オンイヤーヘッドホン完全ガイド:特徴・メリット・選び方と使いこなし術
オンイヤーヘッドホンとは何か
オンイヤーヘッドホン(オンイヤー型ヘッドホン)は、イヤーカップが耳(耳介)の上に直接乗るタイプのヘッドホンを指します。オーバーイヤー(密閉型・開放型)やインイヤー(イヤホン/カナル型)と並ぶ基本的なカテゴリーの一つで、形状上「耳を覆う」よりも「耳に当てる」ため、装着感や遮音性、音の聞こえ方がそれぞれ異なります。
オンイヤーの主な特徴とメリット
オンイヤーヘッドホンは次のような利点を持つため、用途や好みによっては非常に魅力的な選択肢となります。
- 携帯性:イヤーカップが小さめで折りたたみ機構が付くことが多く、バッグや通勤カバンに入れて持ち運びやすい。
- 軽量性:オーバーイヤーに比べて全体が軽く、短時間の使用での疲労が少ない。
- 快適な温度感:耳を完全に覆わないため、夏場でも蒸れにくい。
- 開放感のある音響(特にオープンタイプ):耳に密着しない分、ややオープンで聞き疲れしにくい中高域の提示が得られるモデルがある。
- デザイン性:市販モデルはファッション性の高いデザインが多く、ライフスタイルに合わせやすい。
欠点と注意点
一方でオンイヤー特有のデメリットも存在します。購入前に以下を押さえておきましょう。
- 遮音性の低さ:耳を覆わないか浅く覆うため、周囲の音が入りやすく、逆に音漏れもしやすい。騒がしい環境や図書館などでは不向きな場合がある。
- 低域の再生:ドライバーサイズが小さい、耳との密閉が甘いなどの理由で、オーバーイヤーに比べて低域の量感や深さが弱めに感じられることがある。
- 装着感の個人差:イヤーカップが直接耳に当たるため、クランプ(ヘッドバンドの締め付け)やパッドの硬さ次第で耳や耳まわりに痛みや疲労が生じることがある。
- モニタ用途の制約:音漏れや低域の特性から、正確なモニタリングを要するプロのスタジオ用途ではオーバーイヤーが選ばれることが多い。
技術的ポイント:音質と互換性のチェック項目
製品を比較する際に確認すべき主要スペックと意味を簡潔に説明します。
- ドライバー口径:オンイヤーは一般的にドライバーが小さめ。大口径は低域再現の助けになるが、設計次第。
- インピーダンス(Ω):高インピーダンス機はヘッドフォンアンプがある方が力を発揮しやすい。スマホ直差しが主なら32Ω前後のモデルが扱いやすい。
- 感度(dB):感度が高いほど小さな出力で音量が得られやすい。携帯端末での利用を想定するなら感度の高いモデルが便利。
- 開放/密閉:オープン(開放型)は音場感が広がりやすいが音漏れが大きい。クローズド(密閉型)は低域の量感と外音遮断に有利。
- ワイヤード/ワイヤレス:Bluetooth搭載モデルは利便性が高いが、コーデック(SBC、AAC、aptX、LDACなど)によって音質や遅延に差が出る。ハイレゾ相当を求めるならLDACやaptX HD、LHDC対応機を確認する。
- アクティブノイズキャンセリング(ANC):オンイヤーは耳を完全に覆わないため、ANCの効果はオーバーイヤーより限定的になることが多いが、日常騒音の低減には一定の効果が期待できるモデルもある。
用途別の選び方ガイド
使う場面によって重視すべき項目は変わります。目的別の選び方をまとめます。
- 通勤・通学:折りたたみやワイヤレス、ANCの有無を優先。音漏れが気になるならクローズド型かイヤーパッドの厚いモデルを。
- オフィスでのBGM用途:周囲の会話を完全に遮断したくない場合はオンイヤーの利点が活きる。音量に注意して音漏れ対策を。
- カジュアルリスニング:軽量・携帯性・デザイン性を重視。好みの音色(中高域重視/低域重視)で選ぶ。
- DJやモニタリング用途:Sennheiser HD25のように、オンイヤーでモニタリングに特化したモデルも存在する。頑丈さと密閉性、片耳での使用(片方を外す)に対応する設計を選ぶと良い。
- スポーツ/ジム:汗や動きに強い設計と安定した装着感を重視。ただし、運動中はイヤホン(骨伝導含む)を選ぶユーザーも多い。
メンテナンスと長持ちさせるコツ
オンイヤーはパッドやヘッドバンドの消耗が早い場合があります。以下の対策で寿命を延ばせます。
- イヤーパッドの交換:消耗品なので交換用パッドが入手可能か確認しておくと安心。
- ケーブルの取り扱い:着脱式ケーブルやストレート/L字プラグなど用途に合わせて選択。断線予防に無理な折り曲げを避ける。
- 清掃:汗や皮脂が付着するので定期的に柔らかい布で拭く。布製パッドは洗浄可能なものもあるが、付属の取扱説明書に従う。
- 保管:折りたたみ式なら折りたたんで専用ケースで保管すると破損を防げる。
代表的なモデルと選定時の注意
ここではオンイヤーの代表的な例を挙げます(モデルカテゴリはメーカーの表記や設計によって異なることがあるため、購入時は実物の装着感やスペックを確認してください)。
- Sennheiser HD25:プロのDJや放送用途で長年支持される密閉オンイヤー。堅牢性と定位の良さが特徴。
- Grado SRシリーズ:オープンタイプのオンイヤー。中高域のクリアさと音楽的な生々しさを重視するリスナーに人気。
- Koss Porta Pro:軽量で折りたたみ可能、長年愛されるポータブルオンイヤーの古典。
- Marshall Majorシリーズ、Beats Soloシリーズ:ファッション性やモバイル連携を重視した消費者向けの代表例。低域の強調やデザイン性に特徴がある。
購入前に試聴するときのチェックポイント
試聴の際には次を確認してください。
- 装着感:長時間装着して耳や頭部に痛みが出ないか。
- 音漏れの程度:周囲に音がどれくらい伝わるか(公共の場所で使うか否かの判断材料に)。
- 低域の満足度:曲のキックやベースラインが好みに合うか。
- ボリューム感:接続機器(スマホやポータブルプレーヤー)で十分な音量が得られるか。
- ワイヤレスモデルはコーデックと遅延:動画やゲームで使うなら遅延が少ないコーデック対応を確認。
まとめ:オンイヤーヘッドホンをどう選ぶか
オンイヤーヘッドホンは「携帯性」「軽さ」「デザイン性」などの利点があり、通勤やカジュアルリスニングに適した選択肢です。一方、遮音性や低域の再現、長時間の装着感といった点でオーバーイヤーと差が出るため、用途に応じてスペックや試聴で確認することが重要です。ワイヤレス化やANC搭載モデルの登場により選択肢は増えていますが、製品ごとの差が大きいカテゴリでもあるため、実機での装着感と音の傾向を重視して選びましょう。
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参考文献
- Headphone - Wikipedia
- Active noise control - Wikipedia
- Bluetooth audio - Wikipedia
- Sennheiser HD25 - 製品ページ
- Grado Labs - 製品情報
- Koss Porta Pro - 製品情報
- RTINGS - ヘッドホン比較とレビュー(参考)
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