Psychic TVの背景と聴きどころ:初期〜クラブ期までを網羅するレコード入門ガイド
Psychic TV — 知っておきたい背景
Psychic TV(サイキック・ティーヴィー)は、Genesis P‑Orridge(元Throbbing Gristle)とAlex Fergusson を中心に1981年に結成された実験音楽/ポストパンク周辺のプロジェクトです。初期は産業音楽や実験音響、パフォーマンス・アート的な要素が強く、その後80年代後半に入るとアシッド・ハウスやサイケデリック・ポップ、儀礼的・宗教的モチーフの導入など、多彩に音楽性を変化させ続けた点が大きな特徴です。バンドを取り巻くカルト的な思想共同体「Thee Temple ov Psychick Youth(TOPY)」と密接に関わっていたことも、音楽と思想が切り離せない評価を生みました。
おすすめのレコード(選書と聴きどころ)
ここでは時代ごとに聴いておきたい代表作をピックアップし、音楽的特徴、聞くときのポイント、コレクターとして注目すべき面を解説します。購入の際はオリジナル盤/リマスター盤の内容差(ボーナストラック、リマスタリング具合、ライナーノーツの違い)を確認すると良いでしょう。
- Force the Hand of Chance
初期の代表作で、実験音響、サンプル、古典的な歌の断片や宗教的・儀式的要素が混在する大作志向のアルバム。Genesis の思想的主題とポップ/ノイズの混淆を強く感じられる一枚です。
聴きどころ:曲構成のドラマ性、サウンドコラージュの巧みさ。初期PTVの「カルト性」と音楽的野心が凝縮されています。入門としてはやや難度が高いですが、作品世界に没入するとバンド理解が一気に深まります。
- Dreams Less Sweet
前作の延長線上にありつつも、より構成的で「演劇的」な側面が強い作品。ヴォーカル表現やテキスト使いに演劇的演出を感じさせ、実験とポップのバランスが特徴です。
聴きどころ:語り/朗読的パートと楽曲の対比、録音空間の演出。実験性と楽曲性の折り合いを知るのに適しています。
- Jack the Tab — Acid Tablets Volume One
Psychic TV が複数の別名義(架空のアーティスト名)で参加した、アシッド・ハウス/レイヴ黎明期を象徴する編集盤的プロジェクト。1988年前後のダンスミュージックへの転換を示す重要作です。
聴きどころ:初期アシッド・サウンドの実験性、クラブ文化への介入の歴史的重要性。PTVがただの実験バンドにとどまらずシーンに能動的に関与したことがよく分かります。
- Allegory and Self
より「ポップ」な曲作りに踏み込んだ、聴きやすさとPTVの奇異さが同居するアルバム。シンセやストレートなメロディを多用し、バンドの多面性を示す重要な転換点です。
聴きどころ:メロディ重視のトラックと、依然として残る不穏さのマッチング。PTVの“歌もの”を好むリスナーにおすすめ。
- Towards Thee Infinite Beat(編集/コンピレーション)
PTVのダンス寄りのトラックやシングル、リミックスなどを集めたコンピレーション。アシッド〜ハウス期の流れを俯瞰するのに向いています。
聴きどころ:クラブ寄りの編集曲やリミックスで構成され、ダンスフロアとの接点を知るのに最適です。シングル音源のコレクションとしての価値もあります。
- A Pagan Day
より儀礼的・アコースティック寄りの側面を見せる、コアなファン向けの作品群の一つ。スタジオ実験やフィールド録音的な要素が強いです。
聴きどころ:静的で神秘的な空気、歌と音響の距離感。PTVの多彩な顔を知るために有益です。
- Godstar(シングル/関連音源)
Brian Jones を主題にしたシングルで、PTVの比較的分かりやすいポップ性とテーマ性が顕著に出た曲。シングル周りの編集やミックス違いを追うと面白い発見があります。
聴きどころ:メロディとテーマ性、及びシングル文化におけるPTVの位置づけ。コレクター的には45回転盤のバリエーションを探す楽しみもあります。
聴き方の提案と文脈化
入門の順序:まずは「アルバム単位」でバンドの時間軸を追うのがおすすめです。初期の実験期(Force the Hand of Chance/Dreams Less Sweet)→アシッド/クラブ期(Jack the Tab、各種コンピ)→ポップ志向の作品(Allegory and Self)と移ると変化が分かりやすいです。
テキストと思想:歌詞や曲間の語り、サンプリングに思想的な断片(オカルティズムや儀礼思想、社会批評)が多く現れるため、単純に「曲だけ」を聴くのではなく、歌詞やライナーノーツを併せて読むと作品世界が広がります。
編集盤・再発の活用:オリジナルの編集盤やコンピレーションには、時に貴重なミックスや未発表トラックが含まれます。最初に廉価な編集盤や良好なリマスター盤で全体像を掴み、気に入った時点でオリジナル盤や拡張版を狙うのが賢い手です。
コレクター向けの注目ポイント(購入時の目安)
オリジナル盤の価値:初期のLPや7inchはコレクターに人気があり、状態によって価格差が出やすいです。盤やジャケットのバリエーション(色違いジャケット、限定盤インサート等)をチェックしてください。
リマスター/拡張版の利点:近年のリイシューではリマスター音源や詳細なライナー、ボーナストラックが付くことが多く、音質面と資料性の両方で価値があります。ただし、オリジナルの空気感を重視するならファーストプレスを探すのも手です。
パートナー・プロジェクト:Psychic TV 名義以外(Splinter Test、Thee Majesty 等)や、Genesis P‑Orridge のソロワーク・コラボ作品にも名曲や解釈のヒントが眠っています。横断的に聴くことで理解が深まります。
まとめ — なぜ今聴くべきか
Psychic TV は単なるバンドではなく、音楽/思想/パフォーマンスが入り混じる“総合芸術プロジェクト”です。音楽的には実験〜ポップ〜クラブミュージックまで幅広く横断し、80年代から90年代にかけてのサブカルチャーとクラブ文化の橋渡しも行いました。初めて聴く場合は、時代やジャンルごとの代表作を順に追うことで彼らの変遷と多層的な魅力を味わえます。
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参考文献
- Psychic TV — Wikipedia
- Psychic TV — Discogs(ディスコグラフィー)
- Psychic TV — AllMusic(バイオグラフィー/レビュー)
- The Guardian — 関連記事(Genesis P‑Orridge/Psychic TVに関する記事を検索してください)


