Bowers & Wilkins 606 S2 徹底ガイド — 音質・設置・比較まで分かる深堀レビュー
はじめに — 606 S2 の位置づけ
Bowers & Wilkins(以下B&W)の606 S2は、同社のエントリーミドルレンジに位置するスタンドマウント(ブックシェルフ)スピーカーです。長く続く600シリーズの系譜に連なるモデルで、手頃な価格帯でありながらB&Wらしい明快な高域としっかりした低域感を備え、オーディオ入門からセカンドシステム、リビングオーディオまで幅広く使える点が評価されています。本コラムでは設計・技術的特徴、音の傾向、最適な設置・セッティング、アンプやソースとの相性、他機種との比較、実際のリスニングのコツまで詳しく深掘りします。
外観・筐体設計と仕上げ
606 S2はコンパクトな直方体に近い形状で、角の立ったシンプルなデザインです。仕上げはブラックやホワイト、ウォルナット系の木目など複数が用意され、リビングに馴染ませやすい見た目です。キャビネットは内部共振を抑えるために制振設計が施されており、フロントバッフルの厚みや内部の補強材、内部ダンピングの処理が音のクリアさに寄与しています。背面にはバスレフポート(ポートの位置はモデル年式によりリア配置)と、良好な接続を提供するバインディングポストが備わります。
ドライバーと技術的特徴
606 S2は一般的に2ウェイ構成で、直径約1インチ(25mm)のドームツイーターと、約165mm(6.5インチ)クラスのウーファーを搭載します。ツイーターにはB&Wが得意とするデカップルド・ダブルドーム形状のアルミ/合金系ドームが使用され、明るく伸びのある高域再現を行います。ウーファーは剛性とダンピングのバランスが良い素材で作られ、中低域の輪郭を出しつつ過度なブーミーさを抑える設計です。クロスオーバーは必要な帯域分割と位相整合を狙ったものになっており、実音のつながり感を重視しています。
音質の特徴 — 高域・中域・低域のバランス
全体の音調は“明瞭でエネルギー感がありつつ上品”と表現できます。高域は細かなディテールを追うタイプで、ボーカルの息遣いやシンバルの余韻をきれいに描きます。中域は前に出過ぎず落ち着いた厚みがあり、ボーカルや弦楽器のリアリティに寄与します。低域は小型スピーカーとして期待される量感の限界はあるものの、締まりが良くリズム感を損なわないためポップスやロックなどのジャンルでも快適です。音場(ステレオイメージ)は解像度が高く、適切にセッティングすれば奥行き感と左右の定位が明瞭に得られます。
どのような音楽ジャンルに向くか
- ポップス/ロック:明瞭な中高域と締まった低域により、ボーカルとギター主体の曲での楽しさが出る。
- ジャズ/アコースティック:楽器の質感や空間表現をしっかり描くため、少人数編成の録音では高評価。
- クラシック:小編成〜室内楽は得意だが、大編成オーケストラの重厚な低域再生を期待する場合はサブウーファーやより大型のフロア型が望ましい。
アンプ・ソースとの相性
606 S2は能率・インピーダンスの面で特別な扱いを必要とするわけではなく、一般的なプリメインアンプやAVレシーバーと組み合わせて良好に動作します。真空管アンプと組むと暖かみが増し、ソースの柔らかさが出ます。一方ソリッドステートのきっちりとした増幅器と組むと更に解像度やダイナミックレンジが引き出されます。出力は中〜高出力(30〜100Wクラスの実用出力)まで安定して再生できるため、部屋サイズと聴取レベルに合わせて選ぶのが良いでしょう。
設置とセッティングのポイント
コンパクトスピーカーとしての性能を最大限引き出すためには、以下の点に注意してください。
- スタンドの使用:スピーカースタンドを用いることで高さと安定性を確保し、音像定位が明瞭になります。ウーファー中心が耳の高さに来るよう調整を。
- 壁からの距離:背面バスレフの場合は後方の壁から一定の距離(50cm前後を目安)をとると低域のモリモリ感を抑えられます。狭い部屋ではさらに距離を調整。
- トゥーイン(角度):リスニングポイントに向けてやや内向きに角度をつけると高域の解像感とステレオイメージが改善します。
- ルームチューニング:吸音材や反射ポイントの調整、カーペットや家具の配置で低域の定在波や早い初期反射を抑えることが効果的です。
サブウーファーを加えるべきか
リスニングで低域の量感や重低音を重視する場合、サブウーファーの追加は有意義です。接続時はクロスオーバー周波数をメーカー推奨や耳での調整(70〜120Hz付近を目安)で合わせ、位相を調整してメインスピーカーとのつながりを滑らかにします。ただし小型部屋では低域が過剰になりやすいので、慎重なセッティングが必要です。
ライバル機種との比較
同価格帯にはKEF、ELAC、Dynaudioなどの競合があります。例えばKEF LS50系はより高い分解能とイメージングを得意とする傾向があり、ELACのDebutシリーズはコストパフォーマンスで強みを持ちます。606 S2は“音楽の楽しさ”と“使い勝手の良さ”を両立しており、楽曲を自然かつ気持ちよく聴かせる性格が強みです。測定上のフラットさやUDPの細かい描写を最優先するなら他モデルが合うケースもありますが、リスニングの満足度という観点では非常にバランスの良い選択肢です。
実測・レビューで指摘されやすい点
専門レビューや測定結果では以下のような指摘が見られます。
- 高域の伸びやかさは良いが、非常に高い帯域での硬さや若干の尖りを感じる場合がある(設置やアンプで変化)。
- 低域量は小型スピーカーとしては十分だが、深低域の再生は限定的であるため好みにより補助が必要。
- クロスオーバーの特性や位相整合によりボーカル周辺の表現は良好だが、強いロックやエレクトロ系の轟音を好むリスナーにはやや物足りなさを感じることも。
導入時のチェックリスト
- 試聴可能なら必ず自分のアンプ・楽曲で試す。
- スピーカースタンドとケーブルの品質は音に効くため妥協しない。
- 置き場所の違いで音が大きく変わるため、購入前に想定リスニング位置での調整イメージを持つ。
まとめ — こんな人におすすめ
B&W 606 S2は「音楽を日常的に楽しみたいが、スペースや予算に制約があるユーザー」に最適です。クリアで親しみやすい音調、使いやすい設計、そしてB&Wのブランドが持つ音作りのノウハウが詰まっています。より深い低域や超高解像が欲しい場合は別途投資(サブウーファーやアンプのグレードアップ)で対処できます。初めての本格的なセットアップや、リビングオーディオの中心機として非常にバランスの良い選択肢です。
よくある質問(FAQ)
- Q: AV用途でセンタースピーカーと組んでも良い?
A: 可能です。AV用途では音の繋がりを重視して同シリーズのセンターやフロア型と組むのが無難です。 - Q: スピーカースタンドは必要か?
A: あると定位・音場が大きく改善されるため推奨します。最低でも耳の高さになるように調整してください。 - Q: 部屋が小さいが大丈夫か?
A: 問題なく使えますが、背面の壁との距離や低域の処理に注意してください。
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