アレッサンドロ・ボンチを聴く完全ガイド:再発盤のおすすめとベルカントの魅力

序章 — アレッサンドロ・ボンチとは

アレッサンドロ・ボンチ(Alessandro Bonci, 1870–1940)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイタリアの抒情(リリコ)テノールです。美しいレガート、透明感のある高音、装飾を生かしたベルカント唱法で知られ、当時の「歌の美しさ」を代表する歌手の一人とされています。レコードは主に音響(アコースティック)録音時代のもので、音質は当時の限界を反映しますが、その歌唱様式や表現は現代に残る貴重な資料です。

コラムの目的と前提

ここでは「ボンチを聴くならまずこれ!」というおすすめレコード(現代のCD/配信で手に入る再発盤)を中心に、各盤がなぜ価値あるか、どのような曲・演奏を聴けるかを深掘りします。レコード自体の保管や再生機器の話は扱わず、歌手・録音内容と選び方に焦点を当てます。

おすすめ再発盤(総合コンピレーション)

  • 歴史的全集(Complete/Collected Recordings の類)

    ボンチの録音は多数が断片的に残っているため、まずは「全集」や主要録音をまとめたコンピレーションを手に入れることをおすすめします。こうした全集には、フォンティピア(Fonotipia)、コロンビア、エジソンなど当時の主要レーベルでのアコースティック録音が網羅されていることが多く、代表的なアリアやカヴァティーナ、重唱などを一通り聴けます。

    おすすめ理由:音色の一貫性やスタイルの変遷(若年期〜成熟期)が分かること、複数現存テイクを比較できること。

  • 選曲が良い入門編集盤(ベスト/ハイライト集)

    全集が手に入りにくい場合は、編集された「ベスト盤」や「ゴールデン・エイジ・テノール集」に収録されたものから入るのが取り組みやすいです。こうした盤は音質の良いテイクや名唱とされるトラックを厳選しており、初めて聴く際のハードルが低くなります。

    おすすめ理由:短時間でボンチの良さ(レガート、装飾、語りかけるようなフレージング)を掴める。

  • レーベル別の再発(Marston / Preiser / Naxos 等)

    歴史的音源の再発に定評のあるレーベルが手がけたものは、音質補正や詳細な解説(歌唱年・伴奏者情報・録音状況など)が付くことが多く、研究的な価値も高いです。特にMarstonやPreiser、Naxos Historicシリーズのようなレーベルは注目に値します。

    おすすめ理由:信頼できる音質改善と注釈、入手性。

代表曲・聴きどころ(録音で聴くべきレパートリー)

  • ベルカントのアリア群(ドニゼッティ、ロッシーニ、ベッリーニ)

    ボンチはベルカントのレパートリーを得意とし、柔らかく伸びるレガートと装飾の扱いが魅力です。以下のような曲は彼の美点がよく出ます。

    • 「Una furtiva lagrima」(ドニゼッティ『愛の妙薬』)— 感情の込め方と線の美しさを確認するのに最適。
    • ロッシーニの華やかなアリア群 — 軽やかなパッセージと装飾の精緻さを堪能できる。
    • ベッリーニの長いフレーズ — レガートと発声の安定感がよく見える。
  • オペラのカヴァティーナや小品

    短めのカヴァティーナや歌曲的な小品では、ボンチの「語るような」歌い方が際立ちます。アコースティック録音の限界で余計なオーケストラ効果がないため、声そのものの色彩がよく分かります。

  • 重唱・アンサンブル

    録音の中には共演者と残した重唱があり、対話的な表現を見る上で興味深いです。他の当時の歌手と比べてフレージングやテンポ感を比較する材料にもなります。

各盤の“聴きどころ”ガイド(具体的に何を聞き分けるか)

  • 発声の質感 — 「声の銀色感」「上声域の伸び」を聴く。高音が刺さらず伸びるかどうかを確認。

  • フレージングと呼吸の処理 — 長いレガート句でどこで息を入れているか、語尾の処理を聴き取る。

  • 装飾(アジリタ)とその扱い — 装飾音が装飾そのものに終わっていないか、歌の中に自然に溶け込んでいるか。

  • 表情付け(ダイナミクス) — アコースティック期は録音のダイナミクス幅が圧縮されやすいが、それでも歌い手のイントネーションや抑揚は聴き取れる。細やかなニュアンスに注目する。

初心者への聴き方アドバイス

  • まずは短い編集盤で代表曲を2〜3トラック聴いてスタイルに慣れる。
  • その後、全集や年代順の再発盤で初期〜成熟期の変化(声の安定感、歌い回しの成熟)を追うと、歌手像が立体的に見えてくる。
  • 同時代の他テノール(カルーソや他のベルカント系歌手)と比較すると、ボンチ独自の「透明で柔らかい声」の特徴がより際立つ。

具体的に購入・視聴を探すときのヒント

  • ストリーミング:Naxos Music Library や一部の主要サービスで歴史的録音が配信されていることがある。
  • CD:Marston、Preiser、Naxos Historical といったレーベルの再発を探すと良い。盤によっては解説(英日)が充実しているので選定に役立つ。
  • 詳細なディスコグラフィ:Discogs や大型図書館の音楽資料データベースでオリジナル盤・再発盤両方の情報をチェックする。

まとめ — ボンチを聴く価値

ボンチは「当時の歌の美しさ」を最も純粋に残した歌手の一人です。録音の音質的制約を踏まえつつも、彼のレガート、装飾、そして語りかけるような表現は今日でも十分に楽しめます。まずは編集盤で入門し、興味が湧いたら全集やレーベル再発で深掘りする──この流れが最も効率的です。

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参考文献