Kronos Quartet(クロノス・カルテット)のおすすめアルバムと聴き方ガイド—現代音楽の最前線を深掘り
イントロダクション — Kronos Quartet を聴く理由
Kronos Quartet(クロノス・カルテット)は1973年にヴァイオリニストのデイヴィッド・ハリントンを中心に結成されて以来、現代音楽・クロスオーバー音楽の最前線を走り続けるストリング・カルテットです。古典的なレパートリーに限らず、現代作曲家への委嘱、民族音楽やポピュラー音楽とのコラボレーション、サウンド・プロジェクトまで幅広く手がけ、そのレパートリーと録音は「室内楽の枠」を大きく広げました。
おすすめレコード(深掘り解説)
Different Trains — Steve Reich(クロノスの代表作のひとつ)
概要:スティーヴ・ライヒ作曲の「Different Trains」は、録音されたスピーチと列車の音(サンプリング)を弦楽四重奏と組み合わせることで、過去と記憶、移動と戦争の対照を描く革新的な作品です。Kronos Quartet による初期の重要な録音(および定番演奏)は、この作品を現代音楽の名作として広める大きな役割を果たしました。
- 聴きどころ:録音された証言(語り手)の抑揚や母音の音色が、楽器のモチーフに直結する点。弦楽器の反復的なパターンが「列車の運行」と記憶のフラッシュバックを同時に提示します。
- なぜ買うべきか:現代音楽における「音と声の融合」の代表例であり、ライヒのミニマル技法がドキュメンタリー的素材とどう結びつくかを体感できます。
- 関連作:Steve Reich の他の作品(Music for 18 Musicians など)や、Kronos が手がける他の現代音楽の録音も併せて聴くと理解が深まります。
Black Angels — George Crumb(劇的で象徴性の強いレパートリー)
概要:ジョージ・クラムの「Black Angels」は、増幅や異素材(打楽器・ガラス板・拡声など)を用いる実験的で劇的な作品。Kronos はこの曲の表現力をストレートに追求した録音で知られ、演奏表現の幅を示す重要な記録となっています。
- 聴きどころ:不協和音、拡声された弓の音、ベルやノイズ的要素が織り成す“儀式的”な緊張感。聴覚上の距離感や空間感に注目すると良いです。
- なぜ買うべきか:20世紀末の前衛室内楽を学ぶうえでの到達点の一つ。演奏技術と表現の過剰さ(意図的な過剰性)が音楽的に説得力を持つ稀有な例です。
- 関連作:他の現代作曲家(Penderecki、Berio など)の弦楽四重奏作品と併せて聴くと、時代と潮流が見えてきます。
Pieces of Africa — Kronos Quartet(クロノスの民族音楽/ワールド音楽接近)
概要:アフリカ各地域の現代作曲家の作品を集めたプロジェクトで、Kronos が持つ「西洋室内楽の技術」と「非西洋的リズム/音色」を結びつけた重要作です。ポストコロニアル的視点や、伝統と現代が交差する瞬間を提示します。
- 聴きどころ:弦楽器による反復リズム、アフリカ的なメロディラインの写し取り、時には現地音楽家との共演が生む化学反応。
- なぜ買うべきか:ワールド・ミュージックと現代クラシックの接点を探る際の代表例。多文化/多様性を音楽的に体感できます。
- 関連作:民族音楽と現代作曲の交差を扱った他のレコード(たとえば Kronos の「Floodplain」など)と並べて聴くと面白いです。
Floodplain — Kronos Quartet(グローバルな曲集)
概要:世界各地の作曲家・伝統音楽を集めて編んだプログラムで、地域横断的なサウンドの対話を意図したアルバムです。Kronos の「多声的」な興味をよく示しています。
- 聴きどころ:各地域の楽器様式や旋法が弦楽四重奏に翻訳される過程。民族的素材の“現代的再解釈”が主題です。
- なぜ買うべきか:多様な音楽文化をまとめて体験できるうえ、カルテットがいかに敏感に他文化のニュアンスを再現するかを楽しめます。
- 関連作:同じく多文化主義を扱った Kronos のアルバム群や、単独の地域を深掘りした録音と比較して聴くと理解が深まります。
Landfall — Kronos Quartet & Laurie Anderson(コラボレーションの名作)
概要:パフォーマンス・アーティストのロリー・アンダーソンとのコラボレーション作品。物語性のある語り、エレクトロニクス、弦楽の結合によって、現代社会や災害、記憶と再生のテーマを描きます。
- 聴きどころ:語りと音楽が交互に凸凹を作る点。アンダーソンの声と四重奏の間の距離感、エレクトロニクスの扱い。
- なぜ買うべきか:クロスオーバー/ポエトリー的表現を好むリスナーに最適。室内楽の「物語化」の一例として興味深いです。
- 関連作:同様の音語り系コラボ(作家・パフォーマーと音楽家の対話)を探す際の起点になります。
Folk Songs — Kronos Quartet(歌ものとの共演集)
概要:伝承歌やフォーク・ソングを様々な歌手とともに編曲/演奏したアルバム。Kronos の「歌を迎え入れる」柔軟さと編曲力が光ります。
- 聴きどころ:歌手ごとに変わる語り口に合わせてカルテットが表情を変える点。伝承メロディを室内楽的に翻案する手法。
- なぜ買うべきか:純粋なインストゥルメンタル作品とは違った情感があり、歌詞や歌い手の個性が音楽を新たにする好例です。
- 関連作:Kronos の他のコラボレーション・アルバムや、フォーク/伝承曲を現代的に編曲した作品群。
補助的に聴くべきアルバム/作曲家
- Steve Reich(Different Trains 以外) — ミニマル音楽の核心が分かります。
- Philip Glass 関連録音 — 極度の反復と色彩感を知るために。
- 現代作曲家(Arvo Pärt、Terry Riley、Osvaldo Golijov など) — Kronos が取り上げてきた作曲家を個別に追うと、カルテットの幅が見えてきます。
聴き方の提案(深掘りのためのガイド)
- 第一次聴取:まず全体を通して雰囲気や印象を掴む。曲の「場面転換」やダイナミクスのレンジに注目。
- 二次聴取:楽曲の構造(反復・変奏・モチーフの発展)を追い、録音で使われている非楽器音(録音素材・エレクトロニクスなど)が曲にどう寄与しているかを観察。
- 比較聴取:同じ作曲家や同じテーマ(民族性、前衛技法、声との融合など)を扱う別録音と比べ、Kronos の解釈の個性を探る。
- 文脈化:作品の作曲年や委嘱背景、初演の状況を調べると、演奏上の選択(強調点や間の取り方など)がより理解できます。
どの盤を選ぶか(初心者向けの優先順位)
- まずは「Different Trains」:Kronos の代表性・革新性がわかりやすい。
- 次に「Pieces of Africa」や「Floodplain」:Kronos の多文化的アプローチを体験。
- さらにコラボレーション作(Landfall、Folk Songsなど):カルテットの柔軟性とポピュラー/前衛の接点を楽しめます。
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参考文献
- Kronos Quartet — 公式ディスコグラフィ
- Different Trains — Wikipedia(Steve Reich)
- Black Angels — Wikipedia(George Crumb)
- Pieces of Africa — Wikipedia(Kronos Quartet)
- Landfall — Wikipedia(Laurie Anderson & Kronos Quartet)


