Chrome(クローム)— 1970年代サイケ/ノイズロックの先駆者と名盤解説
Chrome — 概要とコラムの導入
Chrome(クローム)は、1970年代後半にサンフランシスコで結成された実験的ロック/ポストパンク/サイケデリックの境界を横断するバンドです。中心人物だったデイモン・エッジ(Damon Edge)とギタリストのヘリオス・クリード(Helios Creed)による独自の音響実験と過剰なエフェクト処理、工業的で冷たい美学が特徴で、当時のパンク、ニューウェーブ、後のインダストリアル/ノイズ/サイケデリック・ロックに強い影響を与えました。本稿では、Chromeのプロフィール、音楽的魅力、代表作の解説、そして今日リスナーが彼らに惹きつけられる理由までを深掘りします。
結成と歴史の概略
- 結成と初期:1975年ごろに結成。デイモン・エッジが中心となり、1970年代末のサンフランシスコのサイケデリック/アンダーグラウンド・シーンで活動を開始しました。
- 重要な時期:1977年〜1980年代初頭にかけて、アルバム『Alien Soundtracks』(1977)や『Half Machine Lip Moves』(1979)などを発表し、独特のサウンドとヴィジュアルで注目を集めました。
- メンバーと変遷:デイモン・エッジとヘリオス・クリードのコアを軸にメンバーは流動的でした。のちにヘリオスはソロで活動を続け、Chromeの名前は断続的に使われました。
サウンドの特徴と実験性
Chromeの音楽は「ギター・ロック+電子的処理」という単純な組合せを超え、以下の要素で独自性を発揮します。
- 歪んだギターとエフェクト:ヘリオス・クリードのギターはオーバードライブ、ディレイ、フランジャーなどを多用し、金属的で宇宙的なテクスチャーを作り出します。
- 実験的なプロダクション:テープ操作、コラージュ的な編集、ノイズの導入など、伝統的ロックの枠を壊すプロダクション技法が随所に見られます。
- 機械的・冷たい美学:歌詞やサウンドは近未来的・機械文明的なモチーフを持ち、ポスト工業社会への不安や異化感を演出します。
- ジャンル横断性:パンク直系の荒々しさ、サイケデリックな反復、インダストリアルの先駆的要素、さらにはサイコロック的な感性が混ざり合っています。
主要メンバーと役割
- デイモン・エッジ(Damon Edge):創設者でありプロデューサー的存在。実験的なスタジオ作業とコンセプトを牽引しました。
- ヘリオス・クリード(Helios Creed):独特のギタースタイルとヴォーカルでバンドの顔となった人物。後にソロ活動でさらに異彩を放ちます。
- その他の協力者:ベースやドラム、キーボードの演奏者は時期によって入れ替わり、各作品ごとに微妙に異なる音像を生み出しました。
代表作と聴きどころ(アルバム/楽曲解説)
- 『Alien Soundtracks』(1977)
初期の名作。サイケデリックなノイズとコラージュ的手法を導入し、後の作品の方向性を示した重要作です。サウンドコラージュやエフェクトの多用で「映画のサウンドトラックのような」錯覚を与えます。
- 『Half Machine Lip Moves』(1979)
Chromeの代表作として最も広く評価されるアルバム。ヘリオス・クリードのギターと工業的リズム、冷たい歌唱が結実した傑作で、ポストパンクやインダストリアルへの影響が顕著です。トラックごとの緊張感とループ的な反復が強烈です。
- 『Blood on the Moon』(1981)
よりダークで分厚い音像を提示。実験性とロックの骨格が混ざり合い、Chrome流“重厚なサイケデリック”を聴かせます。
- 注目トラック:
- “Alien Soundtracks”系の曲群:コラージュ感やSF的イメージが濃厚。
- “Half Machine Lip Moves”収録曲:ヘリオスのギターフレーズと反復的リズムが耳に残ります。
Chrome の魅力 — なぜ聴き続けられるのか
- 時代を先取りした音像:彼らの実験は、当時の主流音楽とは一線を画しており、後のインダストリアルやノイズロック、アヴァンギャルド・ロックの重要な源流となりました。
- 視覚的・哲学的な世界観:アルバムアートや曲タイトル、歌詞に見られる「未来観」「機械観」が強烈で、音だけでなく世界観全体として楽しめます。
- 即興性と緻密なプロダクションの両立:生々しい即興的ノイズと緻密なテープ/エフェクト処理が共存しており、聴くたびに新たな発見があります。
- ギターと電子処理の独自解釈:ヘリオス・クリードのギターはエフェクトを通した「声」のようで、従来のギターロックファンにも新たな発見を与えます。
影響とレガシー
Chromeの音楽は、Nine Inch NailsやMinistryといったインダストリアル系や、My Bloody Valentineのようなシューゲイズ的なサウンド、さらにはノイズ/実験ロックの諸作家にまで影響を与えています。アンダーグラウンドのシーンでの評価は高く、再発やリイシューによって新しい世代にも発見され続けています。
聴き方の提案(初心者向け)
- まずは『Half Machine Lip Moves』を通しで聴いて、ヘリオスのギターとバンドのテンションを体感する。
- 次に『Alien Soundtracks』でコラージュ的/サイケ的な側面を確認する。
- 曲ごとに音の層やエフェクトをヘッドフォンで注意深く聴くと、新たなディテールが見えてきます。
現代における再評価ポイント
- デジタル加工が当たり前となった現代でも、アナログ的なテープワークと手作業的なノイズ処理の“温度”は独自の魅力を保持しています。
- ジャンルの壁が薄くなった現在、Chromeのような横断的アプローチがより受け入れられやすく、コラボレーションやサンプリングの対象としても価値があります。
まとめ
Chromeは単なる「変わったバンド」ではなく、音の可能性を拡張した先駆者です。エフェクトによるギター改造、テープ編集、機械的美学など、彼らが打ち出したアイデアは現在の様々な音楽ジャンルに息づいています。初めて聴く際は代表作から入って世界観を掴み、繰り返し聴くことで隠れたテクスチャーや実験的工夫を楽しんでください。
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参考文献
- Chrome (band) — Wikipedia
- Chrome — Biography & History | AllMusic
- Chrome — Trouser Press
- Chrome — Discogs


