アウレリアーノ・ペルティーレの名盤ガイド:聴くべき録音とドラマティック・テノールの魅力

アウレリアーノ・ペルティーレとは

アウレリアーノ・ペルティーレ(Aureliano Pertile、1885–1952)は20世紀前半を代表するイタリアのドラマティック・テノールの一人です。ラ・スカラをはじめとする主要劇場で活躍し、ヴェルディやプッチーニ、そしてベルカントとヴェリズモの接点に位置するレパートリーで高い評価を得ました。力強い声の芯(squillo)と表現力豊かなレガート、そして感情を前面に出す歌唱スタイルが特徴で、当時の指揮者や同僚歌手からも厚い信頼を受けました。

なぜペルティーレのレコードを聴くべきか

  • 歴史的歌唱スタイルを現代に伝える資料価値:ヴェリズモ歌唱の実践例として、当時の発声・フレージングを学べます。
  • ドラマティック・レパートリーの解釈の豊かさ:声の色彩とダイナミクスで物語性を作る技術は、今でも学ぶべき点が多いです。
  • 希少録音の魅力:初期電気録音〜戦間期の録音には独特の音響があり、復刻盤で聴くと当時の空気感が感じられます。

おすすめレコード(入門〜コレクター向け)

ここでは具体的な「盤(タイトル)」というより、探すべき録音群と代表曲、そして選び方のポイントを中心に紹介します。歴史的録音はリイシュー(復刻)ごとに音質や解説が異なるため、購入時の目安になります。

  • 代表的アリア集(初級~入門)

    ペルティーレの代表アリアをコンパイルした編集盤は、まず聴くのに最適です。以下の曲を必ずチェックしてください:

    • 「E lucevan le stelle」(トスカ/Cavaradossi)— 情感の深さとレガートの美しさがよくわかります。
    • 「Vesti la giubba」(道化師/Canio)— ドラマ性、表情の転換が光る一曲。
    • 「Celeste Aida」(アイーダ/Radamès)— ヴェルディ・テノールとしての雄大さを感じられます。
    • 「Un dì all'azzurro spazio」(アンドレア・シェニエ)— 劇的クライマックスの歌い回しを堪能できます。
  • 時代別・レーベル別コンピレーション(中級)

    1920年代〜1930年代のスタジオ録音群(HMV/Columbiaなどの当時の大手レーベル音源)を集めた復刻盤。マスト・トラックは上記アリア群に加え、共演者や指揮者との対話的歌唱が味わえる条目を探してください。リマスターの質が鑑賞体験を大きく左右します。

  • ボックスセット/完全録音(上級・コレクター向け)

    全録音やスタジオセッションを網羅したボックスは、テイク違いや未発表録音、詳細な解説書が付くことが多く研究用途に最適。音質復刻(ノイズ除去やEQ処理)が信頼できるメーカーのものを選びましょう(専門レーベルの復刻シリーズがおすすめ)。

  • ライヴ/放送録音(興味深い史料)

    オペラの全曲録音は稀ですが、劇場での放送録音やコンサート録音が残っている場合があります。当時の舞台上でのリアルなドラマ性や、会場音響の影響を知る上で有益です。ただし音質はスタジオ録音より変動が大きい点に注意。

各代表曲・名盤の聴きどころと深堀り

以下はペルティーレを聴く際に注目してほしい技術的・音楽的ポイントです。曲ごとに何を聴き分けると理解が深まるかを示します。

  • E lucevan le stelle(トスカ)

    テンポ感の扱いと歌詞の語り方。弱音でのコントロール、終始変わらない情感の持続。アゴーギク(微妙な遅らせ)やポルタメントの使い方に注目すると、彼の表現美が明瞭になります。

  • Vesti la giubba(道化師)

    劇的な「見せ場」でありながら、内面の壊れやすさをどう声の色で表現するかが鍵。大きな声の“張り”だけでなく、繊細な断続音の間に人間的な弱さを込める手法に耳を傾けてください。

  • Celeste Aida(アイーダ)

    ヴェルディ的なフレージングと呼吸配分を学べます。長いフレーズの中で声を保ちつつ高音へ運ぶテクニック、そしてドラマ全体のバランス感覚は若手歌手にも示唆を与えます。

  • Un dì all'azzurro spazio(アンドレア・シェニエ)

    英雄的情感と個人の感情の二重性をどう表現するか。急激なダイナミックの変化や、クライマックスでの息づかいの使い方に注目すると、ペルティーレのドラマトゥルギーが浮かび上がります。

録音を選ぶときの実務的アドバイス(購入・試聴の観点)

  • 復刻盤は「マスターの復元」をどのように行っているか解説を確認する。ノイズ除去で高域が失われている場合があるので、サンプル視聴を推奨。
  • ライナー・ノート(解説書)の専門性も重要。演奏史的背景や録音ログ(セッション日、共演者、テイク情報)が詳しい盤は学術的価値が高い。
  • 複数盤を聴き比べると違いが分かる。編集盤と完全盤(オリジナル・テイクを丸ごと収めたもの)を比較すると、編集者の意図・現代の聴取基準の違いが分かります。
  • ストリーミングでまず探して様子を見るのも手。まとまったアンソロジーがあれば雰囲気を掴みやすいです。

聴き方の提案(体験を深めるために)

  • 歌詞(イタリア語)と対訳を用意して聴く。意味を追いながら聴くとペルティーレの語りの深さがよく分かります。
  • 同時代の他テノール(例:ティート・スコッタ?、ベッリーニの解釈など)と比較することで、声質・解釈の個性が鮮明になります。
  • ライブ録音とスタジオ録音を比べて、舞台上での即興性や観客反応の取り込み方を体感するのもお勧めです。

まとめ

アウレリアーノ・ペルティーレは、20世紀前半のオペラ表現を学ぶ上で欠かせない存在です。代表アリアの名唱を通じて、ヴェリズモとドラマティック・テノールの特質を体感できるでしょう。まずは良質なコンピレーションで耳を慣らし、興味が湧いたらボックスセットや放送録音へと進むと、彼の全体像が見えてきます。

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参考文献