Buck Owensとベーカーズフィールド・サウンド:1960年代カントリーを変えた鋭いギターとキャッチーなメロディ
Buck Owensとは
Buck Owens(バッキー・オーエンズ、1929年8月12日 - 2006年3月25日)は、アメリカン・カントリーの重要人物の一人で、特に「ベーカーズフィールド・サウンド」の代表格として知られます。シンプルで鋭いエレクトリック・ギターのサウンド、はっきりしたリズム、ポップなメロディを持ち合わせた楽曲群で、1960年代を中心に多くのヒットを放ち、カントリー音楽の方向性を変えた影響力のあるアーティストです。
生い立ちとキャリアの概略
テキサス生まれ(後にアリゾナやカリフォルニアでの活動が長く続く)で、若い頃から地元で演奏を重ね、やがてカリフォルニア州ベーカーズフィールドを拠点に活動します。1950年代後半から1960年代にかけて多数のシングルをヒットさせ、ラジオやテレビの露出も増えました。代表的なバンド「The Buckaroos」と共に活動し、ドン・リッチ(Don Rich)をはじめとするメンバーとのコンビネーションがサウンドの中核を成します。1969年からはバラエティ番組『Hee Haw』にも出演し、一般層への認知度も高めました。
ベーカーズフィールド・サウンドの形成と意義
ベーカーズフィールド・サウンドは、当時のナッシュビル派のオーケストレーション(ストリングス・コーラスなど)に対するアンチテーゼとして生まれました。特徴は以下の点です。
- エレクトリック・ギター(特にフェンダー・テレキャスター)の鋭いトーンと前面に出たアンサンブル
- リズムの強調(バックビート、はっきりしたドライブ感)
- 装飾を省いたストレートな編成とミックス(管弦はほとんど使わない)
- ポップな歌メロとホンキートンク/ロカビリー的な感覚の融合
Buck Owensはこのスタイルを代表的に体現し、多くのミュージシャンに影響を与えました。Merle Haggardなど同地域のアーティストとともに、カントリーの新たな潮流を作りました。
音楽的特徴と演奏スタイルの深掘り
- ボーカル:明瞭でやや鼻に抜ける高めの声質。感情を過度に装飾せず、メロディの良さをダイレクトに伝える歌い方。
- ハーモニー:ドン・リッチとのツイン・ボーカル/ハーモニーはBuck Owensサウンドの大きな魅力。リードとハイ・ハーモニーの緊密な掛け合いが、曲に明快さと躍動感を与える。
- ギター・ワーク:テレキャスターのカッティングとリフ、クリーントーンでのリズム刻みが基礎。スラップ・バック的な残響感や簡潔なフレーズで曲の推進力を担う。
- 編曲:無駄を削ぎ落としたアンサンブル。ペダルスチールやピアノが彩りを添えるが、ストリングスなどのオーケストレーションは極力避ける。
- ソングライティング:感情の直接的表現とキャッチーなコーラス。恋愛や別れ、日常の機微を短いフレーズで捉える名手でもある。
代表曲・名盤の紹介
Buck Owensの楽曲はシンプルで覚えやすく、演奏の魅力がストレートに伝わります。代表曲と聴きどころを挙げます。
- Act Naturally — シンプルで歌心のあるナンバー。後にThe Beatlesがカバーしたことでロック層にも知られることに。
- Love's Gonna Live Here — 明快なメロディとポジティブな歌詞で大ヒットした曲。Buckの代表的なラブソング。
- I've Got a Tiger By the Tail — ロック寄りのビート感とキャッチーなコーラスが印象的なアップテンポ曲。クロスオーバー的な魅力を持つ。
- Together Again — ペダルスチールの美しいフレーズが効いたバラード。メロディの美しさとアレンジの余韻が光る。
- Under Your Spell Again — 初期のヒットで、ホンキートンク的な香りが感じられるナンバー。
名盤としては、シングル集や編集盤も良質なものが多いですが、The Buckaroos在籍期のアルバムや初期のシングル群をまとめたベスト・コレクションは彼の真髄を掴むのに適しています。
協働者とバンドの役割
ドン・リッチ(Don Rich)はBuck Owensの右腕的存在であり、ツイン・ギターやハーモニーでサウンドを形作る重要人物でした。トム・ブルムリー(Tom Brumley)のペダルスチールや、プロデューサーのケン・ネルソン(Ken Nelson)らもサウンドの完成に寄与しています。ドン・リッチの1974年の急逝はBuckにとって大きな打撃であり、その後の活動にも影響を与えました。
影響と遺産
Buck Owensの影響はカントリー界だけに留まりません。ベーカーズフィールド・サウンドはMerle Haggardや後の世代のアーティスト(Dwight Yoakam、他のネオトラディショナル系)に受け継がれ、ロックやポップのミュージシャンにも影響を与えました。シンプルで強いビート感、エレクトリック・ギターの使い方は現代のカントリー・ロックにも通じるものがあります。
人物像とエピソード
- 舞台やテレビでの活躍を通じて大衆性も獲得した一方、音楽面では常に妥協のない姿勢を貫いた。
- ビジネスマンとしても抜け目なく、ラジオ局経営やライブハウス経営(後年のCrystal Palaceなど)を行い、地域の音楽文化の発展にも寄与した。
- 功績は1996年のカントリー・ミュージック殿堂入り(Country Music Hall of Fame)などで正式に評価されている。
現在の聴き方とおすすめポイント
初めてBuck Owensを聴く人には、まず代表曲のシングル集やベスト盤をおすすめします。ポイントは「余計な装飾がないこと」を楽しむこと——ボーカル、ツイン・ハーモニー、ギターの齎すグルーヴがストレートに響きます。制作年代を考えれば録音に古さはあるものの、楽曲と演奏の鮮度は色褪せていません。
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