エクサバイト(EB)とは?単位の意味・換算・実務での利用と将来展望

エクサバイトとは何か

エクサバイト(Exabyte、記号: EB)は情報量を表す単位で、SI(国際単位系)における10の18乗バイト、すなわち1,000ペタバイト(PB)=1,000,000テラバイト(TB)=10^18バイトを意味します。日常的に使われるギガバイト(GB)やテラバイト(TB)よりも遥かに大きな単位で、大規模データセンターやインターネット全体のトラフィック、グローバルなデータ生成量を議論する際に用いられます。

10進(SI)と2進(IEC)での扱いの違い

注意すべきは、ストレージ業界やシステムの文脈で「エクサバイト」という語が2進的な解釈と混同されることがある点です。SI接頭辞としての「エクサ(exa)」は10^18を指しますが、コンピュータ内部で2のべき乗を基準にした単位系も存在します。IECが提唱する2進接頭辞では、2^60バイトを「エクスビバイト(exbibyte、EiB)」と呼びます。1 EiB = 2^60 バイト = 1,152,921,504,606,846,976 バイトであり、10^18 バイト(1 EB)より約15.3%大きくなります。したがって、同じ"エクサ"という発音でも、文脈によって数値が異なる可能性があるため注意が必要です。

主な換算表(10進基準)

  • 1 EB = 10^18 バイト
  • 1 EB = 1,000 PB
  • 1 EB = 1,000,000 TB
  • 1 EB = 1,000,000,000 GB

2進(IEC)基準の場合、1 EiB = 2^60 バイト ≒ 1.1529 × 10^18 バイト = 約1.1529 EB(10進換算)です。

具体的なイメージ(わかりやすい比較)

  • 4MBの写真なら、1 EBで約2500億枚(2.5×10^11枚)保存可能。
  • 5GBの映画(一般的なHD映画)なら、1 EBで約2億本(2.0×10^8本)保存可能。
  • 100GBの4K映画なら、1 EBで約1,000万本(1.0×10^7本)保存可能。
  • 20TBのハードディスクを用いるとすると、1 EBを構成するには約50,000台が必要。
  • 1 Mbps(メガビット毎秒)の帯域で常時ストリーミングを行った場合、1 EBのデータ量は約25万〜26万年分の連続視聴に相当します。

エクサバイト規模が現実的に登場する場面

近年のデータ生成量や保存ニーズの増大により、エクサバイト単位の話題は現実味を帯びてきました。具体的なケースとしては:

  • クラウド事業者や大規模データセンターにおける総ストレージ容量の合計
  • インターネット全体や特定地域の年間トラフィック量(複数エクサバイト/年)
  • 衛星・リモートセンシングや天文学、遺伝子解析などの科学分野で生成される大量データ(長期蓄積でエクサバイト級に到達)

たとえば、産業界や研究領域を横断する調査では、クラウドとエッジを組み合わせた環境でエクサバイト級のデータ移動や保存が議論されることが増えています。ただし、個々の実務的ワークロードで単一のファイルや単一のジョブが直接エクサバイトとなるケースはまだ限られており、複数年・複数ノードにまたがる累積データとして扱われることが多いです。

エクサバイト級データの扱いに伴う技術的課題

エクサバイト級のデータを扱うには、単に大容量のストレージを用意するだけでは不十分で、設計・運用面で多くの課題があります:

  • データ転送とネットワーク帯域:物理的に大量のデータを移動する際の帯域確保やレイテンシ、パケットロス対策が必要。
  • 冗長化と可用性:ハードウェア故障や災害を考慮した分散配置、耐障害性設計(RAID、オブジェクトストレージの多重配置など)。
  • コスト管理:ハードウェア費用だけでなく、電力・冷却・運用人件費、インフラ維持コストが大きくなる。
  • データライフサイクル管理:アクセス頻度に応じた階層化(ホット/ウォーム/コールドストレージ)、長期アーカイブ戦略、コンプライアンス)
  • セキュリティとプライバシー:大規模データ漏洩リスクに対する暗号化、アクセス制御、監査の強化。
  • メタデータ管理:膨大なデータを探して利用するための効率的なインデックスやメタデータ設計。

エクサバイト運用の実例とビジネス的意義

エクサバイト級のストレージは、主に以下のような主体で必要とされます:

  • クラウド事業者(例:グローバルなオブジェクトストレージの総容量)
  • 大手ソーシャルメディアやコンテンツ配信ネットワーク(CDN)運営者
  • 科学研究機関(地球観測、天文学、ゲノム解析などの研究データ蓄積)
  • 政府機関・大企業が保有する長期ログや監視データ、法令対応のアーカイブ

ビジネス面では、データの量が増えるほどその中から価値あるインサイトを抽出することで競争力を得られる一方、保有コストやガバナンスの負担も増大します。したがって多くの企業は、エクサバイト規模の保有を目標とするのではなく、必要なデータを効率的に保管・処理・削除するポリシー設計に注力しています。

将来展望:なぜエクサバイトが重要になるのか

データ生成の増加は今後も続くと見込まれており、AI(大規模モデルの学習データ)、IoT(センサーや映像データ)、高解像度映像・リモートセンシング、シミュレーション科学などがデータ量を押し上げます。国際的な調査やマーケットレポートでは、世界のデータ総量(グローバルなデータスフィア)は今後数年で指数的に増加し、エクサバイト単位の蓄積は多くの組織にとって標準となる可能性が示されています。

ただし、容量の増加だけでなく、データの価値を引き出すための処理能力(計算資源)、ネットワーク構成、効率的なアーカイブ手法、そして持続可能性(電力消費とカーボンフットプリントの管理)といった観点が重要になってきます。

実務への示唆と導入のポイント

実務でエクサバイト級のデータを扱うことを検討する場合、以下の点を順に検討すると実効性が高まります:

  • データ分類とライフサイクルポリシー:何を長期保存し、何を一定期間で削除するかを定義する。
  • 階層化ストレージ設計:アクセス頻度に応じてコストの低い冷蔵庫的ストレージを活用。
  • データ転送戦略:大容量データ移動では一時的な物理搬送(シップメント)や専用回線の併用も検討。
  • 冗長化・分散配置:リージョンをまたぐ分散配置で可用性と災害耐性を確保。
  • セキュリティ・監査・コンプライアンス:暗号化、アクセス制御、証跡を設計段階で組み込む。
  • コスト評価とガバナンス:総所有コスト(TCO)を長期で見積もり適切なガバナンスを設定する。

まとめ

エクサバイトは10^18バイトを表す巨大な容量単位であり、クラウド事業者や大規模研究、グローバルなデータ集積の文脈で重要な指標となっています。SI(10進)とIEC(2進)での定義差に留意し、エクサバイト級のデータを扱うにはネットワーク、運用、コスト管理、セキュリティなど多面的な課題解決が必要です。将来的にデータの生成・蓄積はさらに進むため、エクサバイトという単位はIT戦略やインフラ設計においてますます重要な概念となるでしょう。

参考文献