ハモリパートの作り方と理論:アレンジ・練習・録音まで徹底ガイド
はじめに:ハモリとは何か
ハモリ(ハーモニーのパート)は、主旋律(メロディ)に対して複数の声が同時に鳴り合うことで生まれる和声的な要素を指します。ポップス、ロック、ジャズ、ゴスペル、合唱などジャンルを問わず楽曲の情感や厚み、動きを作る重要な役割を担います。本コラムでは、理論から実践、録音・ミックスまで、ハモリパートに関する知識を深掘りします。
基礎知識:ハモリの基本要素
ハモリは単に「別の音を重ねる」だけではなく、音程関係、和音の構成、声部の動き(ボイスリーディング)を意識することが重要です。代表的な要素は以下の通りです。
- 間隔(インターバル):長3度・短3度・6度など。長3度や6度は自然な協和感をもたらします。
- 和声機能:トニック、ドミナント、サブドミナントなどの和音機能に沿ったハモリ。
- ボイスリーディング:各声部が滑らかに移行すること。平行5度・8度の回避が基本です。
- テクスチャー:クローズ(密集)かオープン(広がり)かで響きが変わります。
ハモリの種類と用途
ハモリの取り方は目的やジャンルで大きく異なります。代表的な形式を紹介します。
- 二声(デュエット型): メロディに対して1パートのハモリを付ける。シンプルで歌いやすい。
- 三声・四声(コーラス型): コーラスでよく用いられる。和声進行をしっかり支えられる。
- クラシック/合唱: 各声部(ソプラノ・アルト・テノール・バス)の役割が明確。
- ジャズ/ボーカルグループ: ガイドトーン(3度・7度)を中心にテンション音を追加して色付けする。
- バーバーショップ: 極端にチューンされた和声とオーバートーンを重視した密集和声。
理論的基盤:インターバルと和声進行
一般に最も自然に聞こえるハモリはメロディの3度上・6度上(あるいは下)です。しかし和声の機能に合わせることが前提です。例えば、メロディがド(C)で進行中に和音がG7(V7)の場合、ハモリに導入される音は和音内の構成音、特に3度と7度(ガイドトーン)が安定感を保ちます。ジャズではこの考え方を発展させ、9th・11th・13thなどのテンションを上の声部に配置して色彩を作ります。
ボイスリーディングのコツ
滑らかなハモリを作るにはボイスリーディング(声部の動かし方)を重視します。基本的なルールは次の通りです。
- 可能な限り近接移動(半音〜2度)を使い、跳躍は最小限にする。
- 平行5度・平行8度の連続は避ける(和声学の基本ルール)。
- 旋律が下行なら対旋律は上行にするなど、逆行(コントラリーモーション)を取り入れると分離が良くなる。
- 主要な和音ではルート(根音)やガイドトーンを確保し、内声にテンションを配置する。
アレンジ技法:実践的なハモリ作成法
具体的なアプローチをいくつか紹介します。
- メロディを分割してハモリ化:サビの主要フレーズを上声・下声に分けて対位させる。
- 並行3度・6度の活用:自然で親しみやすい響き。ポップスで多用される。
- クラスターハーモニーの導入:隣接音を重ね、緊張感や厚みを出す(効果的に短時間のみ使用)。
- 和音の転回を利用:ベースや他の楽器とぶつからないように内声を動かす。
- テンションの付与:ジャズやR&Bでは高めの声部に9thや13thを入れてモダンな色彩にする。
練習と耳トレ:実用的な練習メニュー
ハモリを安定して歌えるようになるには、耳と体の訓練が不可欠です。以下の練習が効果的です。
- インターバルトレーニング:3度・6度・5度などを歌って認識する(アプリやサイトを活用)。
- パート練習:メロディを歌いながら別のパートをモニターして合わせる練習。
- ピアノ伴奏でのハモリ作成:和音を押さえながら異なる音を試し、響きを確認する。
- 鼻歌→ハモリ発見法:メロディを鼻歌で歌いながら自然に出る別声を録音して採用する。
録音・ミックス時の注意点
現場でのハモリの録音やミックスにもコツがあります。録音時は以下を意識してください。
- レベルバランス:メインボーカルを中心にハモリはやや下げ、歌詞の明瞭さを確保。
- パンニング:ステレオ空間を活かして左右に配置すると広がりが出る。ただし重要なフレーズはセンター寄りに。
- EQ処理:低域をロールオフし、帯域を分けて主旋律と干渉しないようにする。
- リバーブとディレイ:距離感を出すために使用。ハモリにはやや深めのリバーブや短いディレイが効果的。
- ピッチ補正:Tuningは自然さを損なわない範囲で使う。薄くかけることで倍音の干渉が改善される。
ジャンル別のハモリの特徴
ジャンルによって望まれるハモリの質は異なります。
- ポップス/ロック:並行3度・6度、厚みのあるコーラス。主旋律のサポートが中心。
- ジャズ/R&B:テンションを含む近代和声。ガイドトーンワークが重要。
- ゴスペル:ダイナミックで力強いコーラス。クローズとオープンを使い分ける。
- 合唱:各声部の均衡と発音、ブレスや発声の統一が鍵。
よくある失敗とその対処法
制作や練習でありがちな問題と解決策です。
- 問題:ハモリが主旋律を覆ってしまう。対処:レベルを下げる、EQで帯域を分ける。
- 問題:響きが濁る。対処:不要なクラスタを削り、音の抜けを作る(ハイミッド調整)。
- 問題:ピッチのズレ。対処:個別録音してピッチ補正や再録音で整える。
- 問題:平行5度が発生する。対処:声部の動きを見直し、対向運動を導入する。
ツールとリソース
現代の制作ではDAWやハーモナイザー、耳トレアプリが役立ちます。代表的なものは以下。
- DAW(Pro Tools、Logic Pro、Cubaseなど): マルチトラック録音と編集に必須。
- ピッチ補正ソフト(Melodyne、Autotuneなど): 自然な補正でハモリの精度を上げる。
- ハーモニー生成プラグイン(Antares Harmony Engineなど): 自動で複数パートを生成。
- 耳トレサイト(teoria、musictheory.net): インターバルや和声の学習に便利。
まとめ:ハモリ作りの心構え
ハモリは理論と感性の融合です。基礎理論(インターバル、和声機能、ボイスリーディング)を押さえつつ、ジャンルごとの慣習や楽曲の感情に応じて柔軟にアプローチすることが大切です。録音やミックスの段階でも工夫を加えれば、ハモリは曲の最大の武器になります。日々の耳トレと実践を重ね、さまざまなハモリを試して自分の引き出しを増やしてください。
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参考文献
- 和声(Wikipedia)
- ハーモニー(Wikipedia)
- musictheory.net — Music Theory Resources
- Teoria — Music Theory Web
- Berklee Online — Music Courses and Articles
- Celemony Melodyne
- Antares Audio Technologies — Harmony Tools


