RARファイルとは?仕組み・使い方・互換性・セキュリティを徹底解説

はじめに:RARファイルとは何か

RARは、Eugene Roshal(ユージン・ロシャール)によって開発された圧縮・アーカイブ形式で、拡張子「.rar」を持ちます。主にWindows向けのユーティリティであるWinRARにより広く普及しました。RARは単なる圧縮だけでなく、マルチボリューム(分割アーカイブ)、リカバリレコード、パスワードによる暗号化、ソリッド圧縮など多機能を備えているため、ファイル配布やバックアップ用途でよく利用されます。

RARの主要な特徴

  • 独自の圧縮アルゴリズム:RARは専用の圧縮方式を用いており、一般的にZIPより高い圧縮率が得られることが多いです。バージョンによって内部アルゴリズムやパラメータが改善されています。
  • マルチボリューム(分割):大容量のデータを複数のファイルに分割して保管・配布できます。例:「archive.part01.rar」「archive.part02.rar」や「archive.r00」「archive.r01」などの形式があります。
  • リカバリと復旧:リカバリレコード(Recovery Record)を設定すると、破損したアーカイブを部分的に修復できる可能性があります。大切なデータの配布・保管時に有用です。
  • 暗号化とパスワード保護:RARはアーカイブ内のファイルデータを暗号化できます。RAR5以降では暗号化方式やヘッダーの暗号化(ファイル名の秘匿)もサポートされ、セキュリティが強化されています。
  • ソリッドアーカイブ:関連ファイルをまとめて連続的に圧縮することで、同種ファイル群に対して圧縮率を大幅に向上させるモードがあります。ただし、一部のファイルだけを取り出すときに処理コストが増える欠点があります。

バージョン差と互換性(RARとRAR5)

RARは長年にわたり進化してきました。特に大きな節目がRAR5の導入で、これにより内部フォーマットの変更、辞書サイズの拡大、暗号化方式の強化、ヘッダー暗号化などが行われています。結果として、古いアーカイバ(特に古いバージョンの7-ZipやOS標準の解凍ツール)ではRAR5形式を開けないことがあります。互換性の観点では、常に最新の解凍ソフトを使用するか、配布側が旧フォーマットで作成する配慮が必要です。

よく使われるソフトウェア(作成・解凍方法)

  • Windows:WinRAR(公式、GUI/コマンドライン)、7-Zip(無料、解凍は可能、最近のバージョンはRAR5をサポート)、PeaZipなど。
  • macOS:The Unarchiver、Kekaなどのサードパーティツールが利用可能です。公式WinRARはWindows向けが中心ですが、コマンドライン版のunrarやunarなども存在します。
  • Linux:コマンドラインのunrar(非フリー版とソース公開版がある)、p7zipなど。各ディストリビューションでパッケージが提供されています。

主なコマンド例(代表的なもの):

  • WinRAR GUI:右クリックメニューから「ここに解凍」等を選択。
  • コマンドライン(unrar):unrar x archive.rar
  • 7-Zip(コマンド):7z x archive.rar

実運用上の注意点とトラブル対策

  • RAR5互換性の確認:受け取ったRARが解凍できない場合、まずRARのバージョン(RAR5かどうか)と使用ソフトの対応状況を確認してください。7-Zipやunrarの最新版にアップデートすることで解決することが多いです。
  • 分割アーカイブの取り扱い:分割されたアーカイブは全て揃った状態で解凍を開始する必要があります。名前や順序が欠けていると展開できません。
  • 破損時のリカバリ:リカバリレコードを付加していた場合、WinRARなどで「修復」機能を試すことで一部の損傷を回復できる可能性があります。ただし完全な復旧を保証するものではありません。
  • パスワード忘れ:パスワードで保護されたRARを忘れた場合、合法的に復元する手段は限られます。ブルートフォースや辞書攻撃を用いるツールがありますが、時間がかかり成功率はパスワードの強度に依存します。権利やプライバシーに関する法的制限にも留意してください。

セキュリティ面の留意点

RAR自体はアーカイブ形式であり、ファイルをコンテナ化する性質を持ちます。次の点に注意してください。

  • マルウェア混入のリスク:RAR内に実行ファイル(.exe)やスクリプトを含めて配布されることがあり、展開後に誤って実行すると感染する恐れがあります。未知の送信元からのRARはウイルスチェックを行ってから展開してください。
  • 自己解凍型(SFX)アーカイブ:実行ファイルとして配布される自己解凍型アーカイブは、本体が実行形式なので特に注意が必要です。信頼できる提供元以外は実行しないでください。
  • 暗号化の強度:RAR5では暗号化方式が強化されており、適切なパスワードを設定すれば高い機密性を確保できます。ただし、パスワード管理が不十分だと意味がありません。

RARと他フォーマット(ZIP、7z等)の比較

用途に応じて最適なアーカイブ形式は変わります。一般的な傾向としては次の通りです。

  • ZIP:汎用性が高く、多くのOSに標準対応していますが、圧縮率はRARや7zに劣ることが多いです。
  • RAR:高い圧縮率、分割・リカバリ機能、使いやすいGUI(WinRAR)が強み。商用の独自フォーマットであるため、完全な互換性やオープン性を重視する場面では注意が必要です。
  • 7z:LZMA/LZMA2などの高圧縮アルゴリズムを用い、しばしばRARより圧縮率が良い場合があります。オープン形式である点が評価されますが、解凍の汎用性はZIPに及びません。

法的・ライセンスのポイント

WinRAR自体はシェアウェアとして配布されており、試用期間の表示はあるものの、多くの環境で長期にわたり利用されています。一方、RARフォーマットの解凍ライブラリ(unrar)はソースが公開されているものの、ライセンスには再利用や改変に関する制約がある場合があります。業務で組み込む場合は、各ライブラリやツールのライセンスを必ず確認してください。

実務的な運用例とベストプラクティス

  • 配布ファイル:複数ファイルをまとめて配布する際は、受け手の環境(RAR5に対応しているか)を確認する。互換性確保のために旧フォーマットでパッケージすることも検討する。
  • バックアップ:重要データのバックアップに使う場合、リカバリレコードを付け、パスワード付きで暗号化する。さらにバックアップの検証(リストアのテスト)を定期的に行うこと。
  • 社内ルール:受信したRARの取り扱いガイドライン(ウイルススキャン、SFXのブロック、パスワード管理)を整備する。

まとめ

RARは柔軟で機能豊富なアーカイブ形式です。高い圧縮率や分割・リカバリ・暗号化といった機能は多くの場面で有用ですが、互換性やライセンス、セキュリティの観点にも注意が必要です。実務で使う際は受け手環境の確認、暗号化とパスワード管理、そして不審なファイルに対する慎重な姿勢を保つことが重要です。

参考文献