The Handsome Family のLP完全ガイド|アルバム別の聴きどころと購入ポイント

イントロダクション — The Handsome Familyとは何か

The Handsome Family は、夫婦デュオのブレット・スパークス(Brett Sparks)とレニー・スパークス(Rennie Sparks)によるアメリカのフォーク/カントリー系ユニットです。1990年代半ばの活動開始以来、ゴシック的で物語性の高い歌詞と、シンプルかつ陰影のあるアレンジで独自の世界観を築いてきました。レニーの詩的で時に不穏な物語性の強い歌詞と、ブレットのメロディ/編曲が噛み合うことで生まれる“暗い民謡(dark Americana)”は、いわゆるフォークやカントリーの範疇を越え、リスナーに強い印象を与え続けています。

選び方の指針

  • 初期作→成熟期→近年作の流れで聴くと、作風の変遷と歌詞テーマの深化が分かりやすい。
  • 代表曲をきっかけにアルバム全体を掘ると、単曲では分かりにくい物語性や統一感を味わえる。
  • LPで入手する際は、オリジナル盤や欧州盤(Loose Music など)が流通しやすいことが多いが、各盤の収録曲・ボーナストラックに差がある場合があるので購入前にディスコグラフィを確認するのがおすすめ。

おすすめレコード(アルバム解説)

Milk and Scissors(1996)

中期前の重要作で、The Handsome Family の“語り”とメロディの融合が鮮明になった一枚。フォーク/カントリーの伝統に根ざしつつ、都会的な寒さや奇妙なユーモアが垣間見える楽曲が並びます。レニーの物語性のある歌詞が際立つため、彼らの作風を初めて深掘りするには最適です。

  • 代表曲(抜粋): その時代を象徴するナンバーを収録。アルバム全体のトーンを確認するために一枚通して聴くことを勧めます。
  • 聴きどころ: 物語性の強い歌詞、シンプルながらも効果的なアンサンブル。

Through the Trees(1998)

バンドの認知が高まり始めた転換点。より深い陰影と抑えた狂気が表出し、彼らの“ゴシック・アメリカーナ”的要素が強まった一枚です。歌詞の登場人物や情景描写が濃密になり、それまでのフォーク寄りサウンドから一歩踏み込んだ表現が印象的。

  • 聴きどころ: ストーリーテリングに重点が置かれた楽曲群。メランコリックな旋律と闇めいたテーマの対比が魅力。
  • おすすめポイント: これを基点に過去作と後続作を比較すると、作風の変化が明確に見えます。

Singing Bones(2003)

The Handsome Family の代表作といえるアルバム。シンプルながら完成度の高い楽曲が並び、後にTVドラマ『True Detective』(シーズン1)のオープニングテーマで使われた「Far from Any Road」を含むことで広く知られるようになりました。このアルバムは彼らの世界観が最も凝縮された作品のひとつです。

  • 代表曲: "Far from Any Road" — ドラマ使用によって新たな聴衆を獲得し、アルバム全体の評価を押し上げました。
  • 聴きどころ: ミニマルな編成ながら陰鬱で詩的な世界を構築するアレンジ、レニーの物語詩とブレットの寂しげな音像の融合。
  • 購入時の目安: 欧州盤(Loose Music)や米国の初回リリース盤は流通します。再発・リイシューがある場合はボーナストラックが付くこともあるのでチェック。

Last Days of Wonder(2006)

物語性をさらに広げ、自然・迷信・科学・人間の狂気を扱った壮大で詩的な主題が目立つ一枚。曲ごとに異なる情景や時代が立ち上がり、アルバム全体が一つの短編集のように聴こえます。音作りもやや豊かになり、アンサンブルの幅が広がったのが特徴です。

  • 聴きどころ: 細部に宿る描写力、文学的な引用やモチーフが好きなリスナーに強く刺さる楽曲群。
  • おすすめポイント: 歌詞の世界を読み解きながら聴くと、深い満足感が得られる作品。

Honey Moon(2009)

より豊かなアレンジと温度感を持った作品。悲しみと愛情、世界への観察が混ざり合い、聴く者を静かに引き込む大人びたアルバムです。特にメロディの美しさと歌詞の静かな恐怖感のバランスが絶妙です。

  • 聴きどころ: メロディセンスの成熟、柔らかながら印象に残る楽器使い。
  • おすすめポイント: 彼らの「柔らかい側面」やポップさを知りたい人にも向いています。

Unseen(2016)

タイトル通り「見えないもの」に焦点を当てた近年作。電子音や実験的なアレンジ要素が取り入れられ、伝統的なフォーク路線からの拡張を感じさせます。過去作のテーマをモダンに再解釈したような側面があり、長年のファンと新しい聴衆の橋渡しとなる一枚です。

  • 聴きどころ: エレクトロニックなテクスチャーと、従来のアコースティック要素の融合。現代的なサウンドプロダクション。
  • おすすめポイント: 進化を追いたいリスナー向け。ライブでの再現性やアレンジの違いにも注目してみてください。

代表曲ピックアップ(入門用プレイリストの例)

  • Far from Any Road(Singing Bones) — 入門曲として最も知られている一曲。
  • My Ghost(Through the Trees) — ゴシックな情感を味わえる楽曲。
  • Weightless Again(Through the Trees) — メロディと歌詞の調和が光るナンバー。
  • The Bottomless Hole(Last Days of Wonder) — 物語性の強い代表例。
  • Little Sparrows(Honey Moon) — 穏やかながら内面の強さが滲む楽曲。

アルバム毎の楽しみ方(聴きどころガイド)

  • 歌詞に注目する: レニーの描く登場人物や風景は詳細で詩的。歌詞カードを見ながら聴くと新たな発見が多い。
  • ストーリー志向で通して聴く: 多くのアルバムが短編小説集のような構成を持つので、一曲ずつではなくアルバム単位での視聴を推奨します。
  • 器楽の隙間を聴く: ブレットのアレンジは余白を活かすタイプ。静けさや間を楽しむと、音像の深さが増します。

どの盤を買うべきか(レコード選びの観点)

オリジナル盤の雰囲気を好むなら初回リリース盤や当時のプレスを探すと良いですが、再発で音質改善やボーナストラックが付くこともあります。欧州盤(Loose Music 系)や米国の Carrot Top 系列の流通が多いので、購入前に収録曲・クレジットを確認してください。また、限定色盤や輸入盤のジャケット違いなどコレクター向けのバリエーションも存在します。

まとめ — The Handsome Family をLPで味わう価値

The Handsome Family は、歌詞の文学性と音像の抑制が結びつき、LPというアルバム単位のフォーマットと非常に相性が良いアーティストです。代表作「Singing Bones」はもちろん、キャリア初期から続く一貫した世界観をLPで順に聴いていくことで、彼らの魅力がより深く伝わってきます。物語を楽しみたいリスナー、暗めのアメリカーナを愛するコレクターには強くおすすめできます。

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参考文献