Bowers & Wilkins 607 S2徹底レビュー:小型スピーカーで音の本質を聴く方法
イントロダクション — 607 S2の立ち位置
Bowers & Wilkins(以下B&W)は英国を代表するスピーカーブランドであり、同社の600シリーズは「コストパフォーマンスに優れたハイファイ入門ライン」として長く支持されています。その中で607 S2はコンパクトなブックシェルフ(ブックシェルフ/ブックシェルフ型)スピーカーとして、限られたスペースでも高品位な再生を目指すリスナーに向けて設計されています。本コラムでは、音質的特徴、設計思想、設置とセッティングのコツ、機器の組み合わせ、用途別の評価、ライバル機との比較、そして購入時の注意点まで深掘りします。
設計とハードウェアの概要
607 S2は小型のエンクロージャに高精度ドライバーを収めた設計です。B&W流のアルミ系ドームツィーター(高域の伸びと位相特性を重視)と、ダイナミックな中域を担うコーン型ウーファーを組み合わせています。エンクロージャは剛性を確保しつつ内部定在波を抑えるための処理が施されており、リアバスレフポート(背面に配置)により低域の量感を工夫しています。
小口径・小容積のキャビネット設計は、フルレンジでの低域伸びを犠牲にする代わりに、タイミングとトランジェントの正確さ、定位感の明瞭さを優先する傾向があります。これはボーカルやアコースティック楽器、クラシックの室内楽など「情報量と質感が重要なソース」で大きなアドバンテージになります。
音質の特徴:細部の描写とバランス
高域は伸びやかな印象で、繊細なシンバルや倍音の再現が得意です。中域は前に出すぎず、自然で聴き疲れしにくいバランスに調整されており、ボーカルの空気感や弦楽器の質感が非常に生きます。低域は小型の宿命として量感・深さに制約がある一方で、低域の立ち上がりと制動性(タイトさ)は優れており、ドラムのアタックやベースの輪郭は明瞭に表現されます。
結果として「音楽の構造や空間情報を明瞭に伝える」スピーカーで、ミックスのチェックや音楽鑑賞の両方に向きます。ただし、EDMや映画の迫力重視で超低域の再生を期待する場合は、サブウーファーとの組み合わせが実用的です。
設置とセッティングのポイント
- スピーカースタンドを使う:床置きよりもスタンドで耳の高さにツィーターを合わせると定位と空間再現が向上します。
- リアポートのクリアランス:リアバスレフ方式の場合、背面と壁との距離で低域の量感が変わるため、壁から20〜40cm程度離して設置して微調整します。
- トーイン(角度付け):リスニング位置へ向けて少し内振りにすると定位が締まり、リスナーの頭内定位が明確になります。部屋や好みにより最適角は変わります。
- ルームチューニング:小型でも部屋の反射が音像に大きく影響するため、フロントガラスや大きな平面反射を避け、必要に応じて吸音パネルやラグを使うとメリハリが出ます。
アンプとの相性とシステム構成
607 S2は極端に高能率を要求するタイプではないため、現代の多くの統合アンプ(30W〜100W級)で十分に駆動できます。ソリッドステート(トランジスタ)アンプは低域のコントロールとダイナミクスを引き出しやすく、真空管アンプとの組み合わせは中域の色づけを楽しみたいリスナーに適します。重要なのはアンプの余裕(ダイナミックヘッドルーム)とチャンネル当たりの電力よりも、電流供給能力や音の勝ち負けをしないクリーンさです。
サブウーファーを追加する場合は、クロスオーバー周波数を60〜80Hz付近に設定し、位相合わせを丁寧に行うと不自然なブーミーさを避けられます。
用途別の評価
- リスニング(ポップ/ロック/アコースティック):高評価。ボーカルやアコースティック楽器の質感表現が優秀。
- ジャズ/クラシック:室内楽や小編成の再生に向く。オーケストラの超低域や大音量再生はサブや大口径と組み合わせると良い。
- 映画/ホームシアター:フロントやリアの小口径スピーカーとしては優秀だが、低域の衝撃は別系統(サブ)で補うと満足度が高まる。
- モニタリング:絶対的なフラットさを求めるスタジオマスターには向かないが、音楽制作の下準備やミキシングチェックには有用。
ライバル機との比較と選び方
同クラスの他社モデル(例:KEFやDynaudio、Monitor Audioなど)と比べると、607 S2は「中高域の明瞭さと聞き疲れしないバランス」に特徴があります。KEFの同サイズモデルはより均一な指向性や低域の伸びで勝ることがあり、Dynaudioは中低域の厚みで一歩リードする傾向があります。どれを選ぶかは「何を聴くか」「部屋の大きさ」「好む音色」に依存しますので、試聴が重要です。
メンテナンスと長期使用
キャビネットのクリーニングは乾いた柔らかい布でホコリを払う程度で問題ありません。ツィーターやウーファーの表面は繊細なので、強い力で触れないよう注意してください。内部コンデンサや接点は長年で劣化する可能性があるため、中古購入時は動作・見た目・当たり外れをチェックしましょう。B&Wはリセールバリューが比較的良好なブランドとされています。
どんな人に向くか—購入ガイド
- 省スペースでも良質な音を求めるホームリスナー
- ボーカルやアコースティックを中心に聴く人
- ホームシアターでフロント/リアにコンパクトを配置したい人(サブ併用推奨)
- はじめてのハイファイ投資で将来のシステムアップ(アンプ、サブ)を考えている人
まとめ — 607 S2がもたらすもの
Bowers & Wilkins 607 S2は“小さな筐体で如何に音楽の本質を伝えるか”を目指したバランス志向のスピーカーです。サイズを超えた情報量、自然な中域、そして整った高域は日常のリスニングを豊かにします。一方で、深い低域の再現や大音量の迫力は物理的制約があるため、サブウーファーとの併用や部屋に合わせた設置が満足度を左右します。用途と部屋を踏まえたセッティングで、607 S2は非常にコストパフォーマンスの高い選択肢となるでしょう。
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