Monteverdi ChoirとEnglish Baroque Soloistsを聴く:HIP時代の古楽名盤ガイドとレコード選びのコツ
序文:Monteverdi Choir と English Baroque Soloists の魅力
Monteverdi Choir と English Baroque Soloists(以下「両団体」)は、指揮者ジョン・エリオット・ガーディナー(Sir John Eliot Gardiner)を中心に発展した歌と器楽のアンサンブルです。歴史的演奏法(HIP:Historically Informed Performance)の潮流を牽引し、バロックから初期古典派、さらにはモンテヴェルディやバッハの声楽作品において、精緻で表現豊かな演奏を繰り広げてきました。本コラムでは、レコード(主にLP/アナログ盤を念頭に)で入手・鑑賞するのに特におすすめの名盤をピックアップし、各盤の聴きどころや選び方のポイントを深掘りします。
両団体を聴く際に押さえておきたい特徴
- 歴史的演奏法の実践:古楽器に基づく音色、テンポ感、装飾の扱いで、作曲当時の音響や語り口を復元しようとする姿勢が貫かれています。
- テクスチャの明晰さ:合唱と器楽のバランスが緻密で、対位法や重唱の線が立体的に浮かび上がります。ポリフォニー作品の"聞き分け"がしやすい演奏が多いです。
- ドラマ性と語り口:ガーディナーの歌唱指示は「語る」ことを重視します。強弱やアゴーギク(テンポの揺れ)を効果的に使い、テキストへの感情移入が深いです。
- ソリストのレベル:国内外のトップ古楽歌手や器楽奏者が参加しており、ソロ・アリアや小重唱の完成度が高い点も魅力です。
おすすめレコード(名盤セレクション)
以下はジャンル別に特におすすめしたい盤です。各作品について「どこが聴きどころか」「どんなリスナーに向くか」を合わせて解説します。
Monteverdi — Vespro della Beata Vergine (Vespers 1610)
おすすめポイント:モンテヴェルディの傑作《ローマ風の晩課》を、モダンな感性と歴史的演奏法の両立で聴かせる名録音。合唱の明瞭さ、器楽の色彩感、コラールとソロの対比が非常に効果的です。
聴きどころ:マドリガル的な室内的表現から荘厳な合唱までの幅、チャント風のパートと器楽的な部分のつなぎ、ソプラノやカウンターテナーのソロの表情。
こんな人に:モンテヴェルディを「物語るように」深く味わいたい人、バロック声楽の表情をじっくり追いたい人。
J.S. Bach — St Matthew Passion(マタイ受難曲)
おすすめポイント:聖劇としてのドラマ性と宗教的な深遠さを両立させた演奏。合唱のコーラス部分は力強く、受難物語を語る福音史家やイエスのソロなどの人物描写が丁寧です。
聴きどころ:コラールの扱い、アリアでの装飾や伴奏群の関係、合唱/オーケストラの対話的な構築。
こんな人に:演劇的な展開と宗教的深度の両方を求めるバッハ・ファンに。
J.S. Bach — Mass in B minor(ミサ曲ロ短調)
おすすめポイント:バッハの宗教曲の集大成を、みずみずしいアンサンブル感と細部の表現でまとめた名演。特に合唱と管弦の対位法の扱いが明快で、アリアの呼吸も自然です。
聴きどころ:クレドやサンクトゥスの迫真性、フーガの輪郭の立ち上がり、ソロのカンタービレの歌い回し。
こんな人に:構築美と歌心の両方を楽しみたいクラシック愛好家に。
Bach Cantata Pilgrimage(バッハ・カンタータ巡礼)— 選りすぐりのカンタータ録音
おすすめポイント:2000年の"カンタータ巡礼"を契機に行われた一連のライヴ録音群は、教会の現場感と即興的な生気を伝えます。全集としては圧倒的な情報量ですが、ハイライト盤をレコードで集めるのも楽しい体験です。
聴きどころ:各カンタータごとに異なる表現アプローチ、楽器編成の多様性、リートや合唱の短い場面での語り口の濃縮。
こんな人に:バッハの小品~中編作品の多彩さを追いたいリスナー、ライブ感を好む人。
