セッションとは何か:音楽的交流と実践ガイド(ジャムからスタジオまで)

セッションとは何か

音楽における「セッション」は、即興演奏や合奏、録音など複数の演奏者が集まって音楽をつくり出す行為を指します。狭義にはジャムセッションのような即興中心の場を指すことが多いですが、スタジオで行われる録音のためのセッション(セッションワーク)やライブでのコラボレーション、オンラインでの遠隔セッションなど、形態は多岐にわたります。セッションは単なる演奏練習にとどまらず、技術習得、ネットワーキング、創作の場として重要な役割を果たします。

セッションの歴史と背景

セッション文化は20世紀初頭のジャズシーンとともに発展しました。アメリカ南部や都市部でミュージシャンが集まって演奏を通じて磨き合う場が生まれ、そこから即興演奏の手法やレパートリーが育まれました。20世紀中盤以降は録音産業の発展により、いわゆる“セッション・ミュージシャン”(スタジオ・ミュージシャン)という専門職が確立されます。有名な例として、1960年代のロサンゼルスのスタジオ・ミュージシャン集団「The Wrecking Crew」やデトロイトの「The Funk Brothers」(モータウンのハウスバンド)は、多数のヒット曲の制作を支えました。

セッションの種類

  • ジャムセッション:自由度の高い即興中心の演奏会。主にジャズやブルースの場で一般的。
  • スタジオセッション:レコーディングやデモ制作のために組織された演奏。楽譜やアレンジに基づくことが多い。
  • ライブセッション:イベントやバー、カフェでのコラボ演奏。ゲスト参加やセッションナイトとして行われる。
  • リハーサルセッション:バンドやオーケストラのための練習を兼ねたセッション。
  • オンライン/リモートセッション:ネットワークを介して離れた場所の演奏者が同時または非同時で協働する形式。

役割と編成

効果的なセッションには各メンバーの役割理解が欠かせません。一般的な編成と役割は次の通りです。

  • リズムセクション(ドラム、ベース、ギターまたはピアノ):楽曲の基礎を支え、グルーヴやハーモニーの基盤を作る。
  • ソリスト(管楽器、ヴォーカル、ギター等):メロディや即興ソロを担当し、表現の中心となる。
  • コンピング(伴奏)役:ソロを支えるコードのパターンやリズム的装飾を提供する。
  • バンドリーダー/MC:曲の進行、キー、テンポ、エンディングの指示を出す。スタジオではプロデューサーやエンジニアが同様の決定を行う。

演奏者の心得とエチケット

セッションは公共の場であり、他の演奏者と共同作業する場でもあります。基本的なエチケットを守ることで、場が円滑に進行し学びが最大化されます。

  • 時間厳守と準備:譜面・楽器・チューニング・必要な用品を用意する。
  • 聞き合う姿勢:他の演奏者のソロを尊重し、音量やスペースを調整する。
  • 簡潔なコミュニケーション:テンポ、キー、構成(イントロ→Aメロ→ソロ→アウトロ)を始めに確認する。
  • 譜面共有のルール:必要に応じてリードシートやコード譜を用意・配布する。
  • 録音や配信の許可:許可なく録音・配信しない。権利関係に注意する。

準備とコミュニケーション技術

良いセッションは準備とシンプルな合図で成り立ちます。参加者は以下を意識してください。

  • 曲のキーとテンポを明確にする:メトロノームやクリックの使用を求める場合は事前に伝える。
  • 構成の確認:何小節のイントロやエンディング、ソロの順番などを決める。
  • コール&レスポンスやハンドシグナル:即興での合図を決めておくと、楽曲の展開がスムーズになる。
  • 簡潔な言語:ジャズでは「チャート(Charts)」「リードシート」「コンピング」など共通語彙を使う。

即興とアレンジの実務

即興演奏はセッションの核ですが、効果的なソロやアレンジには技術と最低限の構想が必要です。

  • スケールとモードの選択:曲のコード進行に応じて使えるスケール領域を把握する。
  • モチーフの発展:短いフレーズを繰り返し変化させることで説得力のあるソロを作る。
  • ダイナミクスとテクスチャ:全体の音量バランスや音色変化を意識することで演出が生きる。
  • 簡単なアレンジの共有:イントロ、アウトロ、リフの決定は全員で合意しておく。

法務・権利関係の基本

セッションでの録音や公開配信、カバー演奏には著作権や演奏権、録音権などが関わります。日本ではJASRACが管理する楽曲も多く、ライブでの演奏や録音物の配信には申請や使用料の取り扱いが必要になる場合があります。スタジオセッションでの契約では、セッションミュージシャンの報酬が「ワーク・フォー・ハイヤー(買い切り)」かロイヤルティ対象かを明確にし、分配比率やクレジットの扱いを文書で残すことが重要です。録音物を商用利用する際は、作曲者/出版権者への許諾が必要になる点に注意してください。

テクノロジーと現代のセッション

ネットワーク技術の発達により、遠隔でのセッションが現実的になりました。低遅延音声ツールや専門ソフトを使えば、地理的に離れたミュージシャン同士でリアルタイムに近い感覚で演奏できます。代表的なツールにはJamulusやJackTrip、NINJAMなどがあり、ZoomやSkypeも“音楽モード”やオーディオ設定で活用されます。ただし、インターネットの遅延(レイテンシー)は完全には解消されないため、スタジオクオリティのレコーディングは別途各自が高品質なトラックを共有して多重録音する方法(非同時コラボ)が主流です。

セッションがもたらす効果

セッション参加は技術面だけでなく、創造性や人脈形成に大きな効果があります。実践を通じて即興力、アンサンブル感、リスニング能力が鍛えられ、レパートリーや演奏スタイルの幅が広がります。また、プロのセッションワークは収入源となり、演奏経験が評価されて次の仕事へつながることもあります。

成功するセッションのチェックリスト

  • 事前準備:譜面、チューニング、機材、連絡手段
  • 場のルール共有:録音可否、時間配分、参加費やハウスルール
  • 簡潔な曲情報:キー、テンポ、構成を最初に伝える
  • 安全で尊重ある態度:初心者を排除しない雰囲気づくり
  • 記録と契約:録音や商用利用は書面で合意する

まとめ

セッションは音楽家にとって学びと創造の重要な場であり、即興力やアンサンブル能力を磨き、ネットワークを広げる機会を与えてくれます。形態は多様化しており、伝統的なジャムから高度に管理されたスタジオワーク、さらにはオンラインでの遠隔コラボレーションまで含まれます。参加者全員が基本的なエチケットと権利関係を理解し、適切な準備とコミュニケーションを行うことで、より実りあるセッションが実現します。

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参考文献