Squarepusher全アルバム徹底ガイド:時代別おすすめ盤と聴き方・版の違い・コレクション術

はじめに:Squarepusher(トム・ジェンキンソン)とは

Squarepusher(本名 Tom Jenkinson)は、1990年代半ばから活動する英国の電子音楽家/ベーシスト。ドラム&ベースやIDMの枠組みを土台にしつつ、ジャズ的即興、ベース奏法の超絶技巧、アナログ回路的なノイズや歪みまでを取り込んだ独自のサウンドで知られます。本稿ではレコードとしてコレクションに加えたい“おすすめ盤”をピックアップし、音楽的意義・聴きどころ・版・流通に関するポイントを掘り下げます。

選び方の観点 — 何を基準にレコードを選ぶか

  • 時期別の“スタイルの変化”を押さえる:初期のブレイクビーツ志向からジャズ/ライブ志向、さらにメタリックでデジタルな実験へと変化します。各期の代表盤を持つことで作風の変遷が追えます。
  • リスニング体験を重視するか、コレクション性(初回盤、ジャケット違い)を重視するかで選択が変わります。
  • 特定の曲やサウンド(エレキベースの即興、アナログ的歪み、超複雑ドラムプログラミング)を求めるなら、その要素が強いアルバムを中心に。

Feed Me Weird Things(1996) — 初期の衝動とエクスペリメント

ポイント:Rephlex(初期)からのリリースで、Squarepusher名義の出発点的作品。ドラム&ベース〜ジャングルのビート感を土台に、ベースやメロディ形成の独自性が既に強く表れています。

  • 聴きどころ:荒々しくも遊び心のあるビート、時折見せるジャズ的フレーズ。後年の高度なプロダクション前の“生っぽさ”が楽しめます。
  • コレクション性:初回Rephlexプレスはマニアに人気。国内流通盤(日本盤)が付属品や解説で価値が出ることもあります。

Hard Normal Daddy(1997) — 「IDM/ブレイクビーツの名盤」的完成度

ポイント:Warp移籍後の初期代表作の一つ。より洗練されたサウンドデザインとメロディ性が強調され、聴きやすさと実験性のバランスが取れています。

  • 聴きどころ:緻密なドラム・プログラミングと、時折前面に出るベースライン。ポップ寄りのフックを残しつつも突飛な展開が混在します。
  • おすすめの聴き方:アルバム全体を通して“ドラムの動き”と低域のベースラインの関係を追うと、トムの音楽的志向がよく見えます。

Music Is Rotted One Note(1998) — ジャズ/即興志向への転換

ポイント:ビート中心の作品から一歩踏み出し、生楽器(特にベース)や生演奏的なアプローチが前面に出た作品。従来のリズム中心作とは趣が大きく異なります。

  • 聴きどころ:ドラムループではなく実演的な手触り、ベースのトーンとフレージング。ジャズ/フュージョン的な側面が強いので、即興やテクニックに注目すると面白いです。
  • 聴取のヒント:ビートの“揺らぎ”やミスのような生々しさを意図的に取り入れている点に注目してください。

Go Plastic(2001) — デジタル/メタリックな実験の到達点

ポイント:アナログ的温度感から一転、冷徹でメカニカルなリズム・サウンドに踏み込みます。プラスチック感・硬質な質感をタイトルどおりに追求した作品。

  • 聴きどころ:極端に処理されたドラム音、デジタル歪みや位相処理、マシン的な反復と突発的な変化の対比。
  • 聴き方のコツ:音像のエッジや高域の“きしみ”を拾うと、制作時のサウンドポリシーがわかりやすい。クラブミックスというより“実験的リスニング”向け。

Ultravisitor(2004) — 人間性と電子処理の混交

ポイント:デジタル処理と人の演奏を混ぜ合わせるアプローチが試された作品。ライブ的な要素やボーカル的処理も見られ、感情表現が強まります。

  • 聴きどころ:断片化されたメロディと、漂うノスタルジー。サンプリング/ライブの境界を揺らす手法が印象的です。
  • アルバムとしての味わい:単曲のインパクトだけでなく、曲間に生まれる“物語性”を楽しめる作品です。

Hello Everything(2006)〜Ufabulum(2012) — メロディとビートの刷新

ポイント:2006年のHello Everythingはポップセンスとエレクトロ要素が強まり、Ufabulum(2012)は視覚的にもインパクトのあるサウンドを提示。両作とも近年のトムのモダンな側面を示します。

  • Hello Everythingの聴きどころ:軽快でキャッチーなフレーズと、随所の細かなサウンドデザイン。
  • Ufabulumの聴きどころ:ダンス寄りのビートを保ちつつ、幾何学的なリズムとシンセの鋭さが際立ちます。ライブでの視覚表現を強く意識した制作。

Damogen Furies(2015)&Be Up a Hello(2020) — 最近作の実験と回帰

ポイント:Damogen Furiesは従来の高速で複雑なリズムワークを再確認する作品で、Be Up a Helloはアナログ機器やループを積極的に取り入れつつも聴きやすさを意識した作り。いずれも近年の制作技術を反映しています。

  • 聴きどころ:リズムの構築法・音響処理のニュアンス。過去の要素を再構成したうえでの新しい表現が楽しめます。
  • コレクション上の注目点:限定カラー盤・ボーナスEPなど、リリース形態にバリエーションがある場合があり、コレクターズアイテムになりやすいです。

Shobaleader One/Just a Souvenir などの派生プロジェクト

ポイント:Squarepusher名義以外のプロジェクト(バンド形態やコラボ)も、彼の“プレイヤー”としての側面を強く出しています。ライブ・アンサンブルの音を楽しみたいならチェック推奨。

  • 聴きどころ:バンド編成での再解釈、ベースが前面に出たアレンジ、ライブ感。

どの盤を優先して買うべきか(目的別ガイド)

  • 「Squarepusherの全貌を俯瞰したい」:Feed Me Weird Things → Hard Normal Daddy → Music Is Rotted One Note → Go Plastic を軸に。
  • 「ベース・プレイと即興が好き」:Music Is Rotted One Note、Ultravisitor、Shobaleader One系。
  • 「電子的実験/クールなビートが好み」:Go Plastic、Ufabulum、Damogen Furies。
  • 「最近の作風/ライブ感を追いたい」:Hello Everything、Be Up a Hello、各種ライブ盤やShobaleader One。

購入時の注意点・版の見方(簡潔に)

  • 初回盤 vs 再発:初回プレスにはスリーブ差や帯(日本盤の場合)などの違いがあるのでコレクション性を求めるなら盤の詳細を確認。
  • 海外盤と国内盤の違い:ライナーノーツの言語や解説、ボーナストラックの有無が異なる場合があります。
  • EPやシングルにも重要曲が多く含まれる:アルバム未収録トラックや別テイクを収めたEPは侮れません(例:Big LoadaなどのEP群)。

聴きどころの具体的ポイント(トラック1つ1つをどう聴くか)

  • 構造を見る:複雑なビートの“バックビート”“ハイハット処理”“サブベース”の役割を分けて聴くと、制作技法が見えてきます。
  • 対比に注目:アコースティックなベース音と電子的なノイズが同居する瞬間を拾うと、彼の美学がわかります。
  • 反復と変奏:短いフレーズの微妙な変化(フィルやエフェクト処理)に耳を傾けると、曲の“動き”が鮮明になります。

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参考文献