Them(ザム)徹底解説:ベルファスト発ブルース/R&Bとヴァン・モリソンの原点
Them — プロフィールと魅力を深掘り
Them(ザム)は1960年代中盤に北アイルランドのベルファストで結成されたロック/R&Bグループで、のちにソロで不朽の名声を築くヴァン・モリソン(Van Morrison)を擁していたことで広く知られます。生々しいブルース感、荒々しいガレージ的エネルギー、そしてソウルフルかつスピリチュアルなヴォーカル表現が同居する独特のサウンドで、当時のブリティッシュR&Bシーンに強いインパクトを残しました。
プロフィール(要点)
- 結成地・時期:北アイルランド・ベルファスト、1964年ごろ
- 主要メンバー(初期):ヴァン・モリソン(ヴォーカル、ハーモニカ)、ビリー・ハリソン(ギター)、アラン・ヘンダーソン(ベース)、ロニー・ミリングス(ドラム)など
- 代表的プロデューサー:バート・バーンズ(Bert Berns)など(スタジオでのポップ志向の仕事を推進)
- 活動の特色:ブルース/R&B直系のカバーとオリジナル曲の混在、ライブでの長尺即興、荒々しい演奏とソウルフルな歌唱の融合
- 転機:ヴァン・モリソンの脱退(1966年頃)によりメンバー構成が変化し、その後も名前を残して活動が続くが、ピークはヴァン在籍期
サウンドの特徴と魅力
Themの魅力は二つの相反する要素が同時に存在する点にあります。一つはアメリカ南部由来のR&B、ブルースに忠実な“生の力”。もう一つはヴァン・モリソンの声に表れる宗教的/詩的なニュアンスで、荒々しいサウンドの中に深い情感や即興的な語りが混じり合います。
- エネルギー重視の演奏:簡潔なリフとドライブ感のあるリズムで、ライブ感を伴ったダイレクトな迫力がある。
- ヴォーカルの表現力:ヴァンのシャウト、ハスキーなトーン、即興的なフレージングが曲に独自のドラマを与える。
- ブルースとポップの狭間:「Gloria」などのシンプルな3コード・アンセムと、「Here Comes the Night」のようなプロダクション重視のポップ志向曲が同じバンドから出てくる多面性。
- 影響の深さ:後のガレージ・ロック、パンク、オルタナティヴ・ブルース系に及ぶ先駆性。
代表曲・名盤(解説付き)
- Gloria(1964)
シンプルな3コードのリフと繰り返されるタイトルコーラスが特徴のアンセム。コアなガレージ/パンク・バンドに多くカヴァーされたことでも知られ、誰でも歌える反復性と即興での拡張がライブの強みとなった曲です。ヴァンの粗削りで迫力あるヴォーカルが最大の武器。
- Here Comes the Night(1965)
プロデューサーのバート・バーンズによるポップ色の強いアレンジで、大衆的なヒットとなった曲。ストリングスなどの装飾が加わり、バンドのワイルドな側面とは異なる洗練も見せた一曲です。バンドの二面性を象徴します。
- Mystic Eyes(1965)
渦巻くようなリズムと反復的なフレーズ、そして即興的に変化するヴォーカルが織りなす“トランス的”な魅力がある曲。初期のサイケデリック要素の萌芽や、後のヴァンのスピリチュアルな作品への伏線とも言える表現性を含みます。
- Baby, Please Don’t Go(カヴァー)
ブルースの古典を力強くロックに翻案したナンバー。R&Bのルーツを明確に示す選曲で、バンドのブルース性をストレートに伝えます。
- 主要アルバム:
『The Angry Young Them』(1965)および『Them Again』(1966)は、スタジオ録音による代表作群で、初期の荒々しいライブ感とスタジオでの試行(ポップ・アレンジの導入)が並存します。入門にはコンピレーション盤(初期シングル集やアンソロジー)もお薦めです。
ライブとパフォーマンスの魅力
Themはスタジオ録音だけでなくライブでの即興性が大きな魅力でした。長尺のインプロヴィゼーションやヴァンのボーカルによる語り(シャウトや詩的断片)が観客との即時的なコミュニケーションを生み、録音とは異なるダイナミズムを披露しました。この“生の暴力性”と“歌の内面的表現”のミスマッチが、逆に強烈な個性となっています。
影響とレガシー
Themの影響は幅広く、特にガレージ・ロックやパンク、ブルース・ロックの世界に大きな足跡を残しました。「Gloria」はガレージの定番となり、多くのバンドがカヴァーしました。さらに、ヴァン・モリソン自身の後年のソロ作品(ブルース、ジャズ、ゴスペル、フォーク的要素を融合した独自の音楽性)を通じて、Them時代の感性が継承・発展していきます。
Themの聴きどころ(初心者向けアドバイス)
- まずはシングル/代表曲群(Gloria、Here Comes the Night、Mystic Eyes)を聴いてバンドの振幅(荒々しいR&B〜ポップな曲まで)を体感する。
- アルバムでは『The Angry Young Them』『Them Again』を順に聴き、スタジオ作での表現の幅やプロダクションの違いを確かめる。
- ライブ感を求めるなら、初期シングルのB面やライヴ音源の収録されたアンソロジーを探すと、即興性とエネルギーをより強く感じられる。
- ヴァン・モリソンの声と歌い回しに注目:ここにThemの“魂”が凝縮されている。
なぜ今改めてThemを聴くべきか
ロックの原点的なエネルギーと、ソウル/ブルース由来の深い表現が同居するThemの音楽は、簡潔なフックだけでは満足できないリスナーに新たな発見を与えます。また、ヴァン・モリソンの声が放つ感情の強度は、時代を超えて響くものがあり、現代のロック/オルタナティヴの文脈でも響く部分が多いです。原始的なパワーと詩的な感性の“接着点”を知ることで、当時と現在の音楽的系譜をより深く理解できます。
おすすめ入門順(短めプレイリスト)
- Gloria
- Here Comes the Night
- Mystic Eyes
- Baby, Please Don’t Go
- 選り抜きアルバム:『The Angry Young Them』の代表曲群
まとめ
Themは「荒々しいR&B/ブルースの直系」と「歌による内面表現」が同居したバンドであり、ヴァン・モリソン在籍期の音源はロック史における重要なマイルストーンです。シンプルな3コードの衝動から、スタジオでの繊細なアレンジまで、その振り幅の大きさが聴く者に多様な感動を与え続けています。音楽通にもライトリスナーにも、それぞれの角度で楽しめる要素が豊富にあります。
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