ギター・カッティング完全ガイド:リズム・テクニックと録音で差をつける方法
カッティングとは何か
音楽における「カッティング」は、主にギターを使ったリズム奏法を指す日本語の呼称です。短く切るように弾くストロークや、ミュートを併用してパーカッシブに刻むスタイルで、ファンク、ディスコ、レゲエ、ポップスなど多くのジャンルで重要な役割を果たします。英語圏では「rhythm guitar」や「chicken scratch」「chunking」と呼ばれる奏法に近く、日本では「カッティングギター」として定着しています。
歴史的背景と代表的奏者
カッティングの起源は20世紀中頃のリズム&ブルースやソウル、特にジェームス・ブラウン周辺のファンクに強く根ざしています。ジェームス・ブラウンのギタリスト、ジミー・ノーレン(Jimmy Nolen)は短いミュート・ストロークでグルーヴを作るスタイルを確立し、以降のファンク系ギタリストに大きな影響を与えました。ディスコ〜ポップ界ではナイル・ロジャース(Nile Rodgers)がクリーントーンでのシンコペーションと和音ワークで有名です。これらの奏者は、音色よりもリズムと空間の作り方で楽曲を牽引する点が共通しています。
基本テクニック(右手)
- ピッキングと角度:ピックの持ち方と角度でアタックの硬さが変わります。浅めに持って柔らかく弾くと滑らか、深めで角度をつけると明瞭な「カッ」とした音になります。
- パームミュート:右手の手のひらの側面をブリッジ寄りに軽く当て、サステインを短くします。完全に消さないことがポイントで、打音感(パーカッション性)を残します。
- ゴーストノート(弱音):弦を軽く触れて「チッ」「クッ」といったリズム音を出す技術。16分音符の中に挟むことでグルーヴを際立たせます。
- ストロークの強弱:アクセントを意識して、同じパターンでも強弱をつけて立体的にします。メトロノームでアクセント位置を変えて練習すると有効です。
基本テクニック(左手)
- ミュートの使い分け:左手の指先や手のひらで余分な弦を押さえたり触れたりしてノイズを抑えます。コードを完全に押さえない「ハーフ・バーブ(部分押弦)」も有効です。
- ボイシング:広いバレーコードよりも2〜4弦中心の小さなボイシング(例:9th、7th、add9など)を使うと混ざりやすく、カッティングらしい響きになります。
- チェンジの最小化:和音の形を近づけてコードチェンジを容易にし、正確なリズムを維持します。
リズムの考え方とパターン
カッティングは「刻む」ことが中心です。よく用いられるのは16分音符のグルーヴで、シンコペーション(裏拍の強調)やポリリズム的なアクセントが多用されます。基本的な練習はメトロノームで4分音符を鳴らしながら、1拍を4つに分けた16分音符で均等に刻むことから始めます。次に、2つ目と4つ目の16分音符にアクセントを置く、あるいは第2拍の裏にアクセントを置く、といった変化を加えていきます。
具体的な練習メニュー
- メトロノームでテンポ60〜80:まずは8分音符→16分音符で正確に刻む。
- ゴーストノート練習:1小節を16分音符に分け、アクセントを決めて他を弱音で埋める。
- ポリリズム練習:3連符と16分音符を組み合わせ、手の独立性を鍛える。
- 譜面/耳コピー:ジミー・ノーレンやナイル・ロジャースのソロやセッション録音を聴き、フレーズを写す。
音作りと機材のポイント
カッティングに求められる音は「クリアでタイト」なことが多いです。代表的な設定と機材のヒントは次の通りです。
- ギター:シングルコイルや薄めのハムバッカーで高域の抜けが良いものが扱いやすい。ネックの直近よりもブリッジ寄りのピックアップを使うとアタックが出やすい。
- ピック:厚め(0.8mm〜1.2mm)がアタックを安定させることが多いが、曲想に合わせて調整する。
- アンプ&エフェクト:クリーン~クランチの範囲で、歪みは控えめに。コンプレッサーでダイナミクスを均す、コーラスや軽いコーラスモジュレーションで広がりを出す、短めのリバーブで空間を与えるのが定石です。
- EQ:低域(<200Hz)はカットして濁りを防ぎ、中域(800Hz〜2kHz)で存在感を作り、高域(3kHz〜6kHz)でアタック感を調整します。
レコーディングとミックスでの扱い方
録音では、ギターの定位と処理がミックスの要になります。基本的な手法:
- ダブルトラック(左右に別テイクをパン)してステレオ感を作る。ただし、精度の高いリズムが前提。
- 必要なら1トラックをセンターに置き、左右に補助的なカッティングを配置する。
- コンプレッションは軽めに。スラップ的な音やアタックを伸ばしすぎないことが大切。
- リバーブやディレイは短め/プリセットは薄めにして、リズムの輪郭を潰さない。
ジャンル別の応用
- ファンク:16分音符のアクセントとゴーストノートが鍵。シンプルなコードでグルーヴを作る。
- ディスコ:リズミカルでタイトなストローク。ピッキングの正確さと音色の明瞭さが重要。
- レゲエ:オフビート(2拍目と4拍目の裏)を強調するカッティングで、リズム隊と密接に連携する。
- J-POP:楽曲の歌メロを支えるために、和音進行を崩さずに装飾的なカッティングを加えることが多い。
よくある間違いと改善策
- 速さだけを追う:テンポを上げる前に正確さと均一な音量を優先する。メトロノーム練習を徹底する。
- ミュートしすぎ/しなさすぎ:音が死んでしまうか、逆に余分な音が鳴る。右手と左手の連携練習で最適なミュート量を見つける。
- 過度なエフェクト:モジュレーションやリバーブでリズムの輪郭がぼやける場合がある。エフェクトは薄めに。
学習の進め方と耳の鍛え方
聴くことが最も重要です。プロのレコーディングをループして、手の動きと音を耳で追い、フレーズのコピーと再現を繰り返してください。メトロノーム、クリック音の裏でグルーヴを感じ取る練習も効果的です。バンドで演奏する際はベースとドラムのリズムに合わせる訓練を重ね、完璧なタイミングで刻めるようにします。
まとめ
カッティングは単なるコードの刻みではなく、リズムセクションに強い推進力と「間」を与える奏法です。正確なリズム、適切なミュート、音作り、そして何より耳で感じるグルーヴが重要です。基礎を徹底的に練習し、実際の録音やコピーを通して自分の表現を磨いてください。
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参考文献
- Rhythm guitar — Wikipedia
- Funk — Wikipedia
- Jimmy Nolen — Wikipedia
- Nile Rodgers — Wikipedia
- JustinGuitar(ギターレッスン)
- Sound On Sound(録音・ミックス関連記事)


