽器化する試みが顕著。
晩年(1972–1974):よりソウル/ファンク/ポップ指向の音楽性も強め、商業的な側面を試みた作品群。
おすすめレコード(深掘り)
Tim Buckley(1966) — デビュー作:原点の美しさ
デビュー作はフォーク寄りで、シンプルなアレンジの中に若きTimの声の魅力と作曲のセンスがよく現れています。歌詞の感受性やメロディの研ぎ澄まされ方に、後の多様な展開の「核」を感じさせるアルバムです。まずはここから彼の声とソングライティングの基礎に触れるのが王道。
聴きどころ:声のピュアさ、アコースティックなアレンジ、歌詞の感受性。
Goodbye and Hello(1967) — 代表作としての完成度
より豊かなアレンジとコンセプト性を持った2作目。フォークの枠を保ちながらも曲ごとの表情が豊かになり、Timの声の幅が広がっているのを実感できます。このアルバムには後年でもよく取り上げられるナンバーが含まれ、彼の「名盤」として挙げられることが多い作品です。
代表曲(例):Once I Was、No Man Can Find the War
聴きどころ:メロディの強度、歌詞とアレンジのバランス、若くして見せる表現の深化。
Happy Sad(1969) — ジャズ的手法と歌の即興性
ここからより自由な演奏形態、長めのフレーズ、ジャズ的なインタープレイが前面に出てきます。バンドの柔軟な反応とTimのボーカル・インプロヴィゼーションが噛み合い、アルバム全体に独特の浮遊感と深みをもたらします。シンプルなフォークでは得られない「時間の流れ」を音楽で体験できる一枚です。
代表曲(例):Buzzin' Fly
聴きどころ:ヴォーカルのフレーズの伸び、ゆったりとしたテンポ感、即興的な演奏。
Blue Afternoon(1969) — 内省とメロディの深化
同年のうちに発表されたこの作品は、Happy Sadの延長線上にありつつも、よりメロウで内省的な側面が強いアルバム。歌の「語り」としての説得力が増し、デリケートな情感表現が光ります。Timの歌がより「近く」感じられる作品です。
聴きどころ:繊細なメロディ、落ち着いた表現、歌の内面性。
Lorca(1970) — 試験的な室内楽的実験
LorcaはLarry Beckettなどとの詩的コラボレーションが生きる、実験的で室内楽的なアプローチが目立つ作品です。従来のポップ/フォークの枠組みを解体し、音色や構成で詩情を描き出す意欲作。歌の旋律が時に抽象的な伴奏と溶け合う場面は、聴き手に強い印象を残します。
聴きどころ:詩的な世界観、非定型の編曲、声と伴奏の新たな関係性。
Starsailor(1970) — 声の極限、代表作の一つ
Tim Buckleyの中でも特に実験性が高いアルバム。彼のファルセットと即興的なボーカル処理が中心となり、ロック/ジャズ/現代音楽の要素を横断します。ここに収録された「Song to the Siren」は後年カバーや再評価を通じて広く知られることになり、アルバム全体の特異性を象徴しています。
代表曲(例):Song to the Siren
聴きどころ:声を楽器として扱う大胆さ、前衛とポピュラーミュージックの接点。
Greetings from L.A.(1972)以降 — ソウル/ファンク志向の新局面
70年代初頭からの作品群は、商業的な側面も意識したソウル/ファンク寄りのアプローチが色濃く出ます。好みは分かれるものの、Timの音楽的好奇心と適応力の高さを示す重要なフェーズです。ポップス寄りの曲にも彼独自のヴォーカル表現やフレーズが残っており、新たなファン獲得につながりました。
聴きどころ:リズム志向の曲での新たな表現、アレンジの洗練。
まとめ:どこから聴くべきか
初めてなら:Goodbye and Hello と Happy Sad をセットで。歌とアレンジの両面でTimの魅力が分かりやすく表れます。
実験的側面に触れたいなら:Starsailor と Lorca。声の革新性、構造の解体を味わえる名盤です。
後期の曲や別方向のアプローチを知りたいなら:Greetings from L.A. 以降を。商業的な側面と柔軟な音楽性を確認できます。
聞き方のヒント(音楽的観点)
歌詞と旋律の両方を味わう:初期作は歌詞中心でも十分に楽しめる。歌詞の詩性とメロディの絡みを意識して聴くと発見がある。
声の変化を追う:同一アーティストでここまで声の使い方が変わる例は少ない。曲ごと、アルバムごとの声の質感の違いを意識してみてください。
対比で聴く:フォーク寄り作品と実験作を並べて聴くことで、彼の「変化する美学」がより見えてきます。
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参考文献
- Tim Buckley - Wikipedia
- Goodbye and Hello - Wikipedia
- Happy Sad - Wikipedia
- Starsailor - Wikipedia
- Lorca - Wikipedia
- Song to the Siren - Wikipedia
- AllMusic — Tim Buckley Biography


