マイク・ブルームフィールドの生涯と演奏スタイル:シカゴ・ブルースの革新者と名盤ガイド
プロフィール — Mike Bloomfieldとは
Mike Bloomfield(マイク・ブルームフィールド、1943年7月28日生〜1981年2月15日没)は、1960年代アメリカのブルース/ロック・ギターを代表する重要人物の一人です。シカゴのブルースシーンに根ざした演奏感覚と、ジャズやサイケデリックな要素を取り込んだ即興演奏で知られ、仲間のミュージシャンや後進のギタリストから高い評価を受けました。
来歴の概略
- シカゴ時代とブルース修行:シカゴのブルース・シーンで育ち、現地の先達たちに学びながら実力を磨きました。
- Paul Butterfield Blues Band:60年代初頭に結成されたPaul Butterfield Blues Bandに参加し、バンドの音楽性(ホワイト版のシカゴ・ブルースとジャム志向の混交)を牽引しました。
- Bob Dylanとの共演:1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでのボブ・ディランの“エレクトリック”セットに参加し、当時のロック/フォーク界に衝撃を与えました。
- Electric Flagやソロ活動、コラボレーション:Electric Flagの結成や、Al Kooperとの「Super Session」など、ジャンルを横断したプロジェクトで新しいサウンドを模索しました。
- 晩年:音楽的評価は高かったものの私生活では薬物問題などの困難を抱え、1981年に若くしてこの世を去りました。
演奏スタイルと魅力 — なぜ今も聴かれるのか
Bloomfieldの魅力は単なるテクニックの速さや派手さにあるのではなく、"声"のように歌うギター表現にあります。以下のポイントが特に特色的です。
- 歌うフレージング:フレーズはボーカルのように息遣いと間(ま)を大切にし、単音フレーズを通して感情を伝えます。過度に速弾きするのではなく、一本の音を伸ばすことで語る力があります。
- ダイナミクスと空間の使い方:強弱のコントラスト、音の抜き差し(スペース)を効果的に使い、聴き手にドラマを作ります。これにより長時間のソロでも飽きさせません。
- ブルースの語法にジャズ的発想を融合:伝統的なシカゴ・ブルースの語法を踏襲しつつ、モード演奏やジャム的な展開(モーダル・インプロヴィゼーション)を取り入れ、楽曲の枠を越えた即興を可能にしました。代表的なのが「East-West」に見られる長尺インプロヴィゼーションです。
- トーンへのこだわり:柔らかくて深みのあるトーンで知られ、ピッキングの強弱やビブラートが音色形成に大きく寄与しています。機材の派手さに頼らない“指先の表現力”が核心です。
- バンド内での共演力:他のソリストと対話する力に長けており、共演者の音を聴きながら密度の高いインタープレイ(相互演奏)を構築します。
代表作・名盤(入門と深掘りの推薦)
- Paul Butterfield Blues Band – "Paul Butterfield Blues Band"(1965)
デビュー作。シカゴ・ブルースをベースにした迫力ある演奏で、Bloomfieldの若き日のパワーと表現力を知るのに最適です。 - Paul Butterfield Blues Band – "East-West"(1966)
タイトル曲「East-West」は、ロック/ブルースの枠を越えたモーダルなインプロヴィゼーションの先駆け的作品で、Bloomfieldの即興世界がよくわかります。 - Mike Bloomfield & Al Kooper – "Super Session"(1968)
セッション形式のアルバムで、短時間の録音ながら濃密な化学反応が生まれています。ソロ演奏の多彩さと対話的な演奏が楽しめます。 - Electric Flag – "A Long Time Comin’"(1968)
ブルース、ソウル、ジャズを融合したバンドの代表作。Bloomfieldの多様な音楽志向とアンサンブル志向を味わえます。 - 編集盤/ライブ集
ソロや未発表テイク、ライブを集めた編集盤には、スタジオ盤では見えにくい即興のセンスや発展過程が多数残されています。じっくり探索するのがおすすめです。
影響と評価
Bloomfieldは当時のアメリカ国内だけでなく、英国を含む世界のギタリストたちに影響を与えました。単に“早い/上手い”ではなく、ブルースに根ざした表現力と即興の深さが評価され、多くのミュージシャンから尊敬される“ミュージシャンズ・ミュージシャン”的存在でした。彼のアプローチは後のブルース・ロック/シンガーソングライターのギター表現に少なからぬ影響を及ぼしています。
聴きどころ・楽しみ方の提案
- まずは「歌」を聴くつもりで:速いフレーズの分析よりも、フレーズが何を「語って」いるかを意識して聴くと発見が多いです。
- 対話(インタープレイ)を聴く:コンポジションそのものよりも、ピアノやホーン、他のギターとの掛け合いに耳を傾けると彼の強みがよく分かります。
- 長尺のインプロヴァイズ曲を体験する:「East-West」など、長いソロの流れに身を任せると、彼のダイナミクスやモード感覚が実感できます。
- 時代背景を踏まえる:60年代のブルース再評価運動、フォークからロックへの転換期という文脈で聴くと、彼の“先見性”が際立ちます。
人物像と複雑さ
音楽的には天才と称される一方で、本人は名声や商業的成功に複雑な思いを抱えていました。真剣なブルース研究者であり演奏家でもあったため、メディア受けするスター像とは一線を画していた側面があります。その不器用さや脆さもまた、彼の音楽がもつ生々しさと説得力に繋がっているとも言えるでしょう。
結び — なぜ現代に聴かれるか
Bloomfieldの演奏は時代を超えて響きます。技術だけでなく「感情の語り口」をギターで実現したこと、またブルースという伝統を尊重しながらも自由に拡張した点が、今日の耳にも新鮮に響く理由です。ブルースやロックの歴史を知るため、あるいはギター表現の深さを学ぶために、彼の録音は今なお有益な教科書となっています。
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