グラムロック入門:歴史・音楽的特徴・代表作から現在への影響まで徹底解説
グラムロックとは何か:定義と概要
グラムロック(glam rock)は、1960年代末から1970年代前半にかけてイギリスを中心に花開いたロックの潮流で、派手な衣装や化粧、演劇的なステージ・パフォーマンスを伴う点が特徴です。音楽的にはキャッチーなリフやシンプルでストレートなビート、ポップ的なメロディを基調としつつ、アート志向や奇抜なヴィジュアル表現を融合させた点で他ジャンルと一線を画しました。ピークは1971〜1974年頃とされ、多くのバンドやソロ・アーティストが短期間で大衆的な成功を収めました。
起源と歴史的背景
グラムロックの起源は複合的です。1960年代末のサイケデリック・ロック、ガレージ・ロック、50年代ロックンロールやポップ文化、さらには演劇やファッションからの影響が混ざり合い、音楽とヴィジュアルを同等に重視する表現が生まれました。アメリカのニューヨークでのアンダーグラウンドな動き(後のプロト・グラム的な存在としてニュー・ヨーク・ドールズなど)と、ロンドンや英国各地での若者文化の変化が結びつき、1970年代初頭に「グラム」と呼ばれるムーブメントが顕在化します。
英国における社会状況(戦後世代の新しい消費文化、性やジェンダーの規範に対する挑戦など)も、グラムの受容を促しました。テレビや雑誌というマスメディアとの相性も良く、鮮烈なビジュアルは短期間で大衆の注目を集めました。
音楽的特徴
音としてのグラムロックは多様ですが、いくつか共通する要素があります。
- シンプルで耳に残るリフとフック:ギター・リフやシンセ的なリフが曲の核になることが多い。
- ストレートなリズム:ロックンロール直系のビートを基調にしつつ、踊れる要素を持つ楽曲が多い。
- 演劇性/ステージ性:イントロや間奏での効果的な演出、ボーカルのドラマティックな歌唱。
- プロダクションのバランス:ストレートで粗削りなトラックと、ストリングスやピアノなどの装飾的要素を組み合わせることもある。
- 歌詞のテーマ:スターダム、アイデンティティ、未来観や退廃的イメージなど様々。多くは大仰で演劇的な物語性を含む。
ファッションとパフォーマンス
グラムの最も視覚的な側面は、化粧(グリッターやフェイス・メイク)、派手な衣装(ラメ、メタリック素材、フリル、ハイヒールなど)、そして性別の壁を曖昧にする演出です。外見を通じて観客の期待を揺さぶり、音楽体験を全身で提供するのがグラムの狙いでした。ステージでは擬似的なキャラクター(デヴィッド・ボウイのジギー・スターダストなど)を演じることで、ロックを劇場化しました。
主要人物と代表作
以下はグラムロックを語る上で避けて通れない主要アーティストと代表作です。
- デヴィッド・ボウイ(David Bowie) — 『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』(1972): グラムを代表するコンセプト作。ジギーという異星人ロックスターを演じることで、音楽と演劇の融合を示した。
- T. Rex(Marc Bolan) — 『Electric Warrior』(1971): シンプルで強烈なギターリフとキャッチーなメロディでグラムのポップ性を確立した。
- Roxy Music(ブライアン・フェリーら) — 『Roxy Music』(1972): アート志向とファッション性を前面に出し、グラムを洗練させた側面を持つ。
- Lou Reed — 『Transformer』(1972): プロデュースや演奏面でボウイと共同作業があり、グラム的なサウンドとスタイルをポップに落とし込んだ。
- New York Dolls — 自身のデビュー(1973)など: アメリカでのグラム/プロト・パンクを代表するバンド。
- Slade、Sweet、Mott the Hoople、Gary Glitter など: 英国チャートを賑わせたグラム系のヒット曲を多数輩出。
社会的・文化的意義
グラムは単なる音楽ジャンルを越え、ジェンダー表現やアイデンティティについての議論を社会にもたらしました。男性が女性的要素を取り入れたり、性的なアイコンを自ら作り出すことで、ロックの「男らしさ」神話に挑戦しました。また、短命ながら非常に濃密なシーンを作り出し、テレビや雑誌といったメディア文化と結びついて若者文化のスタイルを変えました。
衰退とその要因
グラムの黄金期は短く、1974年以降は次第に勢いを失いました。理由としては、ムーブメントの急速な商業化と模倣、そして1976〜77年に勃興したパンク・ロックの台頭が大きいです。パンクはグラムの華美さに対して生のエネルギーと政治的な怒りを提示し、若い世代の支持を奪いました。一方で、多くのグラム系アーティストはその後も音楽活動を続け、サウンドや表現を変化させながらキャリアを継続しました。
遺産と後続への影響
グラムは直接的・間接的に多くの音楽潮流に影響を与えました。1970年代後半のパンク/ニュー・ウェイヴへの影響、1980年代のグラムメタル(ハードロックにグラム的要素を持ち込んだムーブメント)、さらにはポップのヴィジュアル重視のアーティスト(マドンナ、レディー・ガガ等)への影響も指摘されます。また、ジェンダー表現の多様化やステージ作品としてのロックのあり方に関する議論を深化させた点は、現代のポップ表現にも生きています。
グラムを聴き分けるポイント
- 派手なヴィジュアル表現を伴っているか(だが必須ではない)
- キャッチーでシンプルなリフやフックを重視しているか
- 演劇的・物語的な歌詞やコンセプトを用いているか
- 軽やかかつ力強いビート、時にポップとロックの境界を曖昧にするアレンジ
入門に薦めるアルバムと楽曲(最小限のガイド)
- デヴィッド・ボウイ – Ziggy Stardust(1972): "Starman"、"Ziggy Stardust"
- T. Rex – Electric Warrior(1971): "Metal Guru"、"Get It On (Bang a Gong)"
- Roxy Music – Roxy Music(1972): "Virginia Plain"
- Lou Reed – Transformer(1972): "Walk on the Wild Side"
- New York Dolls – New York Dolls(1973): プロト・パンク/グラムの生々しい側面を体験できる
- Slade、Sweet、Mott the Hoople等のシングル群: 英国のポップ・チャートでのグラムの勢いを理解するのに有用
まとめ:グラムロックの魅力
グラムロックは音楽的革新だけでなく、視覚表現とアイデンティティの実験を通してポップカルチャーに大きな影響を与えました。華やかで分かりやすい「ショー」としての魅力、そして根底にあるポップ性とロックのエネルギーが、多くのリスナーとアーティストの心を掴み続けています。短命でありながら影響力の大きかったこのムーブメントを、音楽・ファッション・社会的背景の両面から読み解くことで、現代の多様な表現のルーツを見つめ直すことができます。
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参考文献
- Britannica: Glam rock
- Wikipedia: Glam rock
- AllMusic: Glam Rock
- Wikipedia: David Bowie
- Wikipedia: T. Rex
- Wikipedia: Roxy Music
- Wikipedia: New York Dolls


