THIS IS US 徹底解析:家族像・語りの工夫・文化的影響を深掘り
概要:なぜTHIS IS USは注目を浴びたのか
THIS IS US(邦題:ディス・イズ・アス)は、ダン・フォーグルマン(Dan Fogelman)によって創作され、NBCで2016年9月20日に初回放送され、2022年5月24日に最終回を迎えたアメリカのテレビドラマシリーズです。全6シーズン、計106話で構成され、家庭ドラマの枠を超えた感情の揺さぶりと巧みな語り口で幅広い層から支持を集めました。シリーズは出生を巡るエピソード、養子と血縁、喪失、アイデンティティ、メンタルヘルスなど多様なテーマを扱い、ソーシャルメディア時代に共感を呼ぶコンテンツとして大きな話題を呼びました。
主要キャストと制作陣
- クリエイター:ダン・フォーグルマン
- ネットワーク:NBC
- 主要キャスト:ミロ・ヴィンティミリア(Jack Pearson)、マンディ・ムーア(Rebecca Pearson)、スターリング・K・ブラウン(Randall Pearson)、クリッシー・メッツ(Kate Pearson)、ジャスティン・ハートリー(Kevin Pearson)
- 音楽:シッダールタ・コーラ(Siddhartha Khosla)ほか
- 放送期間:2016年~2022年、6シーズン・106話
本作は演出・撮影/編集・音楽が物語を支える重要な要素として評価されており、特にシッダールタ・コーラのスコアや劇的なモンタージュの使い方が印象的です。また、主演のスターリング・K・ブラウンはエミー賞の主演男優賞を受賞するなど、演技面での高評価も獲得しました。
物語構造と語りの工夫
THIS IS USの最大の特徴は多層的な時間軸を横断する語りです。フラッシュバック(過去)とフラッシュフォワード(未来)の併用により、視聴者は登場人物の一瞬の選択が後の人生にどう影響するかを断片的に知ることになります。この構造は「謎」を意図的に分散させ、回を追うごとにピースが埋まっていく感覚を与えます。
物語はパーソナルな出来事と普遍的なテーマを同時に扱うことで、個々のエピソードがシリーズ全体の大きなパズルの一片となる設計です。例えばジャックとレベッカの若き日の決断は、子供たちのその後の人生に直接結び付き、視聴者は因果関係を辿りながらキャラクターへの理解を深めていきます。
キャラクターとテーマの深掘り
本作は「家族」を中心に据えつつ、複数の社会的テーマを丁寧に掘り下げます。
- 養子と人種:ランドールは黒人として養子に迎えられた存在であり、アイデンティティや職場での差別、政治的恐怖感など、人種に根ざす問題が繰り返し扱われます。
- 喪失とトラウマ:ジャックの死とその後の家族の再編は、喪失が世代を超えて影響を及ぼすことを示します。シリーズは悲嘆(グリーフ)のプロセスを長期的に描写します。
- メンタルヘルスと依存:ケイトやケヴィン、ランドールなど複数の登場人物が体重問題、摂食障害、アルコールや薬物依存、うつ状態などの課題に直面します。これらは単発の障害描写に留まらず回復と再発の循環として描かれる点が現実に近いと評価されます。
- 性別役割と世代間関係:スピーチや教育、仕事と育児の両立など、各世代の価値観の違いが家族会話を通じて浮かび上がります。
演出・音楽・映像表現
演出面では、感情の高まりに合わせたクローズアップ、静かな場面の長回し、タイムシフトに応じた色調の使い分けなどが効果的です。音楽は感情の橋渡し役を務め、特に重要シーンではスコアが視聴者の共感を誘導します。モンタージュや並列編集を用いて異なる時空の出来事を対比させることで、テーマの普遍性を強調する手法が多用されました。
社会的影響と受容
放送当初からTHIS IS USはSNSでの反響が大きく、「泣けるドラマ」として話題になりました。視聴者は自らの家族史と重ね合わせて感情移入することが多く、エピソード公開後には感想や個人的な告白がオンラインで広がる現象が見られました。また、家族問題やメンタルヘルスについての公共的な議論を喚起した点も評価されています。
批評的視点:賛否両論のポイント
高い支持を得る一方で批判も存在します。主な批判点は次のとおりです。
- メロドラマ性の過剰:感情誘導が露骨で「操作的」と感じる視聴者もいました。
- プロットの過剰な仕掛け:謎解き要素を強調するあまり、説明不足や唐突な展開だと指摘される回もありました。
- 描写の単純化:複雑な社会問題をドラマ的に単純化してしまう危険がある、という批判もあります。
とはいえ、これらの批判は本作が大衆娯楽として広く受容される中で生じる常套的な反応ともいえます。重要なのは、作品が議論を生み出し続けた点であり、それ自体が文化的意義を持ちます。
終幕とレガシー
最終シーズンとシリーズフィナーレでは、主要キャラクターの結末が明らかにされ、視聴者には賛否が分かれました。結末に対する評価は個人の期待やシリーズに求めるものによって大きく異なりますが、総じてTHIS IS USは21世紀の家族ドラマの重要作として位置づけられています。リアルな傷の描写、世代を跨ぐ物語構築、キャラクター中心のドラマ作法は後続作品にも影響を与えました。
制作裏話と注目ポイント
制作面では、演技の細かな感情表現を引き出すために多くのリハーサルと話し合いが行われたと報告されています。また、脚本段階での伏線配置やタイムライン管理は極めて緻密で、後半シーズンでの「点と点を繋ぐ」作業が視聴者の満足度に直結しました。音楽や編集が物語のテンポをコントロールする重要な役割を果たしている点も見逃せません。
まとめ:THIS IS USが教えてくれること
THIS IS USは、家族のかたちや個人の苦悩を多層的に描き出すことで、多くの視聴者に共感と議論を提供しました。語りの技巧、俳優の演技、音楽や編集の緻密さが組み合わさり、単なる感動作に留まらない社会的なインパクトを残しました。欠点を挙げる声があるのも事実ですが、それらを含めて本作は現代ドラマの一つの到達点であり、家族というテーマを扱う上での模範と反省材料を同時に提供しています。
参考文献
This Is Us - Wikipedia
NBC: This Is Us Official Site
Emmys.com - 2017 Winners & Nominees
Dan Fogelman - Wikipedia
Siddhartha Khosla - Wikipedia
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