シャリアピンをレコードで聴く――名盤の選び方と聴きどころ、演技する歌の歴史を辿る

序文 — シャリアピンをレコードで聴く意味

フェオドル・シャリアピン(Feodor Chaliapin, 1873–1938)は、20世紀初頭のオペラ界を代表するロシアのバス歌手です。単に低音の響きを持つだけでなく、演劇的な表現力と台詞的な歌唱(話すように歌う表現)で役を造形した点が特に評価されています。78回転時代から電気録音期にかけて多数の録音を残したため、レコードで彼の芸術をたどることは、声そのものだけでなく歴史的演奏表現の変遷を味わうことでもあります。

おすすめレコードの選び方(概論)

  • 入門レベル:多くの名曲・代表的場面を集めたアンソロジー(コンピレーションLP/再発LP)。多様な録音年代を一度に比較できます。
  • 役・場面重視:「ボリス・ゴドゥノフ(Boris Godunov)」の抜粋や有名アリア・場面集。シャリアピンの代表役を俯瞰できます。
  • 録音年代別に聴く:初期のアコースティック録音(1900年代〜1920年代)と、電気録音(1920〜1930年代)では音質だけでなく歌唱のアプローチにも違いが出ます。好みや比較目的で選ぶと面白い。
  • レーベルをチェック:EMI/HMV、Melodiya(ソビエト録音の再発が多い)、Preiser、Testament、Naxos Historicalなど、歴史的録音の再発に定評のあるレーベルを探すと発掘しやすいです。

個別おすすめレコード(代表作・名盤)

1) 入門コンピレーション(アンソロジーLP)

まずは詰め合わせ的なアルバムでシャリアピンの「色」をつかみましょう。多くのアンソロジー盤には「歌の芸術」「ロシア民謡」「オペラ抜粋」などが混在し、彼の多面的な魅力を短時間で体験できます。モノラル録音が主体ですが、彼の語りかけるような表現や語尾の処理などがよく聴き取れます。

2) ボリス・ゴドゥノフ(抜粋/場面集)

シャリアピンを語る上で欠かせないのが「ボリス・ゴドゥノフ」。舞台上での演技力と語りの技巧がそのまま音楽に反映される役で、レコードでは「王の独白」「民謡的合唱場面」などが名摘出されています。オペラ全曲の完全録音は少ないものの、抜粋LPでの断片でも強烈な印象を残します。

3) ロシア民謡・歌曲集(リサイタル盤)

「ヴォルガの舟歌」「民謡」など、シャリアピンのレパートリーにあるロシア民謡は彼の表現力を純粋に示すものです。語り・抑揚・語感の良さが際立ち、舞台上の大袈裟さとは違った親密な魅力を見せます。こうした曲をまとめたLPは、シャリアピンの「素顔」に近い表現を伝えてくれます。

4) フランス語・イタリア語・ドイツ語のアリア集

シャリアピンはロシア語だけでなく西欧言語のアリアも歌っており、これらを集めた盤は彼の語学的な抑揚の付け方や役作りの普遍性を理解するのに適しています。特にフランス・イタリア・ドイツ作品での演技的歌唱は、同時代の他の歌手と比べても異彩を放ちます。

5) 初期アコースティック録音集(歴史的価値重視)

1900年代から1920年代のアコースティック録音は音質的には制約が大きいものの、声の色合いや語り口を原初的に伝えます。演奏史的価値が高く、研究的に聴くのに向いています。オリジナルの78回転盤を集めるのは高度な収集になりますが、再発LPや後年のリマスター盤で比較的手に入ります。

各レコードで注目すべき聴きどころ(楽曲別・場面別)

  • ボリスの独白・独壇場:声の重心、語りのテンポ感、語尾の処理。役の内面を作るための「間」の取り方に注目。
  • ロシア民謡:語りかけるようなイントネーション、母語ならではのリズム感。演劇性よりも人間味が前面に出る。
  • オペラ・アリア:台詞的なフレージングと長いフレーズの扱い。ピッチよりも表現に重心を置く傾向があるため、当時の演劇的習慣を感じ取れる。
  • 合唱伴奏の場面:合唱とのバランスで声がどのように立ち上がるか。録音技術の違いが見えやすい。

盤の探し方・購入のヒント(録音情報の読み方)

  • 盤のクレジットで録音年とレーベルを確認する。1900年代初頭はアコースティック、1925年以降は電気録音が主流です。
  • 再発LPのライナーノーツには録音年・場所・編成が詳述されていることが多い。歴史的録音では注釈が重要です。
  • レーベル名(EMI/HMV、Melodiya、Preiser、Testament、Naxos Historical など)で絞ると、まとまった品質の再発に当たりやすいです。
  • オリジナル78回転盤はコレクター市場で希少価値が高い。一方、後年のLPやリマスタリング再発で音質面の利便性が高まっています。

聴き方の提案(深堀りのための順序)

  • まずはアンソロジーで「シャリアピンの顔」をつかむ。
  • 次に「ボリス・ゴドゥノフ」の場面集やロシア民謡集で代表的表現を掴む。
  • 初期録音(アコースティック)と電気録音を比較し、彼の発声・表現の変化をたどる。
  • 言語別・作曲家別に聴き比べ、役作りの普遍性と変化を探る。

購入・コレクション時の注意点(音質以外)

  • 再発盤は編集・曲順がオリジナルと異なる場合があるため、曲目表を確認する。
  • ライナーノーツの有無や解説の信頼性も選択基準になる。歴史的録音の背景解説が充実している盤を選ぶと理解が深まる。
  • 同じ曲目でもマスタリングや音源選択で印象が大きく変わるため、複数盤を聴き比べると新たな発見がある。

まとめ:シャリアピンの「演技する歌」をレコードで味わう

シャリアピンは「歌うこと=演じること」を体現した歌手です。レコードで彼を聴くことは、かつての舞台表現や声の造詣を時間を超えて体験することにほかなりません。まずは手頃なアンソロジー盤から始め、気に入った場面や役についてより深い個別盤に進む。録音年代の違いを比較することで、演奏史的な面白さも広がります。

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参考文献