Jacob do Bandolimの生涯と名曲 — チョーロを牽引したバンドリンの巨匠

Jacob do Bandolim — プロフィール

Jacob do Bandolim(本名:Jacob Pick Bittencourt、1918年3月14日生〜1969年8月13日没)は、ブラジル・リオデジャネイロ出身のバンドリン(mandolin)奏者、作曲家であり、20世紀中葉のチョーロ(choro)復興を牽引した最重要人物の一人です。シンプルで透明感のある旋律、精緻なアレンジ、そして高い演奏技術を持ち味とし、チョーロのレパートリーに数多くの名曲を残しました。

生涯と活動の概略

リオデジャネイロで生まれ育ったJacobは幼少期から音楽に親しみ、バンドリンを中心に学びました。ラジオ局での演奏や様々な小編成アンサンブルを経て、1950年代〜60年代にかけて名声を確立します。1950年代後半に自身のグループ「Época de Ouro(黄金時代)」を率い、録音・放送を通じて幅広い聴衆にチョーロの魅力を伝えました。

活動は演奏・作曲だけでなく、楽曲の採譜と編曲にも及び、仲間のミュージシャンにも厳しいほどの求心力を発揮しました。1969年に急逝しましたが、その音楽は現在も多くの演奏家やリスナーに受け継がれています。

音楽性・演奏スタイルの深堀り

  • melodic clarity(旋律の明快さ): Jacobの演奏は常に旋律を第一に据えています。音の一つ一つが明瞭に歌い上げられ、聴き手にメロディの「物語」を伝える力があります。

  • 技巧と表現の両立: 高速のパッセージや装飾的なフレーズを使う場面でも、決して機械的にならず、歌心を失いません。右手のピッキング(トレモロ風の高速反復)と左手のスラーやポルタメントを駆使し、声のような表現を生み出します。

  • アンサンブル感覚: Jacobの編成は通常、バンドリンを中心にギター(しばしば7弦ギター)、カヴァキーニョ、パンデイロ等がバランスよく絡みます。彼は個人のソロだけでなく、対旋律や伴奏との対話(ポリフォニー)を重視しました。

  • クラシック的な厳密さと大衆音楽の即興性の融合: Jacobは譜面や練習にこだわることで知られ、「完璧なアンサンブル」を目指しましたが、チョーロ本来のリズム感や即興的なニュアンスも大切にしていました。

  • 作曲面: 旋律志向で親しみやすく、それでいて和声進行や構成に巧みさがあり、短い曲の中に豊かなドラマを凝縮するのが特徴です。

代表曲・名盤の紹介

以下はJacobの代表的な楽曲・録音(原盤や後のコンピレーション化も含む)で、彼の音楽性を理解するうえでの入門盤・必聴曲です。

  • Noites Cariocas — 明快で歌心に溢れる旋律が印象的なチョーロ。多くの奏者にカバーされるスタンダードです。

  • Doce de Coco — 甘く穏やかなテーマと繊細な装飾が特徴。Jacobの作曲センスがよく表れた一曲です。

  • Assanhado — リズミックで元気なナンバー(※編成や録音違いで雰囲気が変わることがあります)。

  • アルバム「Jacob do Bandolim e seu conjunto Época de Ouro」系の録音 — Época de Ouro 名義の録音は、彼の理想とするアンサンブル像を最もよく示しています。オリジナルLPや後年の再発編集盤を探して聴くと、当時の音作りや演奏習慣がよくわかります。

  • コンピレーション/再発盤 — 彼の録音は様々なレーベルから編集盤が出ており、年代別に集められたベスト盤は入門に便利です。

人柄と音楽家としてのこだわり

Jacobは非常に几帳面で熱心に準備をする人物として知られていました。完璧を求めるあまりリハーサルを繰り返し、演奏に妥協を許さない姿勢は周囲にも影響を与えました。一方で、仲間や後進の育成にも力を入れ、彼のスタイルや解釈は多くの奏者に受け継がれています。

影響と継承

Jacobの演奏・作曲はチョーロの「教科書」ともいえる位置づけで、現代の多くのチョーロ奏者(特にバンドリン奏者)に大きな影響を与えています。Hamilton de Holandaをはじめとする現代の名手たちも、技巧と歌心の両立という点でJacobの影響を公言しています。また、Época de Ouro の録音はそのままチョーロの基準音源として扱われることが多く、教室や研究でも頻繁に参照されます。

聴きどころ・楽しみ方のポイント

  • 旋律の「歌わせ方」に注目する:トレモロやクレッシェンド、フレーズの切り方で歌心がどう表現されるかを聴き取ってください。

  • アンサンブル内の対話を味わう:バンドリンが主旋律を取る場面だけでなく、伴奏楽器の対旋律やリズムの変化に注意すると新たな発見があります。

  • 録音年代の違いを比較する:50〜60年代のオリジナル録音と、現代の再演では演奏解釈や音質が異なります。時代ごとのスタイルの変化を見るのも面白いです。

  • 楽譜と耳コピーの両方で学ぶ:Jacobは譜面化(採譜)に力を入れていたため、楽譜で構造を確認しつつ、耳でフレージングを真似ると理解が深まります。

なぜ今も聴かれるのか — Jacobの普遍性

Jacobの音楽は、技巧だけで聴かせるのではなく、明瞭なメロディと抑制された感情表現によって多くの世代に訴えかけます。クラシック的な整合性と大衆音楽の親しみやすさを併せ持つため、専門家にも一般リスナーにも響く普遍性があるのです。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献