87キーボード徹底解説:テンキーレスの基本・歴史・配列比較と賢い選び方・カスタマイズ術
87キーボードとは — 基本定義と歴史的背景
「87キーボード」とは、一般的にテンキーレス(Tenkeyless、略してTKL)と呼ばれるキーボードの一種で、テンキー(数字キーのブロック)を省いたレイアウトのことを指します。フルサイズのキーボード(通常104キーや105キーと呼ばれる)からテンキー部分を取り除いた結果、キー数が約87キーになるため「87キー」と表現されます。主にオフィス用途やゲーム用途で人気があり、マウスとの距離を近づけられるため作業効率や姿勢面での利点があることから普及しました。
87キーが「87」になる理由と配列バリエーション
「87キー」は厳密にはANSI(米国)配列のテンキーレスを基準に数えた表記で、配列やキーボードの配列規格によって総キー数は変動します。たとえば:
- ANSI(US)テンキーレス:一般的に87キーと表記される。
- ISO(欧州)テンキーレス:ISO配列ではエンターキーや左シフト付近のキー形状が異なり、キー数が1つ多くなることがあり、88キーとされる場合がある。
- JIS(日本)配列:日本語配列(JIS)はフルサイズで109キーと表記されることが多く、テンキーレスでもキー数や配置がANSIと異なるため、販売表記が変わる場合がある。
つまり「87キー」という呼称は便宜上の呼び名として使われ、実際のキー数や配列はメーカーや市場向けのローカライズによって異なる点に注意が必要です。
物理サイズとレイアウトの特徴
87キーボードの最大の特徴はテンキーを除くことによる本体横幅の縮小です。一般的な幅はフルサイズよりもおよそ15〜20%小さくなり、デスク上でマウスを操作する際の腕の伸びが短く、肩こりや腕の疲労軽減が期待できます。また、テンキーレスはフルサイズの主要なキー(ファンクションキー、矢印キー、ホーム・エンドなど)を基本的に保持するため、使い勝手とコンパクトさのバランスが良いのが利点です。
87キーと他のコンパクトレイアウトの比較
- 60%(60キー前後):ファンクション列や矢印キーを省略し、さらにコンパクト。持ち運び性は高いが慣れが必要。
- 65%:矢印キーを保持し、ファンクション列をレイヤーで代替するタイプ。コンパクトさと実用性のバランスが良い。
- 75%:物理的にまとまった小型レイアウトで、ファンクションキー行が残ることも多い。
- TKL(87キー):ファンクション行や矢印キー、ナビゲーションキーを維持しつつテンキーを排するため、最も汎用的なコンパクトレイアウトの一つ。
キーキャップ互換性と配列の注意点
87キーを選ぶ際は、キーキャップの互換性に注意が必要です。ANSI、ISO、JISでキーサイズ(特に左シフト、バックスペース、エンター、スペースバー周り)が異なるため、購入するキーキャップセットが自分のキーボード配列に対応しているか確認してください。また、底列(スペースバー周り)のユニット幅(例:6.25U、7Uなど)が異なると市販のキーキャップセットが合わないことがあります。
スイッチ・取り付け方式・機能面の選び方
87キーボードは構成要素の自由度が高く、以下の点を検討して選ぶとよいでしょう。
- スイッチ種類:メカニカル(Cherry MX系、Gateron、Kailhなど)、静電容量無接点(Topre)など。打鍵感と音の好みで選ぶ。
- ホットスワップ基板:はんだ付け不要でスイッチ交換が可能。カスタマイズ性を重視するならホットスワップ対応が便利。
- プレート材質:アルミ、真鍮、FR4などで打鍵感が変わる。剛性や音の好みで選択。
- スタビライザー:CherryスタビやCostarなど、安定性と音に影響。調整やグリスアップで改善可能。
- プログラマビリティ:QMK/VIAなどのファームウェア対応でキー割り当てやマクロを自由に設定できるモデルは利便性が高い。
- 接続方式:有線(USB-C)やBluetoothなどの無線。遅延や安定性を重視するなら有線、デスク周りのすっきり感は無線が有利。
メリット・デメリット(利用シーンからの判断)
メリット:
- デスク上のスペース効率が良く、マウス操作の可動範囲が短くなるため疲労軽減につながる。
- フルサイズより携帯性が高く持ち運びしやすい。
- 多くのキーを保持しているため、慣れれば作業効率を落とさずコンパクトに使える。
デメリット:
- テンキーを常用する会計・データ入力業務などでは不便になる。
- 配列差やキーキャップ互換性の問題で買い替え・カスタマイズ時に手間がかかる場合がある。
- テンキーレス表記でも具体的なキー数・配列はメーカー差があるため、購入前に仕様をよく確認する必要がある。
87キーボードのカスタマイズとコミュニティ
メカニカルキーボード愛好者の間では、87キーボードはカスタムの入門機として人気があります。カスタムではスイッチ交換、プレート変更、吸音材の追加、スタビライザーの改良、キーキャップ替えなど多様な改造が行われ、打鍵感や音質を自分好みに調整できます。QMKやVIAといったオープンソースのキーボードファームウェアは、レイヤーの割り当てやマクロ設定を容易にし、作業効率化やゲーミング用プロファイル作成に役立ちます。
購入時のチェックリスト
- 自分の使用シーン(テンキーの必要性、持ち運び、ゲームか作業か)を明確にする。
- 配列(ANSI/ISO/JIS)とキーキャップ互換性を確認する。
- ホットスワップ対応かはんだ付けか、プログラマビリティ、接続方式を確認する。
- ケース材質や重さ、サイズを確認してデスク環境に合うか検討する。
- レビューや打鍵音のサンプル、メーカーのサポート情報をチェックする。
まとめ
87キーボード(テンキーレス)は、フルサイズの機能性を大きく損なわずにデスク上のスペースを節約できるバランスの良いレイアウトです。配列規格やキー数はメーカーや地域によって差があるため、購入前に仕様を確認することが重要です。ゲーム、プログラミング、一般的なオフィス作業のいずれにも適しており、カスタマイズ性も高いため、初めてメカニカルキーボードを検討する人にも向いています。


