デイヴィッド・チューダーのレコードおすすめガイド|Rainforestからケージ演奏まで聴きどころと購入ポイント
はじめに — デイヴィッド・チューダーという存在
デイヴィッド・チューダー(David Tudor, 1926–1996)は、20世紀後半の現代音楽/実験音楽の文脈で最も重要かつ特異な人物の一人です。優れたピアニストとしてジョン・ケージらの数多くの初演を担った一方で、1960年代後半以降は自ら電子的な装置やライブ・エレクトロニクスを用いた作品/インスタレーション制作へと創作の重心を移しました。
この記事の狙い
ここでは「デイヴィッド・チューダーの録音/レコードのおすすめ」を深掘りします。代表的な作品・録音の紹介、各録音を聴く際のポイント、そして購入や探索の際に注目してほしい点を整理します。レコード自体の再生や保管方法の解説は含めません。
チューダーを理解するための主要な聴きどころ
- 演奏家としてのチューダー — 1950〜60年代、彼はジョン・ケージやクリストファー・ウルフ、モートン・フェルドマンらの作品を解釈・初演した名ピアニストでした。楽譜と偶然性、演奏行為そのものを扱う作品群における「実行者(interpreter)」としての重要性を感じ取れます。
- 作曲家/サウンド・アーティストとしてのチューダー — 1968年の「Rainforest」を契機に、増幅や接触マイク、回路を含む機械的・電子的装置を用いたサウンドインスタレーション/ライブ作品に移行しました。音響が物理的に生成・変換される仕組み自体が作品の中心です。
- コラボレーションの精神 — マース・カニングハム(Merce Cunningham)舞踏団や他の前衛作曲家との共同作業を多く行っており、舞台/ダンスとの関係性も重要です。
おすすめレコード(聴く順・目的別)
以下は「まずはこれを聴いてほしい」という観点でのセレクションです。入手しやすさや歴史的価値、チューダーの核心を捉えているかを基準に選びました。
- Rainforest(雨林)関連の録音・記録
1968年に発表された「Rainforest」は、チューダーの転換点とも言える作品群(インスタレーション/パフォーマンス)です。複数バージョンが存在し、物や電子機器を増幅して作る独特の打楽的・雑音的テクスチャを聴くことができます。まずはこのシリーズ(あるいはこれに関するライブ録音・ドキュメント)を探して、チューダーが「音響をどう組み立てたか」を体感してください。
- チューダーが演奏するジョン・ケージ作品の録音
作曲家ジョン・ケージとの長年にわたる協働で、チューダーはケージ作品の代表的実演者となりました。ケージのピアノ曲・電子音楽作品の中でチューダー名義の録音を探すと、1950〜60年代の解釈のあり方、当時の演奏慣習が分かります。演奏者クレジットに“David Tudor”があるケージ録音を中心に聴くのが良いでしょう。
- 初期〜中期のライブ/スタジオ録音(アーカイヴス)
チューダーがピアニストとして活躍した時期のライブ録音(例えば前衛ピアノの演奏会録音)や、70年代以降の電子回路を用いたライブ作品のアーカイヴ盤は、彼の変遷をたどるのに最適です。近年、各種レーベルや音楽アーカイヴから再発された資料音源やライブ収録が出ていますので、まとまったアーカイヴ/コンピレーションをチェックしてください。
- コラボレーション盤(舞踏・ダンスや他作曲家との共演)
マース・カニングハム舞踏団との舞台音楽や、クリストファー・ウルフなど仲間の作曲家との共演録音は、チューダーの音楽が舞台芸術とどのように結びついていたかを示します。映像資料と合わせて聴けるものがあれば、より深く理解できます。
- まとめ的な再発・ボックス(アーカイヴ)
近年は現代音楽系レーベルやアーカイヴが再発を行っており、まとまった解説や楽譜・写真・ドキュメントとともに出ることがあります。こうした再発は、単一盤よりもチューダーの活動全体像をつかむのに有効です。入手の際は解説(ライナーノーツ)の有無を確認してください。
各レコードを聴くときのポイント(音楽的着目点)
- 「音がどこから来ているのか」を聞き分ける:チューダーの後期作品は増幅された物体や回路からの音が中心です。楽器的演奏か装置の作用か、起点を探すと面白いです。
- 「演奏行為の可視化」を想像する:ケージらの作品を弾く際、チューダーの身体・手つき・息づかいが音にどう反映しているかを想像して聴くと、演奏者としての視点が開けます。
- 「時間の捉え方」に注目:彼の音楽は持続や反復、偶然的な変化が重要です。短時間の刺激ではなく、長時間にわたるテクスチャの変化を見るように聴くと気づきが増えます。
- 資料的価値を重視する:音質や録音条件は作品の魅力に直結する一方で、歴史的なドキュメントとしての価値も大きいです。ノイズや雑音も含めて時代の現場を記録したものとして楽しむ姿勢が役立ちます。
購入・探索の実務的アドバイス(探し方・選び方)
- 検索キーワードの例:「David Tudor Rainforest」「David Tudor live」「David Tudor Cage performance」「David Tudor archives」。
- レーベル:ニュー・ワールド(New World)、Mode、Recommended Records(ReR)、HatHut、Sub Rosa 等、実験音楽を扱うレーベルのカタログをチェックすると良い資料に当たることがあります(ただし、各レーベルの在庫や取り扱いは変動します)。
- アーカイブ資料:図書館や大学の音楽資料室、またアーティストの所蔵資料が公開されている場合があります。付随する解説書やノート類は理解を深めます。
- 中古市場/ディスコグラフィ・サイト:Discogsなどで初出情報や異なるプレス情報を確認すると、どういう版があるかが分かります。
聴きどころを深めるための推薦順(初心者向け)
- まずは「Rainforest」関連の音源や資料録音で、チューダーの作家性(音響装置を使った作品)に触れる。
- 次に、チューダーが演奏したケージ作品の録音を聴いて、演奏者としての重要性を確認する。
- 最後に、アーカイヴ的なボックスや共演盤で時系列的に追って、彼の活動の変遷を把握する。
聴くことで広がる視点—なぜチューダーは重要か
チューダーの活動は「演奏」と「装置化」の二軸で展開します。演奏の身体性や解釈が音楽を動かすこと、同時に機械や電気回路が能動的にサウンドを生成することの両者を横断していた点が特異です。現代のサウンドアートやライブエレクトロニクスの多くの方法論は、彼の実践を出発点の一つとして受け継いでいます。
まとめ
デイヴィッド・チューダーのレコード/録音を追うことは、単に「名曲を聴く」以上の体験です。演奏行為、機械的プロセス、舞台芸術との結びつきなど、20世紀後半の音楽と芸術の交差点を探る旅になります。初めは「Rainforest」やケージ演奏録音から入り、アーカイヴや共演録音へと広げていくのがおすすめです。
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参考文献
- David Tudor — Wikipedia
- David Tudor — Discogs(アーティストページ:検索して該当ページを参照してください)
- David Tudor Obituary — The New York Times (1996)
- UbuWeb — 実験音楽/アーカイヴ(関連資料の探索に便利)