Handel — Messiah(メサイア)
おすすめポイント:ヘンデルの代表作を歴史的演奏法で再構築した演奏。合唱のコラール的な迫力と、ソロ・アリアの装飾がバランスよく配され、古楽器の響きが曲の色彩を豊かにします。
聴きどころ:ハレルヤ・コーラスのエネルギー、アリアのアジリタ(技巧)と情感、合唱のハーモニーの透明感。
こんな人に:ヘンデルのドラマ性と合唱の快感を、古楽的サウンドで味わいたい人。
選曲や小品集(マドリガル、モテット、歌曲集など)
おすすめポイント:モンテヴェルディのマドリガル集やバロック小品を集めたアルバムは、短いトラックの中に作曲家の表情が凝縮されており、通して聴くとアンサンブルの細部がよくわかります。
聴きどころ:短い曲ごとの色彩の差、声部間の応答、器楽の細かいフレージング。
こんな人に:小品で多様な表現を味わいたい人、アルバム単位で気軽に古楽に触れたい初心者〜中級者。
レコードで聴く際の具体的な「聴きどころ」ガイド
- 合唱のフォルムを見る:バロック合唱は単に「厚い音」を出すのではなく、テキストごとの語り分けを重視します。コラール部分やコーラスのパッセージで、「語尾の切り方」や「フレージングの始まり」を意識して聴くと、演奏の解釈が見えてきます。
- continuo(通奏低音)の役割:チェンバロ、オルガン、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバなどの低弦群がハーモニーの輪郭を作る様子に注目。伴奏が単なる裏打ちでないことがわかります。
- ソロの装飾と即興性:アリアの終わりやカデンツァ的な箇所での装飾(トリルやパッセージ処理)に耳を傾け、歌手の個性や古楽的解釈を楽しんでください。
- ライブ録音ならではの空間感:カンタータ巡礼などのライヴ録音は、教会空間の残響と演奏の一体感が魅力。ライヴ特有の緊張感やアンサンブルの即時反応を聴き分ける楽しさがあります。
どのプレス(盤)を選ぶか:現実的なアドバイス
- まずは「再発・リマスター盤」を検討:古いオリジナルLPも魅力的ですが、録音のクリアさやノイズ処理を重視するなら近年のリマスター再発が聴きやすいです。
- ライヴかスタジオかを意識する:ライブ録音は現場感と臨場感、スタジオ録音は細部の整合性とバランス感が強み。作品や気分に合わせて選びましょう。
- ボックスセットのコストパフォーマンス:バッハ・カンタータ巡礼のように複数枚組で出ている名盤は、まとめ買いで体系的に楽しめます。アナログの在庫が限られる場合は中古市場をこまめにチェックすると良いです。
- 盤の状態情報をチェック:中古レコードを買う際は盤面やジャケットの状態(VG++以上が望ましい)、プレス情報(オリジナルか再発か)を確認してください。
鑑賞のためのリスニング順の提案
- 初めてなら:まずはモンテヴェルディのVespersで両団体の色を掴む。その後、バッハの小品(カンタータ)→大作(ミサ/受難曲)へ進むと解釈の継続性が感じられます。
- テーマ別に深掘り:教会作品の精神性を求めるなら「Mass / Passion」群、舞曲的・劇的表現を楽しみたいなら「Handel / Monteverdiのマドリガルやオペラ前奏曲集」を選ぶと満足度が高いです。
注意点:解釈の個性について
ガーディナーは強い個性を持つ指揮者です。速めのテンポやリズムの切れ、テキスト重視の表現は賛否が分かれることもあります。複数の指揮者・演奏で聴き比べることで、バッハやモンテヴェルディの多面的な魅力がより深く見えてきます。
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参考文献
- Monteverdi Choir(公式サイト)
- Sir John Eliot Gardiner(公式サイト)
- English Baroque Soloists — Wikipedia
- Monteverdi Choir — Wikipedia
- Soli Deo Gloria(Bach Cantata Pilgrimage 等を扱うレーベル)


