ブライアン・セッツァーの名盤ガイド:Stray CatsからOrchestraまで、おすすめアルバムと聴き方
はじめに — ブライアン・セッツァーとは
Brian Setzer(ブライアン・セッツァー)は、1970〜80年代のロカビリー再興を牽引したギタリスト/シンガーであり、その後スウィング/ビッグバンド・サウンドをロックの文脈で再解釈したことで広く知られています。Stray Cats 時代の生々しいロカビリーから、Brian Setzer Orchestra によるフル・ホーン・アレンジの派手なスウィングまで、彼のディスコグラフィーは「レトロを現代的に鳴らす」工夫に満ちています。本稿では、初めて彼の音楽に触れる人からコアなファンまで楽しめる、おすすめレコード(アルバム)をピックアップして深掘りします。
おすすめレコード(目次)
- Stray Cats時代:入門盤と名作
- Brian Setzer Orchestra:スウィング復権の傑作群
- ソロ/企画作:多面的な表現
- 聴きどころ・選びどころ(音楽的観点)
Stray Cats時代:入門盤と名作
Built for Speed(Stray Cats) — 入門盤として最適
アメリカで広く知られるベスト的編集盤で、「Stray Cat Strut」「Rock This Town」といった代表曲を通して、セッツァーのロカビリー・ギターと歌唱の魅力が凝縮されています。パンク以降の若い感性と50sロックンロールの融合というポイントがわかりやすく、最初に聴く一枚として推奨。
Stray Cats(初期アルバム)/Gonna Ball 等 — ロカビリー本質を味わう
英国で先にリリースされた初期作やその周辺作品は、より生々しく荒削りな演奏が残っており、ライヴ感やバンドの結束力が伝わります。ブライアンのスラップベースとツイン・ギター的なアレンジ、簡潔なリズム隊が存分に楽しめます。
Rant N' Rave with the Stray Cats — キャッチーでバラエティ豊富
ロカビリーの枠を保ちながら、ポップで多様な曲調を取り入れた一枚。曲展開やメロディの強さでラジオ向けの魅力も高く、バンドとしての完成度を感じられるアルバムです。
Brian Setzer Orchestra:スウィング復権の傑作群
The Brian Setzer Orchestra(デビュー作) — コンセプトの提示
ギター・ヒーローであるセッツァーが、ビッグバンド編成を率いてロック/スウィングを結びつけるというアイデアを本格化させた記念碑的アルバム。ホーン・アレンジとロックンロール的な推進力の融合が新鮮で、彼の「編曲家」としての側面も浮かび上がります。
The Dirty Boogie — ブレイクスルー作(代表曲:Jump, Jive an' Wail)
世間的な成功を得たアルバムで、Louis Prima の名曲カバー「Jump, Jive an' Wail」が特に有名。古典的なスウィング/リズム&ブルースを、クリアでアグレッシブなロック的エッジで蘇らせた好例です。ホーン・セクションの鋭さ、ギターの切れ味、全体の「踊れる」エネルギーが秀逸。
Vavoom! — 多彩なアレンジとゲスト
ジャズ/スウィングの伝統曲やロカビリー風味のオリジナルを織り交ぜた作品。アレンジの幅が広く、クラシック・スウィングの尊重とポップ性を両立させています。ライブでの再現性も高く、バンドの演奏力を評価できる一枚。
Wolfgang's Big Night Out — クラシックをスウィングに翻案
クラシック名曲(例えばベートーベンやモーツァルト)をブラス&スウィングにアレンジした企画盤。荒技とも言えるアプローチですが、メロディを抜き出してダンスミュージックとして成立させるセンスは、セッツァーの編曲力とユーモアをよく示しています。
ソロ/企画作:多面的な表現
ギター・インスト/ソロ曲中心の作品 — プレイヤーとしての魅力
セッツァーは歌ものだけでなく、ギター一本で勝負するインスト曲や短めのギター・ナンバーでもその個性を示します。フィンガリングの妙、ツイスト・フレーズ、エフェクトを抑えた生々しいサウンドが好きな人に推奨。
クリスマス/季節盤(Rockin' Rudolph など) — エンタメ性の高い季節作
毎年のようにリリースされているクリスマス・アルバム群は、スウィングとロカビリーの要素で定番曲を大胆にアレンジ。パーティー向けの華やかさと、セッツァーらしいギターの遊びが楽しめます。
各アルバムの聴きどころ(音楽的観点で深掘り)
ギターの語法
セッツァーのギターは、50sロカビリーのテクニック(ピッキングの跳ね、ミュート・フレーズ、スラップ・ベースとの掛け合い)をベースにしつつ、ロック的なダイナミクスを取り入れています。シングルラインのメロディを立たせる能力に長けており、アンサンブルの場合でも「ギターが物語を主導する」作りが多いです。アレンジ力(特にBig Band編成)
Brian Setzer Orchestra の魅力は、豪快なホーン・アレンジにあります。単なる「スウィング風ロック」ではなく、ブラスのパンチをロック的に同期させ、リズム隊とギターが緊密に噛み合うことで、耳に残る強いグルーヴを生み出します。カバーの選び方と再解釈
セッツァーは多くのカバーを自分流に“翻訳”しており、その選曲眼と再構築能力は見事です。原曲の芯を残しつつアレンジで異なるエネルギーを付与する手腕は、オリジナル曲と合わせて聴くことでより深く楽しめます。
どの盤を買うべきか(目的別ガイド)
ロカビリーの入門として
「Built for Speed」系の代表曲集が最短ルート。まずは“曲”で惹きつけられるのが大事ならおすすめ。ライブ感/バンドの生気を味わいたい
Stray Cats の初期作やライヴ盤。演奏のテンションと瞬発力を重視するなら初期録音の荒削りさが魅力になります。ダンスフロア/エンタメ性を求める
Brian Setzer Orchestra の「The Dirty Boogie」や「Vavoom!」が最適。パーティーで映えるアレンジが揃っています。編曲・アレンジをじっくり楽しみたい
「Wolfgang's Big Night Out」など、企画性の高い作品群。異ジャンルの素材をどう料理するかを聴く楽しみがあります。
聴く際のポイント(深掘り視点)
歌詞よりもアレンジを味わう
セッツァー作品は歌詞の物語性より、演奏やアレンジの“色づけ”で魅せる場面が多いです。ソロのフレーズ、ホーンの返し、リズムの刻みを意識して聴くと発見が増えます。オリジナルとカバーの比較
カバー曲が多いので、原曲と比較してどう変わったかを追うと、セッツァーの音楽的な嗜好や“改変の美学”が見えてきます。時代背景を押さえる
Stray Cats の時代はロカビリー復興のムーブメント、Brian Setzer Orchestra の台頭は90年代末のスウィング復古の潮流と結びついています。各作品がどのシーンに向けられて作られているかを知ると理解が深まります。
まとめ
Brian Setzer の魅力は、過去の音楽を単に模倣するのではなく、自らの技術と感性で再生し、現代のリスナーに向けて再提示するところにあります。まずは代表曲をまとめて聴ける編集盤で入り、気に入った方向性(ロカビリー寄りか、スウィング/大編成寄りか)に応じて個別アルバムを掘るのが効率的です。本稿で挙げたアルバムはどれも「セッツァーらしさ」を濃縮しているので、レコードで揃えてコレクションする価値が高い作品群です。
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参考文献
- Brian Setzer — Wikipedia
- Stray Cats — Wikipedia
- Built for Speed — Wikipedia
- The Dirty Boogie — Wikipedia
- Brian Setzer Orchestra — Wikipedia
- Brian Setzer Official Site


