Alcestのレコード選び完全ガイド:初心者からコレクターまで押さえるおすすめ盤と版情報

Alcestとは — 「黒」と「光」のあいだ

フランス出身のNeige(ネージュ)を中心に活動するAlcestは、ブラックメタルの激しさとシューゲイズ/ドリームポップの浮遊感を融合させた「ブラックゲイズ(blackgaze)」という表現で広く知られるようになりました。宗教的・幻想的な内面世界を描く歌詞、層状に重ねられたギターとコーラス、そして時に黒メタル的なブラストや咆哮を取り入れるダイナミクスが特徴です。

このコラムの目的

ここではレコード収集や再生の一般論(保存やクリーニング等)ではなく、Alcestの「どのレコードを買うべきか」「各作品がどんな音楽体験を提供するか」「レコード選びで注目すべき盤の仕様や版情報」を中心に、初心者からコレクターまで参考になるよう深掘りします。

おすすめレコード(必聴盤) — 作品ごとの深掘り

  • Souvenirs d'un autre monde(初期作/デビュー)

    音像は最もシューゲイジー寄りで、Neigeの透き通るクリーンボーカルとアンビエント的ギターが前面に出ます。黒メタルの要素は控えめで、メランコリックで幻想的な世界観が第一に来る作品。初めてAlcestを聴く人で「まずは耽美で静かなサウンドがいい」というならこの盤が合います。

    レコード選びのポイント:

    • 初回プレスや帯付き(日本流通)/限定カラービニールはアートワークやブックレットが充実していることが多い。
    • ジャケットのアートワークが作品世界と密接なので、見開きジャケットやインナースリーブの有無を確認すると満足度が高い。
  • Écailles de Lune(通称:エカイユ・ド・リュン) — ブレイクスルー盤

    よりヘヴィでダイナミックなアレンジ、そしてバンドサウンドの厚みが増した名盤。ブラックメタル由来の疾走感とシューゲイジーなリード/コーラスのバランスが秀逸で、Alcestを「轟音と叙情の両立」を示した存在に押し上げた作品です。ライブでの人気曲も多く含まれ、入門盤としても非常におすすめ。

    レコード選びのポイント:

    • 重厚な低域やダイナミクスを活かすため、しっかりしたマスタリング(再発時のリマスター表記)や180gプレスを優先するのがおすすめ。
    • 限定カラービニールやダブルLP構成(長尺の曲が多い場合)は見た目も楽しめる。
  • Les Voyages de l'Âme(精神の旅) — 優美さの深化

    壮麗なメロディと構築美が際立つ作品。空間表現の豊かさ、アコースティックやストリングス的アレンジの導入など、楽曲ごとの情景描写が強く、アルバムを通して一つの旅をするような聴きごたえがあります。より「叙情性」を求めるリスナーに。

    レコード選びのポイント:

    • 曲間の空間表現が重要なので、ステレオ感の良いマスタリング/プレス(プレス元の評判をチェック)を。
    • インサートや歌詞カードが付属しているエディションは世界観理解に役立つ。
  • Shelter(シェルター) — シューゲイズ/ドリーム寄りの実験作

    このアルバムでは黒メタル的な攻撃性をかなり抑え、ドリームポップ〜シューゲイズ寄りの柔らかい音像へと踏み込みました。エレクトロニック要素やクリーンなボーカル・ハーモニーが中心。好みは分かれるものの、別方向の美しさを提示した重要作です。

    レコード選びのポイント:

    • 原盤やリリース時のアナウンスで「アナログ向けのマスタリング」がなされているかを確認すると、微妙なテクスチャがより楽しめます。
    • シングルや先行EPとの違い(ボーナストラックの有無)をチェック。
  • Kodama(コダマ)— 原始的な自然と神話的なスケール

    アニメーション映画『もののけ姫』などからインスピレーションを受けたことでも知られる作品で、よりダイナミックかつ攻撃的な部分を復活させつつ、壮大なストーリーテリングを志向。ヘヴィさと美しさが劇的に交錯するため、ブラックゲイズの醍醐味を求めるなら必携です。

    レコード選びのポイント:

