アウレリアーノ・ペルティーレの生涯とレパートリー|ヴェルディ・プッチーニ・ヴェリズモを彩る劇的テノール
プロフィール
Aureliano Pertile(アウレリアーノ・ペルティーレ、1885年生—1952年没)は、20世紀前半に活躍したイタリアのテノール歌手です。生誕地はヴェネト地方(モンタニャーナなどとして記されることが多い)で、1910年代から1940年代にかけてイタリア国内外の主要歌劇場で主演を務め、特にヴェルディやプッチーニ、ヴェリズモ(ヴェリズモ歌劇)系のレパートリーで高い評価を得ました。声の迫力と表現力、役柄への即物的な没入が特徴で、録音にも多数残しているため、実演を聴くことが難しい現代でもその歌唱の魅力を直接感じ取ることができます。
略歴の要点
- 出身・教育:イタリア北部で生まれ、現地で声楽を学びプロとしての活動を開始。
- 活躍期:主に1910年代から1940年代にかけて、イタリアの主要歌劇場や欧米の舞台で活躍。
- 代表的な舞台:ミラノの主要劇場(ラ・スカラ等)や南米・欧州の著名なオペラハウスでの出演歴が知られる。
- 録音:電気録音期に多くのアリアや場面を残しており、歴史的名唱としてリリース/再発されている。
声質と歌唱スタイル
Pertileの声は「劇的な色合い」を持つバリトン寄りのテノールという評が多く、豊かな中低域、暗めで厚みのある音色、そして十分な推進力を備えていました。高域がきらびやかに響くタイプではなく、音色の一貫性(同じ音色でレンジを貫く感覚)と表現力で聴衆を惹きつけます。
歌唱スタイルは以下の特徴を示します:
- 強いデクラマツィオーネ(台詞的な語り)の表現力:台詞的・劇的表現を大切にし、役の心理や瞬間の感情を重視する歌い方。
- しなやかなレガートと部分的なポルタメント:意図的に音と音を繋げて自然な流れを作るが、劇的場面では張りのある発声で切り替える。
- 語音明瞭さ:イタリア語の語尾や子音処理が明瞭で、台詞の意味を伝える力が高い。
- 舞台表現力:声だけでなく演技的な表現にも説得力があり、視覚的な表現がなくても演技の輪郭が浮かぶ。
レパートリーと代表的な役・アリア
Pertileはヴェルディとプッチーニ、さらにヴェリズモの作品を中心とした重心のあるテノール・レパートリーで知られています。典型的な役どころと聴きどころは次の通りです。
- ヴェルディ系:オテロ(Otello)、マンリコ(Il trovatore)やラダメス(Aida)など、ドラマ性と英雄性を求められる役。
- プッチーニ系:カヴァラドッシ(Tosca)、カラフ(Turandot)やラ・ボエームのロドルフォのような典型的プッチーニ・テノールもレパートリーの中心にあった。
- ヴェリズモ系:カニオ(Pagliacci)やトゥリッドゥ(Cavalleria rusticana)など、感情の露出が激しい役。
- 代表アリア(聴きどころ例):"E lucevan le stelle"(Tosca)、"Vesti la giubba"(Pagliacci)、ヴェルディの有名アリア群など。これらで見られる感情の立ち上がりと押し引きは彼の魅力を象徴する。
Pertileの魅力を深掘りする—聴き手に響くポイント
- 「声の物語性」:単に美声を聴かせるのではなく、台詞を語るように感情の細部を描写するため、ドラマの一場面をそのまま切り取ったような説得力がある。
- 音色の厚みと人間味:透明さやきらびやかさよりも「人間的な重量感」と「声に宿る人生の経験」を感じさせる響きが、ヴェルディやヴェリズモの重い感情にマッチする。
- ダイナミクスの扱い:大声で畳み掛けるところと、内省的に弱音で語るところの使い分けが巧みで、聴く側を場面の中に引き込む。
- 時代感と録音の魅力:当時の録音技術の制約を超えて、声の質感や個性が生々しく伝わる点も大きな聴取上の魅力。歴史的音源から当時の演奏習慣や表現のあり方を学ぶことができる。
聴きどころと鑑賞のヒント
- 台詞的な部分に注目する:ここの間(ま)や強弱のつけ方で役柄の心理が立ち上がる。単なる「声の美しさ」以上の表現が聴き取れる。
- 中低域のエネルギーを感じる:高音だけで盛り上げるタイプではないため、胸に響く低音からの積み上げを見ると理解が深まる。
- 他の時代のテノールと比較する:例えば同時代のもっとリリカルなテノール(Gigliなど)と聴き比べると、Pertileの「劇的・生々しい」個性が際立つ。
- 録音コンディションを考慮する:歴史的録音特有の周波数特性やノイズがあるため、現代の録音のような「音の明瞭さ」は期待できないが、表現の核は十分に伝わる。
おすすめの録音・入門ポイント
Pertileの録音は戦間期から戦後直後にかけての電気録音が中心で、断片的なアリア集や場面集、時にはオペラ全曲の録音も含まれます。初めて聴くなら以下の視点で集めると良いでしょう。
- アリア集(代表アリアを集めた編集盤)で歌唱の「特徴」を掴む。
- 特定の役(一人の演者としてのドラマ)を通して聴くと、演技的変化や役作りの方法がわかりやすい。
- 解説書付きの再発CD/デジタル配信(専門家の注釈があるもの)を選ぶと、当時の背景や録音状況が理解しやすい。
まとめ
Aureliano Pertileは、20世紀前半のイタリア・オペラ界において「役を生きる」タイプの劇的テノールとして強く記憶される存在です。声の美しさだけを追う現代の耳にとって、彼の歌唱は力強く生々しい「人間の声のドラマ」を伝えます。ヴェルディやプッチーニ、ヴェリズモ作品の感情的な核心を聴きたい人には、まず聴く価値の高い歌手です。歴史的録音を通して当時の演劇感覚や表現の在り方を学ぶこともでき、オペラ研究や歌唱表現の比較学習にも大いに役立ちます。
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