    • ライブで映える曲や長尺曲が入るため、ダブルLP構成のエディションは音溝の取り方で音質面でも有利になる場合があります。
    • コレクターズエディション(アートポスターやライナーノーツ同梱)を探すと世界観理解が深まる。
  • Spiritual Instinct(精神的本能) — 近年作の集大成的側面

    近作の中ではバンド感とアンサンブルの良さが際立つ一枚。よりロック/メタル寄りの比重が増し、コンパクトで力強い楽曲構成が多いのが特徴です。長年のリスナーに向けての「現在地」を示す作品とも言えます。

    レコード選びのポイント:

    • スタジオの録音クオリティが良い作品なので、プレスの評判(ノイズやチャンネルバランス)を中古購入時にチェック。
    • 限定盤の数が多いタイトルもあるため、リリース情報を追っておくと良い版に出会えます。
  • コレクター向け:デモ/EP類(Tristesse Hivernale等)

    初期デモや限定EPはファンにとって魅力的な音源や未発表アレンジを含むことがあり、コレクションとしての価値が高いことも。入手困難なプレスは価格変動が大きいため、状態と真贋を慎重に確認することをおすすめします。

「どの順で聴く?」 — 入門〜深掘りのおすすめルート

  • まずシューゲイズ寄りの世界観を味わいたいなら:Souvenirs d'un autre monde → Shelter → Les Voyages de l'Âme
  • ブラックゲイズの強さとダイナミクスを体験したいなら:Écailles de Lune → Kodama → Spiritual Instinct
  • 全体像を掴みたいならリリース順に聴くと、サウンドの変遷(耽美→重厚→実験→再集約)がよくわかります。

レコード(盤)を選ぶときの実務的チェックポイント(メンテ不要な範囲で)

  • プレス情報:180g表記、アナログ向けマスタリング表記、ダブルLPの仕様などは音質傾向の目安になります。
  • 版(エディション):初回プレス/限定カラービニール/再発でマスタリングが異なる場合があるので、購入前に盤の年号・マトリクス(runout)情報を確認しましょう。
  • 付属物:歌詞カード、ポスター、ブックレットの有無はコレクター満足度に直結します。
  • 盤の状態と流通:中古市場では盤質とジャケットの保存状態が価格に直結。信頼できる出品者やレコードショップでの購入が安心です。

音楽的魅力を深掘りする観点

  • テクスチャと重心の変化:Alcestは音の「密度」と「浮遊感」を曲ごとに巧みに変化させます。レコードでは低域の余韻やリバーブ感が生々しく出るため、アルバム毎の質感差を楽しめます。
  • 歌詞・テーマ:神話的・回想的なテーマが多く、歌詞カードやライナーノーツを読みながら聴くと作品理解が深まります。
  • ライブ感:スタジオの凝ったアレンジと、バンドでの再現性(ライブでの表現)が両立する作品が多く、それもコレクション欲を刺激します。

購入の優先度(初心者→中級→コレクター)

  • 初心者:Écailles de Lune、Les Voyages de l'Âme — バンドの代表的サウンドを一気に掴める。
  • 中級リスナー:Kodama、Spiritual Instinct — サウンドの幅と近年の到達点を体験。
  • コレクター:Souvenirs d'un autre monde(初期プレス)、Tristesse Hivernaleなどのレア盤/限定盤。

購入前に調べると良い外部情報

  • プレス元(レーベル)のアナウンスページ:リリース仕様や限定版情報を確認。
  • Discogsやコミュニティレビュー:実際の音質やノイズ問題、プレスごとの差がユーザーコメントで分かることが多い。
  • レビュー記事やインタビュー:アルバム制作の背景を知ることで、どのエディションを選ぶかの判断材料になります。

まとめ

Alcestのレコードは「音像の物語」を重視するリスナーに強く響きます。どの盤を選ぶかは「より夢幻的な体験を求めるか」「轟音と叙情の両立を求めるか」「コレクターズアイテムとしての希少性を求めるか」で変わります。まずはÉcailles de LuneやLes Voyages de l'Âmeから入って好みを確かめ、気に入れば初期盤や限定エディションへと深掘りしていくのが無難で満足度の高い流れです。

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参考文献